2012年4月に出版された新書である。福島第一原発爆発事故発生の1年後の出版だ。本書の内容は事故発生後に著者が様々なところで講演し論じてきている内容の集約版の1冊とも言える。従って、Youtubeの動画で流布している著者の講演記録をいくつか視聴していけば、ほぼこの本の内容が得られるというのが一つの読後印象だ。
とはいえ、活字になった集約版にはいくつかのメリットがある。
1.内容が整理編集されている。
本書では、3章構成にまとめられている。「1なぜ東電と政府は平気でウソをつくか」「2さらなる放射能拡散の危機は続く」「3汚染列島で生きていく覚悟」という具合である。
そして各章は疑問点に答えるという形式、Q&Aスタイルで編集されているので、「まえがき」の項目を具体的に読んでいけば、読者の抱く疑問点、不安事項を多分見いだすことができるだろう。なぜなら、数多くの講演会後の質疑応答やラジオのインタビューによる質疑応答などで、一般国民の頻度の高い疑問点や不安事項はほぼ出尽くし、それがまた講演会の内容に反映していくという経緯があるだろうからである。
2.「まえがき」を疑問・不安に関係するキーワードでスキャンして、即座に自分の関心事からまず読み始めることができる。動画の場合、なかなかそうは行かない。また、動画を視聴していたとしても、必要箇所を再度見直す・聞き直すという時は不便である。この点が活字本は効率よく再アクセスできる。
3.いくつかのページ、箇所をパラレルに参照しながら考え方を整理してみるということや部分的繰り返し読みや対比読みなどをすることで、深読みしていくことも可能である。
という意味で、Youtubeで公開されている様々な場所での著者の講演動画を見ていたとしても、この本を頭の整理というために役立てるのがよいだろう。私自身が著者のYoutube動画を数多く視聴してきた経験からの印象でもある。改めて理解を深めた箇所がいくつもある。
本書のタイトル「騙されたあなたにも責任がある」は著者が講演の中で幾度も発言してきたフレーズである。この言葉は、一種反語的な強烈さを秘める。究極での「責任」という意味合いがあると感じる。
原子力という学問領域を専攻した著者は、その結果反原発という立場にたち過去営々と活動してきている。「何とかこんな悲劇が起きる前に原子力をやめさせたいと思っていた」という思いが根底にある。だから「原子力をやめさせられなかった責任」を痛烈に意識している人だ。その原点は「私がどんなことをいっても、みなさんには届かなかったのです」と語る。
私自身、恥ずかしながら小出裕章・著者を知ったのは、福島第一原発爆発事故後である。「国とかマスコミを含めて、原子力は安全だということしか流さなかった」ということに、それほど意識せずに過ごしていたのが実態だった。原子力安全神話を信じていたわけではないが、安全神話が造り出されてきたカラクリに目を向けてみるという意識を持っていなかった。電気エネルギーの発生源くらいにしか認識していなかったというべきだろう。原爆の悲劇と原発の悲劇を結びつけるという考えを深めて行くなどという発想を持たなかったという点で、原子力安全神話に乗せられてしまっていたのだろう。今、改めて情報の流布環境、情報操作ということを、遅ればせながら意識している次第だ。
結果として問題意識が生ませない情報環境づくりの中で「普通の国民のみなさんがそれに騙されたということは、仕方のないことだと思います」と著者はまず、そのことを認めている。本書タイトルの意味は、その先にある。「騙されたから仕方がない」というところに留まるなという点だ。そこで思考停止してしまえば、「また騙されるという歴史が続いてしまいます」ということこそ重要なのだ。比喩的に言えば、第二次世界大戦中の一般国民は大本営発表に騙されてきた。原発推進は原子力安全神話形成という情報環境に騙されてきた。商業主義のマスコミもその神話形成に一翼を担っていた。ある意味、大本営発表的な行動パターンである。それしか情報が届かないと、「また騙されるという歴史」が続いたパターンである。二度あることは三度ある、というが、そのパターンから脱却することがまず必要なのだという反語的表現なのだろう。「騙されたなら騙されたことの意味を考え責任を取る」(p194)というフレーズこそ、本書タイトルの意味なのだ。まず、騙されたことの意味、なぜ騙されたのかを考えてみることが責任を取る始まりなのだ。思考操作、情報操作されていた自分を知ることから出発する責任があるよ、ということだ。適切で正確な情報を入手し、考え、己の知性を磨くことから始めるべきだということだろう。
