本書の副題は、「福島第一原発の保守管理者として」である。2011年9月に出版された。著者は、東京電力に入社し、原子力燃料サイクル部部長(サイクル技術担当)の経歴を最後に、2009年夏に早期定年退職選択制度を利用して退職された。一方、個人としては「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」の元副代表でもある。拉致関係の著書がある。こちらの方で名前を知っている人が大半だろう。私もそうだった。
東電で原発推進の立場で仕事をしてきた著者が、その体験、内部の視点を踏まえて書いている。「はじめに」では「しかし私は二年前に東電を退職して縁を切りました。第三者的な観点といいますか。客観的に今度の事故を捉えて、自分の考えを発信したいという気持ちでいます」と記す。「東電関連会社には一切行きませんという誓約書を書いて、2009年6月いっぱいで辞めたのです。それが『縁を切る』ことなのです。」(p70)
著者のような立場からの発言は、福島第一原発爆発事故の背景事実を知るうえで有益だと考える。以前に、内部者の立場から見た本を一冊読んでいる。その本ともまた違う業務体験者の本であり、重ね合わせていくと実態が一層見えてくる気がする。
本書は三章と対談で構成されている。
第1章 今回の事故はどういうものだったか
第2章 東電は変われるか
第3章 自滅する原発-原発をフェイドアウトするために
対談 拉致と戦争と原発を結ぶもの 蓮池透・伊勢賢治
第1章は今回の事故の問題が何だったかを著者の目で概括したまとめである。原発の現場で仕事をした体験からの発言が各所に出てくる。現実の事故の結果を知ったうえでの発言だ。次の発言を考える材料として抽出しておきたい。ところどころ、感想を付記する。その発言文脈を本書で読んでいただくとよいのではないだろうか。
*私が一番感じるのは、なぜ情報を一元化できないのかということです。 p14
*まず大規模な地震の揺れにたいしては、私は、日本の原発は耐えられるし、対処できるという自信があります。 p15
→ 文脈からは原子炉本体だけについての見解だと感じる。それで事故が防げるとは思えないのだが。安全神話から脱却できていないのだろうか。
*私は(付記:東電、政府が)メルトダウン、メルトスルーの可能性があると踏んでいたのではないかと思っています。 p18
*SBOという状況下でAMを実際に行動に移すことになろうとは、夢にも思っていなかったのではないでしょうか。ましてや、海水注入などマニュアルのどこにも書いていないのですから。 p19
*海水注入開始はメルトダウンの後でした。注入を続けたことと、メルトダウンを防げたかどうかということは、実は無関係なのです。 p21
*水素爆発の原因・メカニズム、ベントとの因果関係を一刻も早く明らかにしてもらいたいと思います。 p23
→ 現場を経験する技術者にとっても未だ疑問が解けないということなのだ。つまり、この点すら分からずに、既存原発の再稼働に走るのは国民無視の暴走にすぎないのではないか。
*問題は、溶融した燃料がどういう形状になっているのか把握できないことです。 p27
*津波対策は絶対に必要だったと同僚とも話していましたが、「福島には来ないよね」という調子でした。現に大きな津波が福島に来たことはありませんでした。貞観地震(869年)での津波が最近話題になっていますが、10メートルを超える津波など考えたこともなかったのです。
→ 内部者の感覚がよくわかる。これが東電の風土の一端なのだろう。
第2章で著者は、東電に入社までの経緯から始め、入社後の社内での経歴の変遷歴を説明しながら、当時の原発事業の実態を綴っている。ここには、原子力事業の東電内部での位置づけや組織体質が内部者だった経験から述べられている。この点は事故の背景を知るうえで、重要な要になると思う。そこでの問題点が改善、解消されないと、同じ事が繰り返されるだけだろう。また、他の電力会社に同類の事象がないか、深く検討すべき観点のような気がする。著者はこんなことを指摘している。
