中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,118話 ホワイトボードはディスカッションの強力な味方である

2022年06月01日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「可能であれば、グループに1台ずつホワイトボードの準備をお願いします」

これは、弊社が対面での研修を担当させていただく際に、事前に研修のご担当者にご連絡することの一つです。研修では、テーマに関係なく様々なグループ演習に取り組んでいただいていますが、その際可能なかぎり準備していただきたい用具等の一つにホワイドボードがあります。ホワイトボードがあれば、短時間であっても話し合いが円滑に進んだり、ディスカッションの精度が高くなったりと、生産性の高い演習にすることができるからです。

それでは、なぜホワイトボードがあると、演習の生産性を高くすることができるのでしょうか?

その理由としては、まず話し合いのテーマをホワイトボードに記入することで主題が明確になり、ディスカッションの途中で横道に逸れてしまうようなことを防げるからです。 また、記入の際は箇条書きにするために、論点を瞬時に理解できるということもあります。加えて、私がホワイトボードの一番のメリットと考えているのが、ディスカッションが活発になり盛り上がるということです。具体的には、ディスカッションの開始時には書記を担当した人のみが起立してホワイトボードに板書をしているのですが、多くの場合はその後徐々に全員が立ちあがってワイガヤ(ワイワイガヤガヤ)の活発なディスカッションになるのです。

もう一つ、ホワイトボードと同じような役割のものに模造紙があります。模造紙も話し合いをする際にはとても有効なツールの一つではありますが、私はホワイトボードの方に軍配があがると考えています。理由は数点ありますが、まず模造紙よりも記入が簡単だということです。模造紙は、書き慣れていないと記入する際に「間違えて書いてしまったらどうしよう」という少々の緊張感があります。しかし、ホワイトボードであればすぐに消して書き直すことができるので、記入の際の敷居がより低く感じられます。

次に、ホワイトボードの大きさにもよりますが、時間が足りない場合には複数名が同時に記入することもできるのです。さらに、模造紙を記入する際は多くの場合は机の上に広げるため、目線が下がり姿勢が悪くなってしまうことが活発な進行に多少影響があるように感じます。

このように考えると、話し合いをする際に、ホワイトボードを使うことで「ゴール(目的)に向けて皆が迷わずに、効率的にディスカッションを進めることができる」ことから、もはや「話し合いの際の地図」と言ってもいいのではないでしょうか。

以上のことから、私は可能な限りグループごとにホワイトボードを準備していただきたいと考えていますが、そうは言ってもスペースの関係や受講者人数が多い研修だとグループ数も多くなり、一方で用意できるホワイトボードの数には限りがあるというのも、また現実です。実際、先日弊社が担当させていただいた研修では受講者人数が100名以上いたため、17グループにもなったことから、全てにホワイトボードを準備いただくことはかないませんでした。

現在もまだコロナ禍が続いている中、ホワイトボードの前に集まってディスカッションをしたら、感染のリスクがあるのではないかとの危惧もあるかもしれません。しかし研修の成果を最大限あげるためにも、感染防止をしっかり行ったうえでディスカッション時にホワイトボードを使うと、生産性の高い話し合いができるという効果を改めて認識しているところです。

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第1,116話 成功体験をどのように積ませるのか

2022年05月18日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下(25歳)が、ちょっとしたことで落ち込むんです。管理職の私からすると、落ち込む必要はないと思うのですが。十分能力があるんだし、こちらも無理難題を要求しているつもりはないんですけれど。彼は理想が高すぎるのかな?理想が高いのは決して悪いことではないけれど、どうしたものでしょうか?」

これは、先日弊社が管理職研修を担当させていただいた際に、一人の受講者から相談された言葉です。詳しくお話をお聴きしたところ、直属の部下は、自分の能力を低くとらえがちで、自信をなかなか持てない。部下が落ち込んでしまっていることがわかっても、大きな失敗をしたわけでもないので、上司として何をどのようにフォローをすればよいものか・・・「頑張れ!自信を持て」と言葉でと叱咤激励しても効果があるとは思えないし、考えあぐねているとのことでした。

