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「ゼロ災で行こう、ヨシ!」

2016年05月25日 | コンサルティング

 椅子から立ち上がるたびに「椅子ヨシ!」の掛け声、続いてチーム全員で中央の札を指して、「ゼロ災で行こう、ヨシ!」という指さし喚呼を一日に何度も行う。

これは、先日私が初めて「KYTトレーニング」に参加したときの様子です。

 ご存知の方も多いと思いますが、「KYT」とは危険予知訓練のことで、ローマ字表記 Kiken Yochi Training の頭文字をとって「KYT」と呼ばれています。日本では1973年に、住友金属工業の労務部長がベルギーのソルベイ社を視察して、そこで交通安全のチェックシートを使うことによって、危険につながる問題点を認識することで、各々が安全行動に努めるようになるという取り組みを参考にしたそうです。その後、社内にプロジェクトチームを結成したことが発端となり、KYTトレーニングが誕生したと言われています。

 このKYTトレーニング、日本では工事現場や製造業、鉄道会社などを中心に、作業に従事する人が事故や災害にあうことを未然に防ぐ目的で、その作業に潜む危険を互いに予想し指摘しあう訓練として行われています。

 たとえば、身近なところでは電車の運転手や車掌が「○○ ヨシ!」と指さし呼称をして、危険予知をしている場面を目にすることはよくあると思います。私自身は今回初めてKYTトレーニングを受講したのですが、これは製造現場のみならず、さまざまな仕事や日常生活でいろいろな場面でも使える大切な考え方だと思いました。

 このKYTトレーニングのやり方ですが、まず職場や作業現場等の写真やイラスト図等を作業チームのメンバー全員で見て、

1.どこに、どんな危険がひそんでいるか(現状把握)、

2.問題点の原因を整理する(本質追究)、

3.改善策、解決策を考える(対策樹立)、

4.具体的な行動計画を立てる(目標設定)

 といった流れで行うのですが、実はこれ、私が問題発見、課題解決の研修で行っている手法と同様なのです。

 KYTトレーニングでは、この流れを簡略化して問題発見から解決策の立案までを10分位で行いますので、実に効率的です。メンバーの話し合いの時間はタイマーで計測し、できる限り短時間で行うことを目指していますので、参加したメンバー全員が集中して良いアイディアを出そうと、全員の参画意識も生まれます。

さらに、そこで作ったルールは即、その場で全員が声に出して確認するため、情報が全員で共有されますし、翌日以降も指差喚呼の形で確認を続けるために、徐々に習慣化されていくようです。

 私が担当する研修の際、「仕事が忙しくて職場の問題解決ができない」と言う受講者が時々いらっしゃるのですが、問題を解決することこそが、仕事の忙しさを解決することだと言えます。解決のために別途時間をとる必要もないような問題であるならばいつまで放っておかずに、上記のような要領でその場で即解決をしてしまえばよいのにと改めて思いました。

 職場におけるリスク管理の重要性が叫ばれて久しいですが、KYTトレーニングは製造現場のみならず、他の部署であっても参考になるところが沢山ありますので、ぜひ試していただきたいと思います。

 ただ、指差喚呼の習慣のない職場では、いきなり左手を腰に、右手は親指を外にして縦に握って人差し指で対象物を指して、大きな声で「○○ヨシ!」「ゼロ災で行こう ヨシ!」と言うのは気恥ずかしく感じてしまい、慣れるまでに少々時間を要するところが唯一の難点でしょうか。

 私もKYTトレーニングでは恥ずかしさもあって、初めは大きな声が出せませんでしたが、トレーニングが終了する頃にはどういうわけか、元気いっぱいに「ゼロ災で行こう ヨシ!」とやっている自分がいました。これは一体感がなせる技だったと思います。

 (人材育成社)