遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『大人の漢字力』 監修:やくみつる 編:「大人の漢字力」編集部 祥伝社黄金文庫

2021-08-04 15:06:24 | レビュー
 タイトルに惹かれてふと目にとまった文庫本。表紙をよく見ると「監修:やくみつる」となっている。そして、こんなフレーズがその下に書いてある。「漢字王 やくみつるの挑戦を受けて見よ!」と。文庫書き下ろしで、平成27年(2015)2月に初版が出版されている。

 もう長らくキーボードとワープロソフトで文章を書くことが習慣になり、鉛筆やボールペンを手にして紙に漢字を書き連ねるということがほとんどなくなっている。画面上で入力した漢字の識別ができても、それを己の手で紙に書けるか? となれば今やかなり怪しげになりつつある・・・・・。そんな気がとみに高まってきている。

 気分転換も兼ねて、雑紙とボールペンを使い、この本がどの程度の漢字力をターゲットにしているのか、試してみたくなった。内容をあまり見ずに衝動買い。
 「はじめに」を飛ばして「本書の使い方と漢検ガイド」を拾い読みする。「本書は、雑学としての漢字クイズ本とは一線を画し、問題を解き進めながら漢検準2級レベルの漢字力をもつようように作られています」と記されている。漢検にチャレンジしたことがないので、この準2級がどんなレベルかは知らない。続きの文にはこうある。
 「漢検準2級は、ほとんどの常用漢字(平成22年に新しく加わった常用漢字を除く)をカバーする級で、実生活には欠かせない漢字を扱っています。」
常用漢字は一般社会生活で現代国語を書き表す場合の漢字使用の目安として国が定めたのだから、「大人の漢字」と言うことはできるだろう。タイトルに偽りはない。
 
 やり始めて、はまってしまった。こればかりしていた訳ではないが、2日で一応終えた。ところどころで誤答となったところがあった。完全正解で終えられなかったのがちょっと悔しいが、まあ一応の「大人の漢字力」はまだ維持できていそうだ。逆に、これより上の漢検レベルに少し関心を持つきっかけになった。

 このガイドの後の本書の構成をまずご紹介しよう。
第1章 ウォーミングアップ
第2章 漢字の読み
第3章 漢字の書き取り
第4章 いろいろな出題分野の問題① ⇒同音・同訓漢字/送りがな/誤字訂正
第5章 いろいろな出題分野の問題② ⇒四字熟語/対義語・類義語/部首/熟語の構成第6章 よく出る問題
第7章 超難問!
そして、各章の末尾に「ちょっと休憩」としてクイズ的な漢字問題が載っている。

 章立てはいわばオーソドックスな感じでまじめに漢字問題が組み立てられている。常用漢字についての社会人としての漢字力を手軽に自己評価するのにはちょうどよいかもしれない。第7章は「超難問!」と題されている。難しい問題が集めてあるのは順番に取り組んでくると良く分かる。箸にも棒にもかからないというレベルの「超」難問ではない。たぶん、準2級レベルにおいては「超難問」に近いということだろう。さすがにそれまでの章よりは誤答率がこの章で少し高くなった。
 私個人がてこずったのは、第5章末尾の「ちょっと休憩」に取り上げられた「熟語パズル」だった。3×3マスの中央の空白に一字を入れて、熟語となるようにという課題。8問題ありその空白を全部解答できたら、それらの文字を使い四字熟語2つに組み合わせよという形式。マス目を埋めるにはちょっとヒラメキもいる類いの問題である。

 一通りやってみて、漢検という視点で自分の漢字力の弱点がわかった。部首の理解という点でかなり曖昧なままの漢字力という点だ。このレベルの漢字が読め、かつ、書くことができても、その部首は何かという問いに即答できない。戸惑うものがある。普段、部首をほとんど意識していなかったことに気づいた。部首の読み方すらわからないものがある!実生活にはほぼ関係ないが、漢検的視点からすればもう少し漢和辞典とお友達になる必要があるなと再認識した。今まで漢和辞典を使ってきたが、部首の読み方を意識することなんてなかったから。
 いずれにしても、自分自身の「大人の漢字力」を自己診断するには手軽な一冊と言える。しばし、気分転換で楽しめて、反省点も見つかった次第。

 勿論誤答もあったが、全問題にチャレンジし終えて、さいごに「はじめ」を読んだ。
 「はじめ」の末尾に「やく敬白」と記されている。この「はじめ」の文は末尾がやくみつる作成の漢字問題で締めくくられている。枠囲みの一文なのだが、ここでは鍵括弧で引用し表記する。

 「自衛隊のイカンのイカンが今やイカンを呈したかつてのイカンを眺め、イカンながらイカンともし難く、対処の権限をイカンした。」
 
 一つ目と二つ目は順不同でOKという条件つきで、7種のイカンに漢字をあてはめよという漢字問題である。この文の背景になるような事象が何かあったのだろうか。もしそれをイメージできれば解きやすさが加わるかもしれない。私はまったく背景はイメージできなかった。そこで、文脈から類推して漢字を当てはめてみた。完全正解に至らず。残念ながら5/7だった。お粗末!

 それはさておき、漢字に対する自己評価の機会になるとともに、ちょっとした気分転換の機会になった。やっぱり漢字っておもしろい!

 ご一読ありがとうございます。

本書に関連して、ちょっと検索した結果を一覧にまとめておきたい。
常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)  :「文化庁」
常用漢字  :「コトバンク」
常用漢字一覧  :ウィキペディア
常用漢字チェッカー  :「12Net」
日本漢字能力検定  日本漢字能力検定協会ホームページ
  漢検 受験級の目安チェック 準2級
  漢検 受験級の目安チェック 2級
四字熟語データバンク ホームページ
四字熟語 [漢字の世界]・アーカイブ  :「福島民友新聞」
おもな四字熟語  :「コトバンク」
四字熟語辞典 ONLINE

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