お話をお聴きして感じたのは、この部下は一所懸命に仕事に取り組む真面目な人柄のようですが、一方で自己肯定感がとても低いのではないかということです。そのため、彼が自分にもっと自信を持つためには、成功体験を積んでもらうことが大切なのではとのアドバイスをさせていただき、話を終えたのでした。

この成功体験に関して、先日のNHKの「チコちゃんに叱られる」で、「小学校の授業に逆上がりが採用されたのはなぜか」を取り上げていました。

そもそも鉄棒などの器械体操は1811年にドイツで生まれたもので、ドイツの教育者だったフリードリヒ・ルートヴィヒ・ヤーンがその生みの親だそうです。逆上がりは筋力をつけるということだけでなく、日々練習を続けることによりできるようになることが多いため、すぐには成功できない逆上がりという課題に対して成功体験を積ませることが目的だったのです。「どうすればよいのか?」と自ら考え、最終的に乗り越えることで力が養われる、頑張ればできるようになる、努力は報われるということを体験を持って感じてもらうということです。

これは、まさにエドワード・L・デシのモチベーション理論における「内発的動機づけ」に該当するのではないかと思うのです。

デシは、内発的動機づけをする理由の一つに有能感があるとしています。有能感とは「能力があると感じる」ことで、達成可能な目標を与え、それを達成したことによる満足感が有能感を生むのです。当然目標が高すぎると達成することができず、やる気も出てきません。逆に目標が低すぎると、達成は当然のこととなって有能感もあまり得られません。

この点から考えると、管理職が一人一人の部下に対して、頑張れば達成可能な目標(ストレッチ目標)を適切に与えることができれば、部下は努力することで成功体験を得ることができ、成長することができるというわけです。

しかし、このストレッチ目標は個々人の能力や状況によって異なるわけで、各々に合った目標を見つけることはそう簡単なことではありません。一人一人の能力をきちんと把握するためには、管理職として日常的に部下の仕事ぶりや言動を観察し続けることが必要だということです。

管理職の皆さんには、慌てず、焦らず、じっくりと部下を観察し、その上で適切なストレッチ目標を与え成功体験を積ませる、この繰り返しで少しずつ部下を育てていただきたいと思います。

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第1,115話 文章は長すぎたり細かすぎたりしては相手に伝わらない

2022年05月11日 | 研修

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「文章を書くのが苦手です」

これは、弊社が研修を担当させていただく際に受講者からかなりの頻度で聞く言葉です。研修中に行っていただく課題の中では、話し合いだけでなく文章で表現していただくこともあります。たとえば、議事録作成の練習をしていただいたり、ときには課題図書を読んでいただき、実務でどのように活用するかなどについて書いていただいたりすることもあります。そうしたときに、研修の内容やテーマとは別に、冒頭の「文章を書くのが苦手です」という感想をいただくことが多いのです。

では、なぜ文章を書くことが苦手だと感じる人がたくさんいるのでしょうか?理由は様々だとは思いますが、一つには文章を書くことに関して私たちがしっかり習ったり練習したりする機会が、実は少なかったからなのではないかと私は考えています。 

「読み書き算盤」という言葉がありますが、これは文字どおり文字や文章を読む、文章を書く、計算をすることです。これらは初等教育で獲得する基礎的な能力・学力ですが、読むや計算についてはは学ぶ機会は多いものの、それらに比べると書くことについて習ったり練習をしたりする機会(時間)は案外少なかったように記憶しています。こうしたこともあって、多くの人にとっては「書く」経験がさほど多くなく、その結果として文書の作成に苦手意識を持つことになってしまったのではないかと推測しています。

それでは今後、ビジネスパーソンとして最低限必要となる文章を的確に作成するためにはどうすればよいのでしょうか。こればかりは特効薬といった類のものではなく、地道に経験を積むことが近道なのだとは思いますが、苦手意識を持つ人が自ら積極的に経験をつむとするのは簡単ではないとは思います。

この「書く」に関して、先日NHKで放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の中で興味深いシーンがありました。

