被保佐人であった方の相続の依頼を受けました。この方は生涯独身でした。施設で亡くなったそうですが,自筆での遺言を残しました。
遺言は密封され封印がなされていました。遺言は,受遺者の父から受遺者に渡され保管されていました。
自筆証書遺言は,家庭裁判所の検認を受けなければなりません。法定相続人に,遺言書の存在を知らせることと,遺言書が本人自筆の物かを確認させるためです。
封印された遺言は,民法1004条により,検認手続きにおいて開封しなければなりません。つまり,遺言が有効か否かは開封するまで明らかにならないのです。
封印されていない遺言であれば,その内容を見ることができるため,無効な遺言と判断できた場合,検認の申立を行わない事ができます。ただし,法律的に無効とはいえ,故人の遺志を表すものとして敢えて申立をする場合もあります。
今回は,相続人の確定に相当手間がかかりました。兄弟が法定相続人の場合,民法901条により甥・姪の代まで相続権があります。故人は兄弟が多く,1ヶ月余り掛かった戸籍収集の結果,法定相続人は10人になりました。
検認期日が開かれる迄には通常約1ヶ月半掛かります。少なくとも,この日までは相続財産の帰属者が確定しません。遺言が公正証書である場合との違いは,これらの手間と期間です。
故人は,亡くなった後の関係者の事を思い遺言をしたためたと思います。ただ,もし,これを公正証書にしてくれていたら,もっと良かったと思うのは贅沢でしょうか。
公証人役場の敷居は,依然高いのでしょうか?それとも,私達の広報が不足しているのでしょうか?
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