*運転中は仕事で被曝することはあまりないのですが、定期検査ではいろいろな機器等を分解するので、汚染区域が広がるのです。・・・東電社員が最初に線量の高いところに入ってしまって線量オーバーしたら、あとで確認にいけなくなるので、全部の点検作業が終わってから入ります。全部点検をしてオーケーを出すころには、もうアラームがビーッと鳴るのです。 p38-39
*そのころは、原発の作業員がアラームメーターを線量の低いところに置いて作業をするということがありました。 p39
→ 著者の見聞であるとすると、結果的に黙認する風土を容認していたのだろうか。
*会社の作業員の被曝線量がみんな制限の上限に達したら、働き手がいなくなってしまい、会社が成り立たなくなるからです。危ない作業をする人は結局会社のためになるということです。変な論理です。 p39
→ 同じ事が、事故後の最近も継続されている。作業員の犠牲の上での事業など、存続させるべきではない。そう思う。
*発電しない原発は”金食い虫”ですから、稼働率を上げろというのが至上命令です。 p41
*原子炉の設計をしたのは、初期ではGE社で、後に日本の日立、東芝、三菱が担当するようになりますが、東電はそれをオペレーションしているにすぎず、今回の事故処理にも設計側の企業があまり入っていなかったことも、問題だと言われています。 p43
→ これは各電力会社の原発の実態でもあるのではないか。つまり、大事故対処能力に最初から大きな限界が内在するということだろう。自動車とどうように、通常の運転操作ならできる・・・そんな感じか。怖い話だ。
*原発の周囲では、町の中に東電があるのではなく、東電の中に町があるような感じでした。 p45
→ 企業城下町という表現が他業界でも使われるが、同じ体質がどこにでもある。
*原子力をやっている人は、他部門とほとんど交流がありません。他部門から原子力に来る人はいるのですが、原子力から他部門に行く人はほとんどいなかったように思います。・・・華やかに映るだけで、原子力だから憧れの花形だという雰囲気は東電社内ではありませんでした。 p55
→ 東電の中でも、原子力部門がムラとなっていることがよくわかる。原子力ムラ体質が強化されるだけのようだ。
*原発を建設するさいに「揺れ」に耐えられるかどうかの審査は厳しく、・・・・それにたいして、津波の安全基準は非常に簡単なものです。・・・比較的簡易な審査でした。 p58-59
→ つまり、既存原発はそのレベルの審査基準と認可手続きで現存していることになる。津波に対する警鐘がならされても対応が進んでいない。リスクの大きさが推察できる。*(付記:津波についての文脈で)福島第一原発の場合「まったく考えていなかった」のです。これは「想定外」というより、「無想定」と言ってよいと思います。 p60
*「東電社員はみな安全神話を信じていたか?」と問われれば、そうだと答えるしかないのです。 p60
*コストを無視したような”要塞プラント”をつくるかといったら、つくらないと思います。・・・・一民間会社としてはコストとリスク・安全性を綱引きして、「じゃあ、このへんでおさえておきましょう」となるのです。 p64
→ 原子力関連の国の補助金がなくなれば、原発が民間事業で運営できないことを端的に言っていることになる。つまり、原発は独立事業ではない。そんな発電源はなくすべきだろう。あまりにも人類、生物に対するリスクが大きすぎる。
*私は隠蔽体質というより、簡単にいうと独占企業の奢りの体質があるのだと思います。 p65
→ 両方、あるように思えるのだが・・・・
*「事ながれ主義」があるのです。とくに原子力は、小さなことでも、比較的大きなことでも、同列に報道されることが多いのです。どんな小さなことでも、「放射線による周辺環境への影響はありません」などと必ず報道されています。ですから東電の原子力を担当する広報などは、できればあまり多くを語りたくないというのが本音ではないかと思います。 p66-67
→ これは、トラブルについてどの企業、業種の広報でも同様ではないかと感じる。
