亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

成年後見制度支援信託

2012-03-16 17:09:34 | 成年後見

昨日,後見制度支援信託の研修に参加しました。
この制度は,東京家庭裁判所のおいては,本年2月1日から施行されていますが,さいたま家庭裁判所では,4月1日から施行するようです。
判事さんの説明によれば,後期高齢者(75才以上のことと思われる。未だこの言葉が使われています。)人口の増加に伴い,成年後見の申立件数の増加およびこれに伴う管理継続事件の継続的な増加が予想されるとのことです。
たしかに,高齢者人口は益々増え,医療の格段の進歩がなければ,加齢に伴う精神的能力の低下したお年寄りが増え,単独での財産管理等が困難な状況になってきます。
加えて,少子化,核家族化および親族関係の希薄化により,日常生活において後見的保護を要する人が,より一層増加することも予想されます。
これらの全ての方に職業後見人を手当てすることができればよいのですが,費用の点で困難な人も多数存在するように思われます。
今回の制度は,職業人ではない一般人である親族および市民後見人が後見事務に携わる場合に,負担の大きい財産管理を簡易化するとともに,残念ながら少なくない横領等の不正行為の防止の為に導入が図られました。
方法として,先ず,家庭裁判所による選別があります。
家庭裁判所は,本人・親族の意思を尊重しつつ,費用対効果(信託をすることにより信託報酬が発生します),従前の運用方法との整合性等を勘案して,被後見人の親族等に対し,
1. 後見人候補者の適格がある人がいるか
2. 信託の利用に反対するかどうか
3. 被後見人の遺言が存在するか等 を照会します。
この回答をもとに裁判所が第一次選別をし,次いで,申立書の内容や面接の結果をふまえて信託利用を相当とするかどうかの判断をします。
さて,ここで信託の利用が相当な場合,必ず専門職後見人を選任し,信託契約は専門職後見人が締結します。信託契約は,専門性が高く一般人である親族に契約締結を委ねるのは適正でないとの判断です。
さて,信託の内容ですが,詳しくは不明ですが,信託銀行から定期的に生活費の送金を得て日常生活費を賄います。なお,月々生活費の変動可能性及び緊急資金の支出に備え,通常の生活費(収入から支出を差し引いた実質必要費)の3ヶ月分を,手元資金として留保しておけるようです。その後,一時的な支出の必要が生じたときは,その旨を裁判所に申立し,裁判所の承諾に係わる指示書を信託銀行に提出することにより,この金額の送金を受ける事ができます。
以上のようにして,親族後見人による日常資金の支払いおよび一時金の支払い。これに伴う管理事務の報告を,通帳及び信託銀行から送付される信託財産状況報告書の写しを提出することで代える,簡易な方法が採られるようです。このようにして,後見人による不正を防止することもできそうです。
このように信託を利用する後見は,専門職後見人と親族後見人の複数受任方式または,専門職後見人から親族後見人にリレーする方式が考えられているようです。
この方法に対する問題点は,現状予想される事柄に加え今後の実務の中で洗い出され,対策が練られるようです。