亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

還付金詐欺

2014-12-25 16:10:56 | 成年後見

相続登記の依頼を受けた時の方が還付金詐欺にあってしまいました。一人暮らしの方です。

普段はジョークを言っていて,とても判断能力が衰えているとは思えない方です。身よりがいないため,その日,死後事務委任の説明を受けるため事務所に来られました。

その際,市役所から還付金の請求がされていないと連絡が来たことが話に出ました。実は,私の受け持つ被後見人も,同時期に市役所からの還付金があり,私が代理で書面を申請したことにより,振り込まれた事実があったのです。

その時は,てっきりその類いの話か,あるいは高額限度医療費の還付金のことだと思っていました。そして,依頼者は,市役所に行って手続をしてくるものだと思い込んでいました。ところが,なんとその当日に,依頼者が還付金(振り込め)詐欺にあったと,警察から電話があったのです。

聞くところによると,銀行の本店の事務員を名乗る女性から,店舗ではなくATMの機械だけが設置してあるところに電話で誘導され,言われるままの操作をしてしまったようです。不信に思った近所の店の人からの通報により,犯罪が発覚したようです。高齢であり精神的ショックも大きいため,警察に行き自宅まで送り届けました。

年金しか収入が無く,いずれは老人ホームに入所するための資金を騙し取られたのです。許せません。何という卑劣な行為なのでしょう。

それにしても,市からの還付金の話があると話が出た時に,もしかしてと疑うことができなかったことが悔やまれます。これほど,振り込め詐欺が騒がれているときに,まさか身近な人が対象になってしまうとは・・。警察曰く,市からの還付が行われる時期に合わせてこのような詐欺が横行するようです。

とりあえず,日常生活費として使用する金融機関の口座を除き,私が通帳管理をしています。今後の管理の方法ですが,財産管理委任契約か信託による方法が考えられます。

銀行に確認したところ,財産管理委任契約の場合,定期性の預金の払戻については,受任者からの払戻請求に際して,本人の意思確認の方法に相当の制約があるようです。そうなると,受託者名義になる信託の方が使い勝手が良いと思いますが,信託の場合,司法書士が受託者になることができません。

来年契約を行う予定ですが,依頼者の財産を100%守るためのスキームを考えたいと思います。

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信託と税務(2)

2014-12-12 13:27:25 | 成年後見

前回のブログに記載した自宅の管理を子に任せるスキームの登録免許税について,法務局から回答がありました。

登録免許税法第7条の2項について,条文の冒頭,「信託財産を受託者から受益者に移す場合であって」の文言により,受託者から受益者に移すとなっていて,受託者から信託財産を受託者固有のものとする場合を対象としていないから,原則どおり0.2%であると。

ところが,この解釈は少し違うのではと思いました。なぜなら,7条1項2号は,「信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本受益者である信託の信託財産を委託者から当該受益者(当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る。)に移す場合における財産権の移転の登記又は登録」の規定ぶりであり,この場合は非課税です。

何故非課税なのかと言うと,分かりにくい文章ですが,この条文は,信託にした財産を元の委託者に戻す場合のことを言っているのです。つまり,一旦信託したものを元に戻すだけだから非課税だと。

信託を設定する場合の所有権移転の登録免許税を,非課税にしていることとの整合性を図った規定なのです。ところが,実質委託者のことを指すのに,文言では「元本受益者」と言っているのです。ですから,7条2項の冒頭の受託者から受益者に移す場合とは,受託者から委託者に移す場合と読み替えることができるのです。

そうすると,受託者から信託財産を受け取る者が,信託の効力が生じたにおける「委託者」の相続人であるときは,相続による財産権の移転とみなすと言っていると解釈できるのです。このように考えれば7条1項の規定と整合性がとれます。

この規定は,通常は相続を原因とする所有権移転になるケースを,信託の登記により,(残余財産)帰属権利者として信託財産を固有の物にすることができ,この登記をすれば実質相続による所有権移転の効果を生じさせることになるのであるから,相続分の登録免許税を納めなさいということだと思います。

以上のことを主張しましたところ,再度検討するとの返事でした。仮にこのケースで0.2%の登録免許税が課せられるのでしたら,不動産取得税が非課税であってもこのスキームは使えません。

時代の趨勢に応じて信託法を改正したわけですから,信託を活用した節税を防ぐ税制であるのであればともかく,結果的に信託の活用を妨げることとなうような施策となるのであれば,再考するべきであると思います。

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信託と税務

2014-12-10 11:50:13 | 成年後見

最近,あちこちで開催される信託の研修を相次いで受けています。本日も所属する信託のグループの研究発表会があるのですが,あいにく忘年会と重なってしまいました。研修に参加すればするほど,信託の需要があることがはっきりしてきました。

信託を設定するに当たって,解決しなければならない問題は,登録免許税と不動産取得税に係わる税務です。税務の予測がつかないとスキームを提案することができません。なぜなら,思いもよらぬ税を徴収されたら依頼者に損害を与えることになるからです。

相続の場合と比べてみましょう。相続の場合,登録免許税は,固定資産評価額の0.4%,不動産取得税は非課税です。これが,信託設定の場合の信託の登記は,建物0.4%土地0.3%とほぼ同じですが,信託終了時受託者から不動産を取得した者への移転の登録免許税が,一般的には2%なのです。これに不動産取得税の3%がかかってしまったら,相続の時に比べて相当な税を支払うことになってしまいます。

そこで税法の規定を読んでみました。すると,登録免許税法7条2項,地方税法第73条の7 4号に「信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において,当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人であるときは,当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続による財産権の移転の登記・・・とみなして」のような同じ趣旨の条文があり,これによれば,元本受益者が委託者の相続人である場合,相続とみなす扱いをするようです。

委託者のみが信託財産の元本受益者である場合とは,信託の受益権を収益受益権と元本受益権に別けて,受益者には収益受益権のみを渡す場合,言い方を変えれば,受託者に対し,信託の目的として信託財産の管理権を与えるが処分権を与えないこと。賃貸用住宅を信託した場合,収益とは賃料であり,元本とは住宅そのものであると理解していいと思います。

思い切って法務局と県税事務所にFAXで質問しました。すると,県税事務所から回答が来ました。スキームは,子に自宅の管理のみを任せ,自分の死後は妻を受益者に,妻が死んだら信託を終了し,残余財産を子に帰属させるというもの。

回答は,相続とみなして非課税だが,申告が必要でその際,戸籍謄本や信託契約書を付ける必要があるということでした。未だ回答がないものの,このスキームでは,登録免許税も相続扱いの0.4%で済みそうです。

但し,このスキームでは自宅の処分権がないので,母が受益者でいるとき母が施設に入ったきりで帰宅する見込みがない場合,自宅を処分することができず,母が亡くなり,信託が終了した後にしか自宅を売却できないという不都合が生じます。

現在多い空き家問題の対策には,この信託のスキームは不都合です。であれば,処分権も受託者に与え,母が帰宅する見込みがなくなったら,すぐ売却できるようにすれば良いのですが,売却依頼中に母が死亡すると,登記に係わる税が相続の場合より多く発生することが予想されます。

信託する場合,税が障壁となるリスクは,程度の差はあれ避けられないような気がします。

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