また,借主に不利と思える判決が出たようです。
詳しい内容までは不明ですが,事例は,元利均等割賦方式(元金の減少に係わらず毎月一定の額を返済する方式)により,利息制限法を超過する利率の契約での定例返済を行っていたが,あるときから定例返済を怠っていた借主が,利息制限法に引き直し計算すれば,それまで支払った総支払額でもって各回定例元利返済額を上回るため,期限の利益を喪失していないと主張した件です。
原審の高裁判決は,利息制限法で引き直した元利金を超える支払を行っていたのであれば,期限の利益は喪失していないとして借主の主張を認めました。
しかし,本判決は,利息制限法を超過する部分はその時点での残元金に充当され,特約がない限り,その後(将来)の定例返済分に充当することができない(つまり,定例返済分を遅延したことになる)としました。
最高裁の判断は一般的な金融実務に沿うものですが,問題は,定例返済を怠った際,借主に対し,期限の利益を喪失したとの通知があったかどうかです。仮にこれを貸主が怠ったとすると問題があります。
本事例は,元利均等割賦方式ですが,一般的な最低弁済額何円以上というリボルビング方式の貸付に適用があるかどうかは不明です。このような貸付の基本契約の約定には,1日でも返済を怠ったときは期限の利益を喪失するとの条項があります。
約定利率と損害金利率が表面的に同一(出資法限度利率)であり,期限の利益を喪失したとの主張が意味をなさないため,借主が期限の利益を喪失した事を取引中に明示していないのに,過払金返還請求を受けた後に一転期限の利益喪失を主張するのは,期限の利益を喪失していないと誤認させた責任があるとして,信義則上,この主張を認めない判決が多くあります。
しかし,貸主が期限の利益喪失を明示している場合,今後は,本判決の影響を少なからず受けることが予想されます。
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