暮らしの差し色

慢性腎臓病の夫と二人、静かな生活です

そうじゃないのよ、お母さん

2017-08-16 22:28:56 | 日記
母が臥せっていた真夏、私と弟は実家に来ていた。

母が暑いだろうと思って、そばにあったうちわで母に風を送っていた。

母は 「寒いわよ」 と言った。

そのことばで、弟が赤ちゃんだったときのことを思い出した。

私は小学2年生だった。

  


「Kちゃんが赤ちゃんのとき、うちわでこうやって(早く)扇いであげていたら、お母さんが『息ができなくなっちゃうじゃない』と言ったね。」

と、母に話すと、母は

「そおお? あんたよくちょっかい出してたわね」

と、言った。

私はちょっかい出していたんじゃないのだ。

赤ちゃんが涼しくなるように母の真似をしてうちわで風を送ったのだ。

そして、ゆったり母が扇いでいるのを見て、もうすこし風を送ってあげたほうが、赤ちゃんが気持ちいいのではないかと思った。

だから扇いだ。

でも、母は姑に育児を取られた二人の上の娘たちとは違って、ひとりで育てることができる長男の弟を溺愛していた。

だから、私がすることは、赤ちゃんにとって、悪意の行為にしか映らなかったのだ。

臥せっている母に、そんなことを話したところで始まらないと思い、母はそう思ってきたのだな、と 悲しかったが、説明はしなかった。

母はそう思ったまま、その夏に亡くなった。

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