*バッシングしているのはおもにマスメディアですが、彼らがつねに監視していかなければならないことは、冷却状態など原子炉の状態です。しかし、東電の周辺情報の提供によって、そちらの方に報道がシフトしてしまうことがあるようです。 p79
→ このマスメディアの傾向、ご都合主義はがまんできない。
第3章では、東電と縁を切った著者が、現時点で原子力という電源について、自らの立場を鮮明にしている。章見出しに明確である。原発から発生する放射性廃棄物処理の最終処分場問題などの現状を踏まえ、「このままいけば原発は自滅するな」という思いだという。この思いは在職中からあったようだ。著者は「本当は恐ろしい核のゴミ問題」という認識をこの章で述べている。そして、著者は原発をフェイドアウトしていくべきだ主張している。
「子どもの年間許容量20ミリシーベルトには、私は大反対です」と述べ、「未来ある子どもを被曝から守ることが必要だと思っています」の一文でこの章を締め括っている。子どもを被曝から守る、この視点が今の行政にはあいまいなままで「事なかれ主義」に堕していないか。それが気懸かりだ。
最後の対談は、世界各地での紛争処理、武装解除に携わった経験を持ち、福島第一原発事故の後、現地に赴き活動した伊勢氏と蓮池氏が、それぞれの体験を踏まえて、原発、福島を論じている。戦争、紛争処理や拉致問題をアナロジーとして援用する視点に広がりがあり、そこからいくつかの指摘が導き出されてくる。その指摘までの展開プロセスが対談のおもしろさであろう。
指摘事項の結論のいくつかを要約させていただくと、
・危険だと言われている場所でも、線量計を持って気をつけていれば、人道援助は可能である。
・福島に残ると決意した市民が自らの保護のために線量計を持つのは現実的だ。
・福島に残る人はすべて高度な放射線で汚染されているみたいな印象を絶対作ってはならない。
・恐怖によって煽られた世論の存在は問題だ。
・被害者意識の負の部分がでないように、早く復旧・復興することが重要である。
・風評被害を制御するには教育しかない。
また、原発のフェイドアウトについての対談は、世界を見つめた視点と話題での論議となっている。「脱原発三原則」という発想まで語られていて参考になる。
ご一読ありがとうございます。
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本書の語句で、少しネット検索してみた。一覧にまとめておきたい。
蓮池 透 :ウィキペディア
SBO(ステーションブラックアウト)→原子力事故 →原子力施設の停電 :ウィキペディア
AM(アクシデントマネジメント) :電気連合会
軽水炉におけるシビアアクシデントマネージメントについて :ATOMICA
シビアアクシデント :ATOMICA
軽水型原子力発電所におけるアクシデントマネジメントの整備結果について
評価報告書 原子力安全・保安院 :経済産業省
NRC(原子力規制委員会)のHP
国際原子力事象評価尺度 :ウィキペディア
SSC → 応力腐食割れ :ウィキペディア
沸騰水型原子炉 :ウィキペディア
ABWR → 改良型沸騰水型軽水炉 :ウィキペディア
加圧水型原子炉 :ウィキペディア
高速増殖炉 :ウィキペディア
新生「もんじゅ」のHP :日本原子力研究開発機構 敦賀本部
六ヶ所再処理工場 :ウィキペディア
たねまきJ「六ヶ所村再処理工場 ・恐るべき再処理の実態」小出裕章氏(内容書き出し・参考あり)7/19 :「みんな楽しくHappyがいい」
とめよう!六ヶ所再処理工場 :「原子力資料情報室」
プルサーマル :ウィキペディア
軽水炉用MOX(プルサーマル)燃料 :ATOMICA
電源三法 :ウィキペディア
楢葉町等における区域見直し後の避難指示区域と警戒区域の概念図 :首相官邸
特定非営利活動法人ピースビルダーズ(PB) のHP
国連高等難民弁務官事務所(UNHCR) のHP
核兵器不拡散条約(NPT)の概要 :外務省
ボパール化学工場事故 :ウィキペディア
伊勢崎賢治 :ウィキペディア
忌野清志郎___サマータイム・ブルース_原発.
