
「風無いですね」
「べた凪ですね。最高に気持ちの良い朝ですね」
今年一番の寒波で、キャビンの窓は凍っていたが、横に立って操船しながらポイントを目指す。
温水さんと風の心配をしていたが、今日は久し振りに心配なさそうだ。
「他の船が出てきていませんね」
「きっと、昨日の強風もあったので警戒しているのじゃないかな」
ポイントに入ると、いきなり立ち上がったベイトが魚探に映し出された。
「いますよ。立ち上がっています」
「凄いベイトがいますね」
温水さんが、直ぐに仕掛けを落としていく。
潮が余り動いていないようで、ジグが真っ直ぐに落ちていく。
「潮は、緩い上り潮で沖に払い出しています。0.5ノット前後です」
潮の流れを確認して、船を戻して流すコースを調整する。
魚探には、ベイトが映っている。
「来た!来ました」

竿が海面に突き刺さるように、絞り込まれている。
「うおっ、重たい。走るし何だろう」
ドラッグからラインが引き出されている。
歯を食いしばって、ラインを巻き取っていくと魚影が見えてきた。
「ニベです。デカイですよ」

船上に引き上げた、ニベは重かった。
「計ってみましょう」
10キロ有る。
「重いはずですよ」
「腕がパンパンに成りました」
続けて私にも、強いアタリが来た。
ラインがドラッグ音を響かせて、どんどん出行く。
「おりゃ!まけんぞ!うりゃ!」
海面に突き刺さっている竿を力任せで、起こしに掛かる。
磯釣りの癖が、こんな場面で出てしまう。
ラインが、巻き取られるようになってきた。
しかし、後少しかな…と思うところで「バシッ」と鈍い音がした。
PE3号のラインが切れた。
「えっ…やっちまった…」
多分、正体は大きなニベでは無いかと思うけど…「青物かな…」と、勝手に想像する。
温水さんと顔を合わせて、「やっちまいました」
仕掛けを作り直す前に「凪だし、ちょい深場のポイントに行きましょう」
取り逃がした口惜しさもあり、直ぐにポイント移動。
「ここは、温水さんは初めてのポイントですよね」
「魚礁が下にあります。ベイトはミルフィーユみたいな感じで出ています」
すると、直ぐにエソがアタリ出した。
我慢していると、温水さんにアタリが来た。


上がってきたのは、2キロくらいの小型のニベ。
「口から出ている浮き袋が、気持ち悪い感じです」
船の下にはベイトを追いかけて、ニベが寄っているのだろうか。
一緒に竿を出していた私に、再度の大当たり。
「おおっ、来たど。なんか来たど」
竿先をガンガンと叩くアタリ。
同時に、何度も真下に突っ込みを見せる。
「今度は逃がさん!」
竿を握る手に力を込めて、思いっきりラインを引き抜くように巻き上げる。
やがて、獲物が見えてきた。
「鯛や。デカイ鯛だ」
温水さんがタモを出して頂いた。

5.3キロ、74センチの雄の真鯛。
先のバラシの口惜しさが、少し晴れた気がする。
直ぐに、船を戻して魚礁に沿って流すように位置を調整する。
潮が、少し下り始めたようだ。
「なんか来た」
温水さんにヒット。
「なんか、軽いですよ」

上がってきたのは、アカヤガラ。
「美味しい魚ですよ。ヌルヌルしているから、扱いが大変です」
「持って帰って、捌いてみます」
と、クーラーへ納める。
ボチボチとアタリが出ているが、北西の風も出てきた。
「風が強くなってきましたね」
波も立ち始めた。
「移動しましょう」
潟よりのポイントに移動する。
すると、「なんか来た」と、温水さんが直ぐにアタリを捕らえた。


何度もラインが出ていくが、風と波で揺れる船上で頑張る。
上がってきたのは、ニベだった。

「腕がパンパンや」
これも、7キロ近い大きさだ。
「ニベも引きが強い。腕が筋肉痛です」
楽しい引きに、笑顔だ。
しかし、北西の風が強くなってきたこともあり、昼1時過ぎ帰港した。
「また、楽しみましょう」
「次も、頑張りますね」
笑顔で、船着き場に向かった。