プレシャス / Precious

2010-04-25 | 映画



今回は、2010年の賞レースで、話題をさらった「Precious プレシャス





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2010年の賞レースで「ハート・ロッカー」、「マイレージ・マイライフ」(この邦題は嫌いだ)と並んでインディペンデント系で、話題をさらった作品。

まず、ガボレイ・シディベという、とんでもない新人を生み出した。
この人は、女優という言葉とは、正反対の世界にいる容姿風貌で、その生い立ちもすさまじい。
育ちは、ニューヨークのブクックリン。危ないところだ。
母親は、元々教師だったが、仕事をやめてストリート・パーフォーマーで生計をたて、父親はアフリカ、セネガル人のタクシーの運転手。
そしてお決まりの、小さい頃に両親の離婚、母親と極貧の生活だったようだ。

悪魔の母親役には、コメディアンで、アメリカでは自分のテレビ番組を持つ、モニーク。
娘を虐待する残忍な母親と、その虐待の理由を顔をグチャグチャにしながら語る哀れな女を熱演。
この人は、アカデミー賞助演女優賞を受賞したときに、「政治的駆け引きではなく、パフォーマンスで受賞者を選らんでくれてありがとう」と、ちょっとざわっとさせるスピーチをした。

そして、すっぴんで驚かせたマライア・キャリー。
彼女のオーラをすべて消し去り、親身になって子供に向き合うソーシャルワーカーを演じている。

また、先生役のポーラ・パットンもよかった。どこかで見たことがあると思ったら、デンゼル・ワシントンの「デジャヴ」に出ていた人だ。

ストーリーも強烈だ。
父親に犯され、2度も妊娠している主人公のプレシャス。
ダウン症の子供を抱え、2人目を妊娠している16歳の少女。
そして、彼女を徹底的に虐待し続ける鬼のような母親。
彼女に唯一出来るのは、現実逃避の幻想の中で華やかな自分を夢見るだけ。
そんな最悪の状況の中を淡々と、でも力強く生きる彼女を支えるのは、新しい特殊学校の先生や同級生、そしてソーシャルワーカーだった。
そして、文字も覚えはじめ勉強が楽しくなり、新しい仲間たちの励ましのなか赤ん坊も生まれて、少しの幸せに触れはじめた頃、今までにないような絶望的な宣告をうける。
でも、もう彼女は現実逃避をしない、現実と向き合いながら、生き続ける。
救いようのない状況のエンディングなのに、プレシャスが堂々とハーレムを歩くラストに、なぜか元気をもらい、希望を見せられた。

これは、決してすごく特別なアメリカを描いているのではない。
ニューヨークのハーレム、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスといった地域の中での極貧地区や、他のアメリカ大都市近辺の同じようなところでは、それほど珍しい光景ではないだろう。
現に、この作品を徹底的に支持して、ここまで人気を高まらせたアメリカのテレビ番組で最高額の報酬(年260億円)を得るオプラ・ウィンフリーも、10代の未婚の母の子供で9歳で強姦され、14歳で出産したという。
世界で一番裕福な国で、こういう状況が続くのは、アメリカの恥の部分。
そして、こうした作品が出てくるのは、アメリカの誇れるところだろう。 


プレシャス - goo 映画
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トリビア
たった5週間で撮影された。

オリジナルのソーシャルワーカー、ミセス・ウェイズはヘレン・ミレンがキャストされていたが最終的に折り合わず、撮影の2日前になって監督自らがマライア・キャリーを選んだ。

プレシャス役の女優に400人以上がインタビューを受けたが、6週間前になって友人から無理やりインタビューを受けさせられたガボレイ・シディベに決まった。

モニークがこの役を引き受けた理由は、子供への性的虐待の問題をあらためて問うため。そして彼女自身も被害者という告白をした。

黒人監督による、初めてのアカデミー賞作品賞ノミネーション作品。


ガボレイ・シディベがオプラ・ウィンフリーの番組に出演したとき