亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

公正証書遺言検索システムの不備又は運用の改善

2015-10-29 15:35:37 | 遺言・相続

配偶者と死別し,法定相続人不存在のまま亡くなった方がいました。この方の相続財産管理人申立を準備していたところ,内縁の者へ包括遺贈する旨の公正証書遺言があるとのことでその写しを提示されました。

生前親交のあった親族は,この遺言内容が被相続人の真意である事に疑義をもっています。ところが,公正証書遺言ですから,遺言者の意思能力の欠缺等を主張するのは極めて困難です。

そこで,被相続人は内縁の者の働きかけにより一旦は,その者の意に沿う内容の遺言をしたものの,後日思い直して,それを撤回,変更したりする旨の遺言を書いた可能性があるかもしれないと思い,それを確かめるべく,公正証書遺言検索システムを利用する事を考えました。


請求者適格を確認したところ,1.法定相続人(代襲相続人)2.相続財産管理人3.相続人以外の者が,自分が受遺者になっていると考えて検索を希望する場合とありました。この場合には,受遺者であることが想定できる資料及び説明(利害関係人か否かの判断に必要)を要します。


さて,今回の事例で親族であるいとこの適格性を,公証人役場に照会したところ,利害人とは認められず請求不可との回答でした。相続財産の帰趨という極めてプライベートな事柄ですから,厳格さを求められるのは理解できます。

ただ,その前段として,「年月日以降遺言が存在しない」との回答を求めるシステム(無いことの証明)があっても良いのではないかと思います。何故なら,遺言者の真意を確実に把握する為には,遺言の有無について確認できる機会を増やすできであるからです。申請人を厳格にすればするほど,その機会を逃す確率が増します。極論すれば,無いことの確認は相当広範囲に認めても良いと思います。

何故なら,新たな遺言が無ければ現存する遺言が最新のものであることが確定するのであり,有れば存在する遺言の内容は撤回又は変更されていることが推定され,現存する遺言内容に無効事由があるからです。

そして,仮に新たな遺言があった場合,プライバシー保護の観点から,遺言内容を閲覧できる人の適格性を厳格にすれば済むことですから。

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判決間際の和解

2015-10-23 16:41:20 | 債務整理

控訴審判決を間近に控えた日,控訴人から和解の申出がありました。内容は,一審判決どおりの金額を支払うが支払期限を半年近く猶与して欲しいとのこと。

当方(被控訴人)としては,控訴審判決を見てみたい気もしますが,実質勝訴(請求認諾)の結果となるこの申出については,期限を延長する事による支払い不能のリスクを考え,その可能性が極めて少なく期限まで待つことが可能であれば,受け入れても良い内容だと思いました。

控訴人は,一部上場企業であり支払不能リスクは少ないと考え,被控訴人に説明したところ了解を得ました。そこで,控訴審を取下げを条件に被控訴人は,和解に応じることにしました。

控訴人が,和解を望む意図を推定するに,1.支払期限までの資金繰りの窮屈さ 2.訴訟費用の負担軽減 3.不名誉な敗訴の回避等が考えられます。

早めに返還を望むのはもちろんですが,さりとて,勝訴しても支払がなされなければ,執行を余儀なくされます。

被控訴人は,利回りの良い半年間の定期預金と考え,実を取り受諾することにしたものと思われます。

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抵当権抹消登記放置の危険

2015-10-21 15:33:04 | 不動産登記

住宅金融公庫の抵当権抹消登記を受任したところ,依頼者は,抵当権解除証書,委任状,現在事項一部証明書,印鑑証明書しか銀行から受け取っていないとのこと。

当初私は,住宅金融公庫から住宅金融支援機構への抵当権移転登記をすれば,抵当権設定契約書に替わる登記識別情報通知が発行されることになるので,印鑑証明書は不要であるはずなのにと思いました。

そこで,銀行に抵当権移転登記の委任状を要求しようとしたところ,解除証書の弁済日が平成14年になっていることに気づきました。なるほど,住宅金融支援機構への移転登記が必要なのは,原因日が平成19年4月1日以降のものですから移転登記は不要です。これで,移転の委任状がない理由が分かりました。

さらに,解除証書の日付を見ると最近の日付になっています。ということは,依頼者は一旦抹消登記に必要な書類を受け取ったものの紛失し,銀行に再発行してもらったものと推定され,印鑑証明書の添付の理由も分かりました。

移転登記を経ないのですから,抵当権設定登記をした時の登記済証が必要です。ところが,これを紛失しているので,申請方法としては,事前通知又は資格者代理人による本人確認情報の方法しかなく,この方法による申請には委任状に実印を押印し印鑑証明書を添付して行うことになります。

さて,本人確認情報による方法は,抵当権者が住宅金融支援機構という大組織なので,代表権を有する人物に時間を取って会うことなど不可能です。残るは,事前通知なのですが当初これが心配でした。

担保権の設定や抹消等の事務を金融機関に包括的に委託している機構が,全国から到達するであろう事前通知に対応してくれるのだろうかと。何とか受託金融機関限りで終了するような方法はないものだろうか?