本書は、原子力安全神話から脱却するための基本的な情報が数多くの講演プロセスを経て、「騙されたことの意味」を考える材料、情報をわかりやすく説明している。疑問、不安の解消の手始めとして、騙された手口を再認識するための入門テキストとして有益である。
著者は一見、極論的発言をしている。だが、そこにはきっちりとした論理・理屈が内在している。著者の発言は、己のなした行動に対する結果責任をきっちり考えて、その責任をとること、行動で示すことが当たり前のことだろうという原則論に立脚している。行動としての問題解決への対策の取り方は様々なレベルが存在する。著者は、時折究極的な対策(極論的行動)をボンとまず提示しているに過ぎない。この極論的発言こそが、私たちにとっては「騙された意味」を考えるトリガーとなるように思う。
著者は「個人が自分の責任をかけて発言することでなければダメ」だという立場を堅持する。原子力ムラの無責任体制を糾弾している。「責任」の重みである。
いくつかの極論的発言を拾い出しておこう。著者の真意は何か? それを本書のQ&A式編集の中から読み込んでいただくと、「騙された意味を考える」ことになっていくと思う。極論は真剣に考えるためのインパクトなのだ。
*汚染された食べ物は、大人たちが責任に応じて食べるしかない。 p4
*国会の議員食堂や東電の社員食堂は猛烈な汚染食品で献立を作ればいい。 p5
*(汚染土は)腐食しない容器に入れて、東京電力の社内や国会議事堂に積み上げて欲しい。 p37
*(爆発事故で)原発から飛び散った放射性物質を、自分は知らない(東電の所有物でない)というのは無責任な会社です。 p58
*私から見ると、いまだに米国の属国だという感じがします。 p102
*国会議員の方はみなさん除染できたという土地に住んでほしい。 p113
*汚染はまず、東京電力福島第一原子力発電所に返せばよい。 p187
一方で、いくつかの基盤となる基本情報の説明も見逃せないので、覚書を兼ねて本書から列挙しておきたい。当たり前だろうという説明もあるかもしれないが、それこそ議論で見落とされ、上滑りする可能性もあるのだから。(原則引用だが煩雑さを避けるために一部要約した箇所も含む。)詳細は、勿論本書をお読みいただきたい。
*IAEA-原子力を進める、世界的な原子力村の総本山-から見ても、なおかつ日本のやり方がおかしといっている。 p24
*国が率先して法律破りをしている。・・・汚染地帯に人が帰ってもいいと、日本の政府が決めたのです。 p26
1年間に1ミリシーベルトという、国の法律を守れないような世界にすでに変わってしまっている。 p46
*猛烈な被曝環境の中で、きちっとした工事をすることは難しい(のが汚染された現場である。) p29
*風が吹いた歩行に汚染が広がる。 p31
避難すればいい、といっても方向が問題なのです。 p143
*ストロンチウムのように、水に溶けにくいものは、土に汚染が溜まり、生き物を汚すということになる。 p36
セシウム137は半減期が30年。汚染は長い間、その地下に残る。 p49
*ロンドン条約という国際条約で放射性物質を海に捨ててはいけないことになっている。 p38
*(広大な立ち入り禁止の汚染された)砂漠の中の(除染して立ち入り可能な)オアシスのような形では、生活自体が成り立たない。 p56
森林の土を剥ぎ取ることはできません。 p112
*(運転稼働した)原子力発電所で絶対に交換できない部品が(原子炉本体の)原子力圧力容器そのものであること。 p67
*今現在も、溶けた炉心、燃料がどこにあるのかもわかりません。 p79
*東日本大震災で、広範囲に岩盤が割れていますから、余震はこれからも必ずある。p90
*実測は計算よりも大切だ。 p105
*(放射性物質の)「崩壊熱」は止められない。何をやっても止めることができない熱が原子炉の中で21万キロワット出るのです。 p133
*原子力発電所を全廃しても電気が足りる。 p148
*原子力の単価が高くても、電力会社は儲かる仕組みがあった。 p150
*世の中すべてが汚れてしまった。汚染の少ないものから、猛烈に汚れているものまで、連続的にあるだけなのです。 p158
*外部からの被曝の意味では、ガンマ線だけが問題。体の中に取り込んでしまうと、ベータ線あるいはアルファ線を出す物質がむしろ危険。放射線が体の中にすべてのエネルギーを落とすので。つまり、注意のしかたが異なることになります。 p161
*きちっと測定をして、それを公表し、汚染の少ないものを子どもたちに回せるようなシステムを作らなければいけない。 p164
