中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

年上の部下のストレッチ目標

2018年11月21日 | コンサルティング

私:「これは誰に対してのストレッチ目標ですか?」

受講者:「我々のチームの部下全員のストレッチ目標です」

私:「ストレッチ目標は、一人ひとりの力量に応じて立てるものです。全員共通の目標であるならば、それはチーム目標になるのではないでしょうか?」

受講者:「私の部下は全員年上であり、経験豊富な人たちです。一通りのことはすべてできますので、ストレッチ目標と言われても特にはないですね。ですから、全員同じ目標にしました」

これは先日担当させていただいたある企業の、部下育成研修での一コマです。

部下に成長してもらうために、ストレッチ目標(少し努力をすれば届く目標)を設定する練習をしてもらったのですが、ストレッチ目標を立てるためには、その前提として各々の現在の能力を把握することが必要です。

そのうえで、少し頑張れば達成できる目標を立てることによって、成長してもらうことができるのです。

成長を促そうとする場合、ストレッチをしなくても達成できてしまうような目標では簡単すぎてしまうので、目標としての意味がありません。反対に、あまりにも挑戦的な目標を立ててしまうと、頑張っても達成することは困難ですから、やる気をそいでしまうことになりかねません。

このように、ストレッチ目標を立てる場合には一人ひとりの能力を見極めるとともに、今後のキャリアも視野に入れながら最終的に上司と部下で話し合い、適切な目標を立てることが求められるのです。

先日、NHKのテレビ番組に劇作家であり脚本家、演出家、映画監督など様々な分野で活躍をされている三谷幸喜さんが出ているのを観ました。そこでは、三谷さんが演出をする際、役のイメージを膨らませるために役者に様々な伝え方をしているという話をされていました。

たとえば、タレントの青木さやかさんには「あの映画のあの看護師の役を参考にすると良いですよ」と伝えたそうですが、このような言い方はどの俳優に対しても使っているわけではないとのことでした。

三谷さんがおっしゃるには、「この人(青木さやかさんのこと)にはどういっても伝わらないと思ったから、わかりやすくこの映像を観てくれ」と言ったそうです。

つまり、三谷さんは「伝える相手によっていろいろな言い方をする、音で伝えるときもあるし、伝える相手によってそれぞれに全然違う言い方をしている」とのことでした。

そして、このように伝え方を工夫するのは「演出家の仕事の一つ」である。「伝える相手はそれぞれ違う。青木さやかさんに伝えたようにあの作品のあの人みたいにやってみて、というのは最終手段」とのことでした。

このように、三谷さんは演出家(監督)として、伝えるべき相手をしっかり観察したうえで、個々に理解が深まるような言い方を工夫しているわけです。

この点を踏まえて冒頭の話に戻ると、部下のストレッチ目標を立てる際にも、まずは相手をしっかりと観察しなければなりません。

もしそれをしなければ、ストレッチどころか現況をつかむことすらできないのです。

たとえ部下の全員が長いキャリアの持ち主だったとしても、保有しているスキルや知識の量や質が同じであることはまずないわけです。それを一括りにしてしまうと、それぞれの育成につながる目標を立てることはできないはずです。

部下の年齢が上であったとしても、経験豊富な人であったとしても、成長の余地が全くないということはないわけです。上司には部下に継続的にワンランク上を目指してもらうために、しっかりと観察したうえでの適切なストレッチ目標こそ必要であることを確認していただく必要があるのです。

人材育成のホームページ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。