「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「〇〇業務に従事したご経験をお持ちの方」
求人誌をはじめとする求人欄の応募資格には、従前からこのような表記をよく見かけます。経験者を求める理由には様々なものがあるのだと思いますが、教育やトレーニングなど育成にかかる時間やコストを削減することができ、さらには即戦力として短期間で成果を出してくれるのではないかという期待があるのだと考えられます。
この傾向はビジネス界のみならず、スポーツの世界でも同様のことが言えるようです。先日(4月13日)の朝日新聞に、最近はサッカーJリーグの監督の平均年齢が高くなっており、課題が浮き彫りになっているとの記事が出ていました。
具体的には、サッカーJ1の監督の平均年齢は1993年の開幕時は46.2歳、その後は右肩上がりで現在は50.91歳なっており、欧州プレミアリーグと比べても高いとのことです。因みに、イングランドプレミアリーグの監督の平均は48.05歳ということです。
この記事によると、日本の監督の平均年齢が高い理由は「J1で過去、どんな結果を出したか」とこれまでの実績を優先した結果であり、その背景には失敗したときのリスクを避けたいという思惑があるとのことです。
私自身も、これまで研修のご依頼をいただいた際に、その研修テーマに関する経験の有無や、どれくらい(何回、何年)の実績があるかなどについて尋ねられることがあります。依頼者からすれば、経験豊富な方が失敗するリスクは少ないことから、望ましいと考えるのが一般的だとは思います。
同時に、こういったご質問を受けるたびに私が思うのは、どんなに経験豊かな人であっても必ず1回目の経験があり、その後の経験を重ねて今があるということなのではないかということです。
つまり、失敗を恐れるあまり、また育成にかかるコストを避けるために経験者だけを求め続けていると、そのときは良い結果が出せたとしても、それによって若手の育成がどんどん遅れてしまいます。その結果、後進が育たないという長いスパンで見るとマイナスの結果を招いてしまっていることになるということです。
さらに言えば、「経験がある=優れている」とは一概には言えない場面もあると思っています。たとえば、経験があるからこそ古い方法に固執してしまい柔軟性に欠けることになってしまったり、新しいことを学ぼうとする姿勢がない結果、変化に適切に対応できなかったりするということもあります。
そのように考えると、経験がないからこそ新しい視点や発想を持つことができ、そのほうが効果的な場面も大いにありえるとも考えられます。
冒頭の話に戻ると、サッカーのJリーグでは今後は監督の参入障壁を低くして、若手や多様な人材の登用を積極的に促していくこととしているそうです。変化の激しい、これまで経験したことがないことが起こりえる現在や今後の状況の中では、どのような世界であっても「その仕事をどれくらいやってきたか?」というこれまでの経験に重きを置くのではなく、「未経験ではあっても新しい発想が持てそうか、それによって成果を出せそうか?」といった将来への「伸びしろ」を重視していく必要があるのではないでしょうか。そのためには積極的に育成していく、そのためのコストは惜しまないという姿勢をもつことが、こういった状況であるからこそ必要なのではないかと強く考えています。