夜明けの海は、雨雲が掛かっていた。
しかし、海の色は晴れ晴れとした、青い透明感のある色をしていた。
「この色を見るのは、久し振りや」
「この色なら、何か釣れそうな気になる」
台風16号以降に、青い海を見るのは初めてだ。
緑色した、菜っ葉潮じゃないだけで嬉しくなる。
潮の色が良いと、ワタリガニも気持ち良さそうに泳いでいる。
青い海を眺めながら、脇坂さんと今日の釣りを開始する。
ベイトも、朝間詰めは沈み瀬の落ち込みアタリに集まっている。
潮は、ゆっくりと沖に払い出している下り潮。
脇坂さんに、今日最初のアタリが来た。
「最初は走ったけど、後は重いだけ」
と言って、船上に釣り上げたのは2キロクラスの良型のヒラメ。
「縁側が美味しいよね」と、笑顔。
しかし、この後、流れが変わり潮が北に行きだした。
「潮が上りに変わってきた。ポイントを変えましょう」
船を北東方向に走らせる。
「沈み瀬の上にベイトが居ますよ。瀬の駆け上がりの処の方がベイトが多いですよ」
ジグを投入していた脇坂さんに、強烈なアタリが来た。
いきなり数十メートル走られ、重々しい走りで竿を曲げている。
時折、竿先が海面に突き刺さるように曲がっている。
何度も、やり取りを繰り返し海中に姿を見せたのは、2メートルは有りそうな大きな鮫。
「うわっ、鮫や。リーダーを切りましょう。こんな大きな鮫を船に上げたら大変だ」
リーダーを切って逃がしたが、こんなに大きな鮫を久し振りに見た。
この鮫と、ダブルでヒットした私の獲物は鰺だった。
鮫が釣れたこともあり、再度のポイント移動。
「ちょっと水深が深くなりますよ」
此処のポイントのベイトは、海底付近から浮き上がらず、底べったりの感じだ。
海底から5メートルの範囲を攻めていた、脇坂さんにアタリ。
2キロクラスのニベだった。
この後、脇坂さんにアタリが連続する。
鰺に、ウッカリカサゴは良型だ。
潮が沖からの突っ込みに変わったところで、又してもアタリが来た。
3キロクラスのニベだった。
「今日は、青物が来ない」
狙いは青物だけに、ニベは一寸寂しい感じだ。
しかし、この後、根掛かりかと思うようなアタリが来たが、相手の突っ込みを耐えていたら針が外れた。
「口が切れたみたいです」
と、残念そうな表情だ。
「ポイントを変えましょうか」
船を沖合に向けて走らせると、綺麗な青々とした潮が来ていた。
「これで、潮が落ち着いたら食いが立ってくるかもね」
「そうですね。良い感じの潮ですね。この青い潮は見ているだけで気持ちいいですね」
潮目アタリには漂流物も多いが、明日の釣りに来たいがもてる良い潮だ。
「今日は、色々と種類を釣ったけど、青物が出らんかった」
「次回に期待しよう」
青い海を気持ちよく走りながら、帰港した。