*高速増殖炉「もんじゅ」は、開発には1兆円かかり、さらに停止している間にも維持費が年間二百数十億円かかる。 p182
騙された意味を考え責任をとるとは、行きつくところは「脱原発」への行動をとることなのだ。原発の維持と核兵器開発・所有の潜在的能力がコインの両面とみられているなら、なおさらである。本書ではプルトニウムの問題について「兆優秀な核兵器材料が作れるという性質」という点で高速増殖炉にわずかに触れているだけである。
もうこれ以上騙されないためには、基礎的な情報をきっちりと知ることが大事である。そのための入門書になるだろう。
ご一読ありがとうございます。
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本書に関連する事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
2014.5.24 小出裕章氏講演会&伊方とほんとうのフクシマ」写真展 :YouTube
小出裕章 福島原発「事件」後を生きる 7/5【IWJ_KYOTO1】 :YouTube
小出裕章さん講演会「原子力と核 -戦後世界が戦前に変わる日-(前半)」(2014年6月18日 沖縄大学) :YouTube
小出裕章さん講演会「原子力と核 -戦後世界が戦前に変わる日-(後半)」(2014年6月18日 沖縄大学) :YouTube
児玉龍彦氏「あらためて内部被ばくを考える~未来のためにただしい知識を~」20130418 : YouTube
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その点、ご寛恕ください。)
今までに以下の原発事故関連書籍の読後印象を掲載しています。
読んでいただけると、うれしいです。
『福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房
『対話型講義 原発と正義』 小林正弥 光文社新書
『原発メルトダウンへの道』 NHK ETV特集取材班 新潮社
『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1』 東浩紀編 genron
『原発ホワイトアウト』 若杉 洌 講談社 ←付記:小説・フィクション
『原発クライシス』 高嶋哲夫 集英社文庫 ←付記:小説・フィクション
原発事故及び被曝に関連した著作の読書印象記掲載一覧 (更新2版)
とはいえ、活字になった集約版にはいくつかのメリットがある。
1.内容が整理編集されている。
本書では、3章構成にまとめられている。「1なぜ東電と政府は平気でウソをつくか」「2さらなる放射能拡散の危機は続く」「3汚染列島で生きていく覚悟」という具合である。
そして各章は疑問点に答えるという形式、Q&Aスタイルで編集されているので、「まえがき」の項目を具体的に読んでいけば、読者の抱く疑問点、不安事項を多分見いだすことができるだろう。なぜなら、数多くの講演会後の質疑応答やラジオのインタビューによる質疑応答などで、一般国民の頻度の高い疑問点や不安事項はほぼ出尽くし、それがまた講演会の内容に反映していくという経緯があるだろうからである。
2.「まえがき」を疑問・不安に関係するキーワードでスキャンして、即座に自分の関心事からまず読み始めることができる。動画の場合、なかなかそうは行かない。また、動画を視聴していたとしても、必要箇所を再度見直す・聞き直すという時は不便である。この点が活字本は効率よく再アクセスできる。
3.いくつかのページ、箇所をパラレルに参照しながら考え方を整理してみるということや部分的繰り返し読みや対比読みなどをすることで、深読みしていくことも可能である。
という意味で、Youtubeで公開されている様々な場所での著者の講演動画を見ていたとしても、この本を頭の整理というために役立てるのがよいだろう。私自身が著者のYoutube動画を数多く視聴してきた経験からの印象でもある。改めて理解を深めた箇所がいくつもある。
本書のタイトル「騙されたあなたにも責任がある」は著者が講演の中で幾度も発言してきたフレーズである。この言葉は、一種反語的な強烈さを秘める。究極での「責任」という意味合いがあると感じる。
原子力という学問領域を専攻した著者は、その結果反原発という立場にたち過去営々と活動してきている。「何とかこんな悲劇が起きる前に原子力をやめさせたいと思っていた」という思いが根底にある。だから「原子力をやめさせられなかった責任」を痛烈に意識している人だ。その原点は「私がどんなことをいっても、みなさんには届かなかったのです」と語る。
