ジョン・ケネス・ガルブレイス著(堺屋太一監訳)「よい世の中」日本能率協会マネジメントセンター
別件で本棚を探していたら、久し振りにガルブレイス氏の本を手に取り、懐かしさのあまりパラパラとめくっておりましたら「第14章 官僚的体質」についつい引き込まれてしまいました。結局は最初から読み直す羽目になってしまいました。
ガルブレイス氏の著作との出会いは、やはりかの有名な「不確実性の時代」です。本棚を見回したら、他に「経済学の歴史」、「おもいやりの経済」、「ガルブレイスのケネディを支えた手紙」があり、それぞれ読んだ時のことを懐かしく思い出します。
必ずしもガルブレイス氏の主張に全面的に賛成するものではありませんが、含蓄に富んだ示唆を多く受けることが出来ます。例えば、同書から引用しますと「公的機関では、決定された政策の間違いに対しても、人員の増加に対しても、民間企業のように、組織内部から解決法が出てくるわけではない。代わりに、有能で見識のある幹部への信頼と、必要に応じて変化を進んで受け入れる柔軟性が、組織を変革する鍵になる。」途中略「この問題の解決は、行政や立法機関の注意深い指導者の腕に委ねられている。よい社会が効果的に機能するためには、この問題の解決がどうしても不可欠である。」
現在、官僚に対する風当たりが強いのですが、どこの国であれ、どのような組織であれ多かれ少なかれ官僚的体質は存在するし、それを打破することの困難さは周知の事実です。よい社会を実現するためには、声高にバッシングするだけでは何ら解決しないし、行政機関自体による内部改革、そして立法府の思慮深い適切な関与なしには問題が解決しないことを指摘しております。