斉藤和義 ずっとウソだった
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今までに以下の原発事故関連書籍の読後印象を掲載しています。
読んでいただけると、うれしいです。
『電力危機』 山田興一・田中加奈子
『全国原発危険地帯マップ』 武田邦彦
『放射能汚染の現実を超えて』 小出裕章
『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』 たくきよしみつ
2011年8月~2012年7月 読書記録索引 -1 原発事故関連書籍
東電で原発推進の立場で仕事をしてきた著者が、その体験、内部の視点を踏まえて書いている。「はじめに」では「しかし私は二年前に東電を退職して縁を切りました。第三者的な観点といいますか。客観的に今度の事故を捉えて、自分の考えを発信したいという気持ちでいます」と記す。「東電関連会社には一切行きませんという誓約書を書いて、2009年6月いっぱいで辞めたのです。それが『縁を切る』ことなのです。」(p70)
著者のような立場からの発言は、福島第一原発爆発事故の背景事実を知るうえで有益だと考える。以前に、内部者の立場から見た本を一冊読んでいる。その本ともまた違う業務体験者の本であり、重ね合わせていくと実態が一層見えてくる気がする。
本書は三章と対談で構成されている。
第1章 今回の事故はどういうものだったか
第2章 東電は変われるか
第3章 自滅する原発-原発をフェイドアウトするために
対談 拉致と戦争と原発を結ぶもの 蓮池透・伊勢賢治
第1章は今回の事故の問題が何だったかを著者の目で概括したまとめである。原発の現場で仕事をした体験からの発言が各所に出てくる。現実の事故の結果を知ったうえでの発言だ。次の発言を考える材料として抽出しておきたい。ところどころ、感想を付記する。その発言文脈を本書で読んでいただくとよいのではないだろうか。
*私が一番感じるのは、なぜ情報を一元化できないのかということです。 p14
*まず大規模な地震の揺れにたいしては、私は、日本の原発は耐えられるし、対処できるという自信があります。 p15
→ 文脈からは原子炉本体だけについての見解だと感じる。それで事故が防げるとは思えないのだが。安全神話から脱却できていないのだろうか。
*私は(付記:東電、政府が)メルトダウン、メルトスルーの可能性があると踏んでいたのではないかと思っています。 p18
*SBOという状況下でAMを実際に行動に移すことになろうとは、夢にも思っていなかったのではないでしょうか。ましてや、海水注入などマニュアルのどこにも書いていないのですから。 p19
*海水注入開始はメルトダウンの後でした。注入を続けたことと、メルトダウンを防げたかどうかということは、実は無関係なのです。 p21
*水素爆発の原因・メカニズム、ベントとの因果関係を一刻も早く明らかにしてもらいたいと思います。 p23
→ 現場を経験する技術者にとっても未だ疑問が解けないということなのだ。つまり、この点すら分からずに、既存原発の再稼働に走るのは国民無視の暴走にすぎないのではないか。
*問題は、溶融した燃料がどういう形状になっているのか把握できないことです。 p27
*津波対策は絶対に必要だったと同僚とも話していましたが、「福島には来ないよね」という調子でした。現に大きな津波が福島に来たことはありませんでした。貞観地震(869年)での津波が最近話題になっていますが、10メートルを超える津波など考えたこともなかったのです。
→ 内部者の感覚がよくわかる。これが東電の風土の一端なのだろう。
第2章で著者は、東電に入社までの経緯から始め、入社後の社内での経歴の変遷歴を説明しながら、当時の原発事業の実態を綴っている。ここには、原子力事業の東電内部での位置づけや組織体質が内部者だった経験から述べられている。この点は事故の背景を知るうえで、重要な要になると思う。そこでの問題点が改善、解消されないと、同じ事が繰り返されるだけだろう。また、他の電力会社に同類の事象がないか、深く検討すべき観点のような気がする。著者はこんなことを指摘している。
