遺言により,法定相続人以外の者に財産を取得させることを遺贈と言います。遺言者の死亡により効力が発生します。
遺贈の場合,税務上は贈与税ではなく相続税が課せられます。但し,法定相続人に対する相続とは異なり,小規模宅地の特例,生命保険金の非課税枠,未成年者・障がい者控除等の控除は適用されません。
税額も相続人に対する税額の2割加算になります。それでも,贈与税より割安な課税基準になると思います。生前贈与と遺贈のどちらを選択するかは節税問題も複雑に絡む案件ですので,資産税専門の税理士さんに相談することをお勧め致します。
一般的に見過ごしてしまうのが,再婚の場合の戸籍上の関係です。再婚の場合,籍を同じくするのは夫婦となる当事者同士のみであって,例えば後妻と先妻の子は,同居して互いに扶養していても戸籍上の親子になりません。
この場合,夫(子から見て父)が死亡した場合の相続人は,後妻と先妻の子なので,相続権は家庭内に収まり問題ないのですが,次に後妻が亡くなった場合に,先妻の子は後妻の相続権を持たないため,後妻の兄弟のみに相続権があることになります。
実際,先に父が亡くなり後妻と子が2分の1ずつ共有の登記を行った後,後妻が亡くなった案件で,子は後妻の介護をずっと行ってきて,後妻(子から見て義母)が亡くなったため,後妻の持分を相続できるものとして預金の払戻に行ったところ,相続権が無いことに初めて気がつく場合も少なくありません。
この場合,子は後妻との養子縁組をしておく必要があったのです。幸い後妻の兄弟は快く相続分を子に渡すことを承諾してくれましたが,登記手続や税金が大変になりました。
いったん兄弟名義に法定相続の登記を行ってから相続分の贈与による登記を行う必要があるのです。加えて,相続分の贈与による贈与税の申告も行う必要があります。このように法定相続の制度には,一般常識とは異なる思い違いや落とし穴があります。
ですからこれに頼ることなく,自らの財産の行方は相続人任せにするのではなく自らの意思により行うため,遺言を積極的に活用する姿勢が必要でしょう。
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