本件は,H社がA社に株式を譲渡し,A社から借主に債権譲渡通知と当時に異議をとどめない承諾書の用紙を送付しました。借主は内容が良く分からないまま承諾書を提出し,A社に返済をしました。といっても,店舗も従業員もH社のままです。借主にとっては,店名が変わった程度の認識でしょう。
まもなく,A社は借主と基本契約を締結し,この貸付けで譲受債権を完済(借換)させました。借主は金銭消費貸借取引を続けたかっただけで,関心があるのは借入を受けられるか,返済方法はどうなるのか等であることが推定されます。その後過払金に気づき訴訟を起こした段階では,借換時点から10年以上が経過していました。
1審の簡裁では,請求認容されたものの2審の地裁では逆転敗訴になりました。 敗訴の理由は,債権譲渡に係わる債権と新たな基本契約に基づく貸付金とは取引の当事者や種類を別にするから,一個の連続した取引として評価することができないとされたことでした。
これで,借換時に発生した過払金をA社との基本契約に基づく貸付金に充当できないと結論づけられ,過払金は消滅時効にかかってしまいました。
これは,取引の一体性を重視した結果によるものです。確かに過払金充当合意理論によれば,当初の基本契約がことなるため,充当合意が別契約による取引に及ぶことは考えられません。であれば,平成20年1月18日の理論により充当の適否を判断することになります。
ところが,ここで借換に特有なあることに気づきました。これを裁判所がどのように評価するかが勝敗の分かれ目になると思います。
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