*運転中は仕事で被曝することはあまりないのですが、定期検査ではいろいろな機器等を分解するので、汚染区域が広がるのです。・・・東電社員が最初に線量の高いところに入ってしまって線量オーバーしたら、あとで確認にいけなくなるので、全部の点検作業が終わってから入ります。全部点検をしてオーケーを出すころには、もうアラームがビーッと鳴るのです。 p38-39
*そのころは、原発の作業員がアラームメーターを線量の低いところに置いて作業をするということがありました。 p39
→ 著者の見聞であるとすると、結果的に黙認する風土を容認していたのだろうか。
*会社の作業員の被曝線量がみんな制限の上限に達したら、働き手がいなくなってしまい、会社が成り立たなくなるからです。危ない作業をする人は結局会社のためになるということです。変な論理です。 p39
→ 同じ事が、事故後の最近も継続されている。作業員の犠牲の上での事業など、存続させるべきではない。そう思う。
*発電しない原発は”金食い虫”ですから、稼働率を上げろというのが至上命令です。 p41
*原子炉の設計をしたのは、初期ではGE社で、後に日本の日立、東芝、三菱が担当するようになりますが、東電はそれをオペレーションしているにすぎず、今回の事故処理にも設計側の企業があまり入っていなかったことも、問題だと言われています。 p43
→ これは各電力会社の原発の実態でもあるのではないか。つまり、大事故対処能力に最初から大きな限界が内在するということだろう。自動車とどうように、通常の運転操作ならできる・・・そんな感じか。怖い話だ。
*原発の周囲では、町の中に東電があるのではなく、東電の中に町があるような感じでした。 p45
→ 企業城下町という表現が他業界でも使われるが、同じ体質がどこにでもある。
*原子力をやっている人は、他部門とほとんど交流がありません。他部門から原子力に来る人はいるのですが、原子力から他部門に行く人はほとんどいなかったように思います。・・・華やかに映るだけで、原子力だから憧れの花形だという雰囲気は東電社内ではありませんでした。 p55
→ 東電の中でも、原子力部門がムラとなっていることがよくわかる。原子力ムラ体質が強化されるだけのようだ。
*原発を建設するさいに「揺れ」に耐えられるかどうかの審査は厳しく、・・・・それにたいして、津波の安全基準は非常に簡単なものです。・・・比較的簡易な審査でした。 p58-59
→ つまり、既存原発はそのレベルの審査基準と認可手続きで現存していることになる。津波に対する警鐘がならされても対応が進んでいない。リスクの大きさが推察できる。*(付記:津波についての文脈で)福島第一原発の場合「まったく考えていなかった」のです。これは「想定外」というより、「無想定」と言ってよいと思います。 p60
*「東電社員はみな安全神話を信じていたか?」と問われれば、そうだと答えるしかないのです。 p60
*コストを無視したような”要塞プラント”をつくるかといったら、つくらないと思います。・・・・一民間会社としてはコストとリスク・安全性を綱引きして、「じゃあ、このへんでおさえておきましょう」となるのです。 p64
→ 原子力関連の国の補助金がなくなれば、原発が民間事業で運営できないことを端的に言っていることになる。つまり、原発は独立事業ではない。そんな発電源はなくすべきだろう。あまりにも人類、生物に対するリスクが大きすぎる。
*私は隠蔽体質というより、簡単にいうと独占企業の奢りの体質があるのだと思います。 p65
→ 両方、あるように思えるのだが・・・・
*「事ながれ主義」があるのです。とくに原子力は、小さなことでも、比較的大きなことでも、同列に報道されることが多いのです。どんな小さなことでも、「放射線による周辺環境への影響はありません」などと必ず報道されています。ですから東電の原子力を担当する広報などは、できればあまり多くを語りたくないというのが本音ではないかと思います。 p66-67
→ これは、トラブルについてどの企業、業種の広報でも同様ではないかと感じる。
*バッシングしているのはおもにマスメディアですが、彼らがつねに監視していかなければならないことは、冷却状態など原子炉の状態です。しかし、東電の周辺情報の提供によって、そちらの方に報道がシフトしてしまうことがあるようです。 p79
→ このマスメディアの傾向、ご都合主義はがまんできない。