私自身、恥ずかしながら小出裕章・著者を知ったのは、福島第一原発爆発事故後である。「国とかマスコミを含めて、原子力は安全だということしか流さなかった」ということに、それほど意識せずに過ごしていたのが実態だった。原子力安全神話を信じていたわけではないが、安全神話が造り出されてきたカラクリに目を向けてみるという意識を持っていなかった。電気エネルギーの発生源くらいにしか認識していなかったというべきだろう。原爆の悲劇と原発の悲劇を結びつけるという考えを深めて行くなどという発想を持たなかったという点で、原子力安全神話に乗せられてしまっていたのだろう。今、改めて情報の流布環境、情報操作ということを、遅ればせながら意識している次第だ。
結果として問題意識が生ませない情報環境づくりの中で「普通の国民のみなさんがそれに騙されたということは、仕方のないことだと思います」と著者はまず、そのことを認めている。本書タイトルの意味は、その先にある。「騙されたから仕方がない」というところに留まるなという点だ。そこで思考停止してしまえば、「また騙されるという歴史が続いてしまいます」ということこそ重要なのだ。比喩的に言えば、第二次世界大戦中の一般国民は大本営発表に騙されてきた。原発推進は原子力安全神話形成という情報環境に騙されてきた。商業主義のマスコミもその神話形成に一翼を担っていた。ある意味、大本営発表的な行動パターンである。それしか情報が届かないと、「また騙されるという歴史」が続いたパターンである。二度あることは三度ある、というが、そのパターンから脱却することがまず必要なのだという反語的表現なのだろう。「騙されたなら騙されたことの意味を考え責任を取る」(p194)というフレーズこそ、本書タイトルの意味なのだ。まず、騙されたことの意味、なぜ騙されたのかを考えてみることが責任を取る始まりなのだ。思考操作、情報操作されていた自分を知ることから出発する責任があるよ、ということだ。適切で正確な情報を入手し、考え、己の知性を磨くことから始めるべきだということだろう。
本書は、原子力安全神話から脱却するための基本的な情報が数多くの講演プロセスを経て、「騙されたことの意味」を考える材料、情報をわかりやすく説明している。疑問、不安の解消の手始めとして、騙された手口を再認識するための入門テキストとして有益である。
著者は一見、極論的発言をしている。だが、そこにはきっちりとした論理・理屈が内在している。著者の発言は、己のなした行動に対する結果責任をきっちり考えて、その責任をとること、行動で示すことが当たり前のことだろうという原則論に立脚している。行動としての問題解決への対策の取り方は様々なレベルが存在する。著者は、時折究極的な対策(極論的行動)をボンとまず提示しているに過ぎない。この極論的発言こそが、私たちにとっては「騙された意味」を考えるトリガーとなるように思う。
著者は「個人が自分の責任をかけて発言することでなければダメ」だという立場を堅持する。原子力ムラの無責任体制を糾弾している。「責任」の重みである。
いくつかの極論的発言を拾い出しておこう。著者の真意は何か? それを本書のQ&A式編集の中から読み込んでいただくと、「騙された意味を考える」ことになっていくと思う。極論は真剣に考えるためのインパクトなのだ。
*汚染された食べ物は、大人たちが責任に応じて食べるしかない。 p4
*国会の議員食堂や東電の社員食堂は猛烈な汚染食品で献立を作ればいい。 p5
*(汚染土は)腐食しない容器に入れて、東京電力の社内や国会議事堂に積み上げて欲しい。 p37
*(爆発事故で)原発から飛び散った放射性物質を、自分は知らない(東電の所有物でない)というのは無責任な会社です。 p58
*私から見ると、いまだに米国の属国だという感じがします。 p102
*国会議員の方はみなさん除染できたという土地に住んでほしい。 p113
*汚染はまず、東京電力福島第一原子力発電所に返せばよい。 p187
一方で、いくつかの基盤となる基本情報の説明も見逃せないので、覚書を兼ねて本書から列挙しておきたい。当たり前だろうという説明もあるかもしれないが、それこそ議論で見落とされ、上滑りする可能性もあるのだから。(原則引用だが煩雑さを避けるために一部要約した箇所も含む。)詳細は、勿論本書をお読みいただきたい。
*IAEA-原子力を進める、世界的な原子力村の総本山-から見ても、なおかつ日本のやり方がおかしといっている。 p24
*国が率先して法律破りをしている。・・・汚染地帯に人が帰ってもいいと、日本の政府が決めたのです。 p26
