賃借人の主張は,建物の管理が悪いから賃料を支払わないというものでした。 賃借人曰く,何度か貸主に修繕等の対応を求めたが,一向に直さない。だから,賃料を支払う必要が無いというものでした。
これは,一見正当な主張のように思われますが,大きな誤りが有ります。 それは,賃料の支払いと建物修繕とは売買契約のように,同時履行の関係に無いことです。
売買の場合,引渡が無ければ代金を支払いませんよという主張は,同時履行の抗弁権と言って民法533条に規定されています。
しかし,賃貸借の場合は,賃料減額請求または使用に耐えられないほどの大きな瑕疵(欠陥)の場合の契約解除権が認められているだけです。
本件では,修繕しなければ使用に耐えられない程の瑕疵ではなく,修繕しなければ賃料を減額してくださいと請求した上で,聞き入れられなければ,賃料減額の調停を申立てかつ自身が正当と思われる賃料を供託する必要が有るのです。
しかも借主は,不動産関係の会社に勤務する人です。このような知識を持っていないとも思えません。借主は,答弁書でこのような主張したまま一回目の弁論期日を迎えました。
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