第3章では、東電と縁を切った著者が、現時点で原子力という電源について、自らの立場を鮮明にしている。章見出しに明確である。原発から発生する放射性廃棄物処理の最終処分場問題などの現状を踏まえ、「このままいけば原発は自滅するな」という思いだという。この思いは在職中からあったようだ。著者は「本当は恐ろしい核のゴミ問題」という認識をこの章で述べている。そして、著者は原発をフェイドアウトしていくべきだ主張している。
「子どもの年間許容量20ミリシーベルトには、私は大反対です」と述べ、「未来ある子どもを被曝から守ることが必要だと思っています」の一文でこの章を締め括っている。子どもを被曝から守る、この視点が今の行政にはあいまいなままで「事なかれ主義」に堕していないか。それが気懸かりだ。
最後の対談は、世界各地での紛争処理、武装解除に携わった経験を持ち、福島第一原発事故の後、現地に赴き活動した伊勢氏と蓮池氏が、それぞれの体験を踏まえて、原発、福島を論じている。戦争、紛争処理や拉致問題をアナロジーとして援用する視点に広がりがあり、そこからいくつかの指摘が導き出されてくる。その指摘までの展開プロセスが対談のおもしろさであろう。
指摘事項の結論のいくつかを要約させていただくと、
・危険だと言われている場所でも、線量計を持って気をつけていれば、人道援助は可能である。
・福島に残ると決意した市民が自らの保護のために線量計を持つのは現実的だ。
・福島に残る人はすべて高度な放射線で汚染されているみたいな印象を絶対作ってはならない。
・恐怖によって煽られた世論の存在は問題だ。
・被害者意識の負の部分がでないように、早く復旧・復興することが重要である。
・風評被害を制御するには教育しかない。
また、原発のフェイドアウトについての対談は、世界を見つめた視点と話題での論議となっている。「脱原発三原則」という発想まで語られていて参考になる。
ご一読ありがとうございます。
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本書の語句で、少しネット検索してみた。一覧にまとめておきたい。
蓮池 透 :ウィキペディア
SBO(ステーションブラックアウト)→原子力事故 →原子力施設の停電 :ウィキペディア
AM(アクシデントマネジメント) :電気連合会
軽水炉におけるシビアアクシデントマネージメントについて :ATOMICA
シビアアクシデント :ATOMICA
軽水型原子力発電所におけるアクシデントマネジメントの整備結果について
評価報告書 原子力安全・保安院 :経済産業省
NRC(原子力規制委員会)のHP
国際原子力事象評価尺度 :ウィキペディア
SSC → 応力腐食割れ :ウィキペディア
沸騰水型原子炉 :ウィキペディア
ABWR → 改良型沸騰水型軽水炉 :ウィキペディア
加圧水型原子炉 :ウィキペディア
高速増殖炉 :ウィキペディア
新生「もんじゅ」のHP :日本原子力研究開発機構 敦賀本部
六ヶ所再処理工場 :ウィキペディア
たねまきJ「六ヶ所村再処理工場 ・恐るべき再処理の実態」小出裕章氏(内容書き出し・参考あり)7/19 :「みんな楽しくHappyがいい」
とめよう!六ヶ所再処理工場 :「原子力資料情報室」
プルサーマル :ウィキペディア
軽水炉用MOX(プルサーマル)燃料 :ATOMICA
電源三法 :ウィキペディア
楢葉町等における区域見直し後の避難指示区域と警戒区域の概念図 :首相官邸
特定非営利活動法人ピースビルダーズ(PB) のHP
国連高等難民弁務官事務所(UNHCR) のHP
核兵器不拡散条約(NPT)の概要 :外務省
ボパール化学工場事故 :ウィキペディア
伊勢崎賢治 :ウィキペディア
忌野清志郎___サマータイム・ブルース_原発.
斉藤和義 ずっとウソだった
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今までに以下の原発事故関連書籍の読後印象を掲載しています。
読んでいただけると、うれしいです。
『電力危機』 山田興一・田中加奈子
『全国原発危険地帯マップ』 武田邦彦
『放射能汚染の現実を超えて』 小出裕章
『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』 たくきよしみつ
2011年8月~2012年7月 読書記録索引 -1 原発事故関連書籍