亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

限定承認(4)

2016-11-28 17:30:39 | 遺言・相続

先買権行使により財産管理人の口座に入金された額から,優先弁済権者である担保権者と滞納税金の支払を行いました。残りが一般債権者に対する配当金になります。

他には,車や動産を換価するのも競売によることになります。ただ,私が就任したときには既に売却済みでした。競売によらない方法なので,事後承諾してもらうしかありません。幸い債権者からの異議はありませんでした。

その他には,被相続人の過払金返還請求権がありました。過払金を取り戻すに際し,1社は大手のクレジット会社であったため,過払利息はともかく過払金元金を支払う旨の和解ができたのですが,もう1社は,過払金元金の1割にも満たない金額しか払わない業者であるとインターネットの情報で知りました。

この場合,訴訟提起して勝訴判決に基づき民事執行の申立をしても,差押債権の競合等により満足な回収ができない場合があり,インターネットの情報でもやはりそのようでした。

やむなく,債権者に事情を説明する文書を送付し,少額の和解金で和解をする方針について異議の有無を尋ねました。 訴訟費用をかけても無駄になる恐れがあるからです。これも異議は出ず和解することができました。

その他預貯金の解約や出資金の払戻金等全ての財産を相続財産管理人の口座に入金後,各債権者に再度死亡日時点での債権の届出をしてもらいました。そして,相続財産額を分母,各社債権額を分子として,その割合による配当金計算書を送付しました。

1社質問がありましたが了解いただき,各債権者に配当金を振り込み手続を終了することができました。

完了まで受任してから約11ヶ月を要しました。

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限定承認(3)

2016-11-24 17:10:09 | 遺言・相続

実務上最も困ったことは,先買権行使の資金とするローンの借入が容易でなかったことでした。 限定承認をしますと,自宅はいったん法定相続分による相続登記を行います。

しかしながら,自宅の所有権は,債権者に対する債務の弁済の引き当てとなる不動産のため,勝手に売却することはできず,原則競売による方法になります。 但し,相続人のみ不動産鑑定士による鑑定額以上の金額で買い取ることができます。

この場合,買受人を除く法定相続人から買受人に対する持分移転登記の申請をし,登記原因は「民法932条但し書きによる価額弁済」となります。 もっとも,取得者には通常の相続では発生しないはずの持分移転に対する不動産取得税が課せられる不利益があります。

この一連の手続きは,通常,法定相続人の持分の売買に等しいのですが,持分を失う売主に代金が支払われるのでは無く,当然ながら相続財産管理人の口座に入金されることになります。

今回,たまたま不動産の買主と相続財産管理人が同一人でした。銀行にとっては,買主にローンの実行金が渡される感覚になり,通常の住宅ローンが使えないようでした。

個人としての買主と相続財産管理人は,氏名が同じでも立場が異なる別人格です。買主は仕方なく,住宅ローンでは無く金利の高いフリーローンを借りざるを得ませんでした。

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限定承認(2)

2016-11-16 17:09:53 | 遺言・相続

限定承認の申立は,毎年全国で1000件を超えることはないようです。理由として,法律には素人と思われる相続人の中から相続財産管理人が選ばれ,その者がみなし資産譲渡の規定に係わる準確定申告や債権者に対する配当手続等の法律・税務の複雑な手続きを行う必要があり,手続終了まで時間と費用がかかるためだと思われます。

事務に関し,税理士に準確定申告を依頼した際の税理士報酬は,共益費として相続財産から支払う事ができますが,それ以外の事務を他人に依頼した場合にその報酬の支払を認めることは,確たる基準がないため難しいように思われます。

また,民法933条により,相続財産を換価する際には原則競売によらなければならないのですが,先買権といって,家庭裁判所の選任した鑑定人の評価した額を,相続人が支払うことにより自ら購入することができる規定があります。

しかし,この場合鑑定費用は,購入する相続人の負担となります。依頼者も自宅を競売から逃れるため,鑑定費用と鑑定額相当のお金を支払うことになりました。

債権者に対する配当ですが,担保権者,税・社会保険料の滞納分の順に支払い,残りの金額を,届出債権者の債権額に応じた按分で支払う事になります。

依頼者は,当初他の専門化に相談して,持ち家の確保ができると聞き限定承認を選択しました。しかし,途中で事務が頓挫してしまい,会の紹介で当事務所を訪れました。

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限定承認(1)

2016-11-11 16:58:33 | 遺言・相続

所属する書士会からの要請で,ある方の限定承認手続を承継して引き受けることになりました。

限定承認とは,被相続人の財産の範囲内で同人の債務を返済するというもので,財産の方が多ければ残った財産を受け取ることができる反面,債務の方が多くてもその全てを返済することは要せず,債務の額に応じて按分した額を相続財産で返済すれば済むというものです。

この方法は,例えば自宅等の不動産を相続したいけど,債務もありその債務の額がどの位か判明していないため,財産を相続すると後からそれ以上の返済を迫られる可能性がある。これでは不安なのでこれを避けるためにするというような方法です。

今回は,母も同居する自宅を何とか相続したいが多額の債務があって,自宅を単純に相続したのではその債務の全額を返済しなくてはならなくなるので,申立を行ったようです。

ところが,この手続には,大変な手間と費用がかかるのです。

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何のための本人確認書類?(2)

2016-11-10 17:45:56 | 遺言・相続

委任者自身の本人確認書類の提出を求める目的が,委任した事実の確認だとすれば,成年後見人のように法律の規定による代理(法定代理といいます)の場合は,本人確認書類の提出は不要なはずです。

法定代理の場合に提出する本人確認書類は,本人の実在性(本人固有の情報)の確認の為にのみ必要になります。ですから,契約時や契約内容の変更時には必要でも,契約解除の場合は不要なはずです。

契約解除の目的は,主に契約に係わる費用(義務)の発生を防ぐことにあると思われますから,いったん解除の意思を抱けば,できるだけ早くこれを行いたいものでしょう。なぜなら,解除が長びけばその間手数料は発生し続けるものですから。

解除時にも本人確認書類が必要であるとすると,後見人が携行せず本人が所持しているものは,わざわざ本人から引渡を受けて,提示した後返却することを強いられます。このような手間をかけるのには,相当な理由が必要です。被後見人がすぐ近くにいるとは限らないのですから。

書類の提示を求めるときは,その目的を知りこれを相手に告げ,理解してもらわなければなりません。ですから,委任による代理と法定代理との代理権の確認方法の違いや,書類の提示を求める目的を理解する必要があるのです。

提示を求める書類の目的が明らかでないアバウトな規定は,真に必要な物のみを請求する詳細な規定に改訂されるべきだと思います。

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