1年間に1ミリシーベルトという、国の法律を守れないような世界にすでに変わってしまっている。 p46
*猛烈な被曝環境の中で、きちっとした工事をすることは難しい(のが汚染された現場である。) p29
*風が吹いた歩行に汚染が広がる。 p31
避難すればいい、といっても方向が問題なのです。 p143
*ストロンチウムのように、水に溶けにくいものは、土に汚染が溜まり、生き物を汚すということになる。 p36
セシウム137は半減期が30年。汚染は長い間、その地下に残る。 p49
*ロンドン条約という国際条約で放射性物質を海に捨ててはいけないことになっている。 p38
*(広大な立ち入り禁止の汚染された)砂漠の中の(除染して立ち入り可能な)オアシスのような形では、生活自体が成り立たない。 p56
森林の土を剥ぎ取ることはできません。 p112
*(運転稼働した)原子力発電所で絶対に交換できない部品が(原子炉本体の)原子力圧力容器そのものであること。 p67
*今現在も、溶けた炉心、燃料がどこにあるのかもわかりません。 p79
*東日本大震災で、広範囲に岩盤が割れていますから、余震はこれからも必ずある。p90
*実測は計算よりも大切だ。 p105
*(放射性物質の)「崩壊熱」は止められない。何をやっても止めることができない熱が原子炉の中で21万キロワット出るのです。 p133
*原子力発電所を全廃しても電気が足りる。 p148
*原子力の単価が高くても、電力会社は儲かる仕組みがあった。 p150
*世の中すべてが汚れてしまった。汚染の少ないものから、猛烈に汚れているものまで、連続的にあるだけなのです。 p158
*外部からの被曝の意味では、ガンマ線だけが問題。体の中に取り込んでしまうと、ベータ線あるいはアルファ線を出す物質がむしろ危険。放射線が体の中にすべてのエネルギーを落とすので。つまり、注意のしかたが異なることになります。 p161
*きちっと測定をして、それを公表し、汚染の少ないものを子どもたちに回せるようなシステムを作らなければいけない。 p164
*高速増殖炉「もんじゅ」は、開発には1兆円かかり、さらに停止している間にも維持費が年間二百数十億円かかる。 p182
騙された意味を考え責任をとるとは、行きつくところは「脱原発」への行動をとることなのだ。原発の維持と核兵器開発・所有の潜在的能力がコインの両面とみられているなら、なおさらである。本書ではプルトニウムの問題について「兆優秀な核兵器材料が作れるという性質」という点で高速増殖炉にわずかに触れているだけである。
もうこれ以上騙されないためには、基礎的な情報をきっちりと知ることが大事である。そのための入門書になるだろう。
ご一読ありがとうございます。
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本書に関連する事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
2014.5.24 小出裕章氏講演会&伊方とほんとうのフクシマ」写真展 :YouTube
小出裕章 福島原発「事件」後を生きる 7/5【IWJ_KYOTO1】 :YouTube
小出裕章さん講演会「原子力と核 -戦後世界が戦前に変わる日-(前半)」(2014年6月18日 沖縄大学) :YouTube
小出裕章さん講演会「原子力と核 -戦後世界が戦前に変わる日-(後半)」(2014年6月18日 沖縄大学) :YouTube
児玉龍彦氏「あらためて内部被ばくを考える~未来のためにただしい知識を~」20130418 : YouTube
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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
今までに以下の原発事故関連書籍の読後印象を掲載しています。
読んでいただけると、うれしいです。
『福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房
『対話型講義 原発と正義』 小林正弥 光文社新書
『原発メルトダウンへの道』 NHK ETV特集取材班 新潮社
『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1』 東浩紀編 genron
『原発ホワイトアウト』 若杉 洌 講談社 ←付記:小説・フィクション
『原発クライシス』 高嶋哲夫 集英社文庫 ←付記:小説・フィクション
原発事故及び被曝に関連した著作の読書印象記掲載一覧 (更新2版)