銀行に問い合わせたところ,本事例のような場合は事前通知制度を利用し,機構も適格に対応してくれるとことでした。これで安心して事前通知による抹消登記申請ができます。

但し,これが売買登記に係わる抹消の場合はどうするのでしょう?私は,ローンが完済していることは解除証書により証明され,後は手続上の問題だけなので,通常は売主が権利者となって行う抹消登記を,先に所有権移転登記を申請し,次いで買主が権利者として抹消登記を申請する形式を買主に提案し,承諾を得ようと思います。

事前通知のため,法務局と機構間の郵便の往復分登記期間はかかりますが,買主としてはとりあえず所有権移転登記確保し,後は空となっている抵当権の抹消の登記手続を待つ形にするのです。

それにしても,ローンを完済し銀行から抹消書類を受け取ったら,速やかに抹消登記を済ませないとこんなことが起こり得ます。もっとも,銀行も完済した借主に対し,抹消登記を強く促すよう説明をして欲しいものです。

借主はローンが終わったら安心してしまい,抵当権のことなど眼中になくなる場合がありますから。

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インターネット証明書請求システム

2015-10-20 15:43:02 | 不動産登記

過日オンライン申請の管理画面で登記完了が出たので,登記完了した物件が自動的に挿入されるソフトでの全部事項証明書の請求申請を行ったところ,建物の請求分がエラーになりました。

そこで原因を聞いたところ,敷地上に同じ家屋番号の建物が二棟存在するとのこと。実際は,10番の土地に家屋番号10番3の建物と10番3の土地に同じ家屋番号10番3の建物の登記があったのです。但し,10番の土地上の建物は滅失登記されて閉鎖になっています。

同じ家屋番号の建物ですが一方は閉鎖され,また,敷地の地番の片方は枝番が付いていて区別できるのに,何故識別できないのか当初は理解できませんでしたが,しばらくしてこのようなシステムではないかと推定しました。

つまり,システムは先ず,番地を除いた所在+家屋番号で不動産を特定しようとするのです。ですから,土地の地番が10番と10番3とで異なっていても地番を除き他が同一なら家屋番号のみが区別の対象となるため,本事例のような場合同番号の建物が二つ出てしまうのです。

この二つの内一方を特定するためには,同じ所在上の建物一覧検索をかける必要があります。すると,10-3/10と10-3/10-3の二つの建物が出てきます。そこで,請求対象である物件の全部事項証明を請求するためには,10-3/10-3の方を指定すれば良いことになります。

全部事項か閉鎖事項かの区別は,建物の特定後に選択されるシステムになっているのです。同じ家屋番号でも,片方は閉鎖だから全部事項証明との区別ができると考えるのは間違いなのです。

今回は,登記完了後の証明請求で,登記申請時のデータをそのまま利用して自動的に作成した申請書でした。ですから何故登記申請が問題なくできたのに,証明申請が却下されるのか疑問を抱いたのですが,以上のような理屈で却下されたと推定すれば理解できます。

でもこんな事,25年の業務経験の中で初めて知りました。

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商店街活性化の信託

2015-10-19 17:12:49 | 成年後見

15日は,所属する信託の研究会の研修で,今回は,テーマを決めてグループで研究した成果を発表する場でした。テーマは,商店街の振興・活性化のための民事信託です。

シチュエーションとしては,経営不振や既に空き店舗になっている隣接する複数の店舗の土地・建物を一括して信託してもらい,擁壁を撤去して店舗の面積を拡大したり,修繕や建て替え等をして,例えば大手フランチャイズに加盟している有名店舗を誘致したりすることにより来客数を増やし,人の流れを呼び込むことにより商店街を活性化して,経営改善を図るというものでした。

先ず,このように複数の委託者が存在し,時期を別にして信託財産を拠出する信託が,商事信託と評価されないかの検討されたことの説明がありました。

今回のように複数の権利者が財産を拠出して一定の事業を行う方法としては,会社とか組合方式により現物出資をして行う方法があります。従来はそれが一般的でした。

ところが,会社等の組織に現物を出資すれば,財産権の移転があったものとして,登録免許税や不動産取得税等の流通税の負担が生じてしまいます。この流通税の負担を免れることに信託の意義があります。

つまり,信託による所有権移転は,信託目的(預託)のための移転であって,完全な所有権移転ではないため,不動産取得税は掛からず,登録免許税も課税価格の0.4%と通常の所有権移転の5分の1で済むのです。

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