源頼朝に対して、源義仲を追い詰めている現況に関しての知らせが京都より続々と届いている場面で、以下の4名からの報告書に対して次のとおり頼朝が感想を述べていました。

土肥実平(目付け役):「あまり書きなれていないようで、とても読めたものではない」     

和田義盛(侍所別当):「絵入りでそれなりの工夫は見られるが、これも読めたものではない」

小四郎(北条義時):「中身は確か。しかし、内容が細かすぎて全く頭に入ってこない」

梶原景時:「戦の進み方や御家人の主な働きなど肝要なことのみ手短に記され、実に読みやすく見事な出来栄え」

あくまでドラマの中ですが、頼朝は梶原景時の報告書を評価していたわけです。私たちビジネスパーソンに求められる重要な役割の一つに報告書の作成がありますが、その際には頼朝の感想のように、報告書を書く時には長すぎたり細かすぎたりしては相手に伝わらないということをふまえ、短めの文章でポイントを押さえて書くことが大切だということです。これは鎌倉時代であっても現在でも変わらない、文章作成時のポイントです。そして、報告書に慣れてきたら徐々に自身の考えやメッセージなどを盛り込んだ文章を書いてみるという流れがおすすめです。まずは、短い文章からでよいので、「書く」経験を積むことをお勧めします。

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第1,109話 中小企業が大企業に「勝てる」ものとは?

2022年03月27日 | 研修

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唐突ですが、中小企業には大企業に「勝てる」ものと「引き分け」にできるものの2つがあることをご存じでしょうか。まず「勝てる」ものですが、それは経営者と社員とのコミュニケーションの深さです。会社に限らずすべての組織はチームワークで成り立っています。メンバー間の意思疎通が滞れば、チームは機能しなくなります。そして組織の規模が大きくなるにつれ、コミュニケーションは難しくなっていきます。

1対1のコミュニケーションを糸電話に例えてみます。メンバーが2人だけなら1本の糸(“パス”と言います)で済みます。3人ならパス数は3、4人なら6・・と増えていきます。n人のときのパス数は(n(n−1))/2で計算できます。人数が増加するにつれ指数的にパスが増え、コミュニケーションが上手く行かなくなっていきます。

通常はそうした事態を避けるために、チームを分割することでコミュニケーションを行いやすくするという手段を取ります。はじめはそれで上手く行きますが、やがて時間が経つにつれチームの「タコつぼ化」がはじまります。「タコつぼ化」とは小さなチーム内でのコミュニケーションが行き過ぎて、他のチームと情報共有ができなくなる(“しなくなる”の方が正しいかもしれません)状態を指します。

企業で起こる「不祥事」の背景には、こうした「タコつぼ化」した組織構造があります。大きな組織では、それを避けるためITをはじめとした様々な技術や手法を使いますが、結局は人間の心理が生み出すものですからそう簡単には解決できません。

一方、社員が100人を下回る企業ならば経営者が全社員と良好なコミュニケーションを行うことが可能です。たとえば、社長が全社員の名前を憶えるだけで社内のコミュニケーションはかなり深くなります。これは大企業には決して真似できないことです。

さて、もうひとつの「引き分け」にできるものは「時間」です。人材や資金、設備や技術を多く持っている大企業でも社員1人の1人の時間だけは「多く」持つことができません。大企業の1時間も中小企業の1時間も同じなのです。会社の規模が小さくても、全社員、1人1人が時間を上手く使いこなせば、少なくとも時間という資源の使い方では大企業と「引き分け」に持ち込むことができます。

ところが、残念ながら時間の使い方に関しては中小企業よりも大企業の経営者、社員の方が優れているように思います。遅刻をしない、納期を守る、仕事中は徹底して集中するといった「基本動作」においては、大企業の従業員の方が厳しく躾(しつけ)られているようです。せっかく同じ資源を与えられていながら非常にもったいない気がします。

経営者の皆さんにお願いします。時間という資源を無駄にしないために、ぜひ社員教育をしっかりと行ってください。社員全員に「トヨタもうちの会社も時間は対等だ」ということを徹底して分からせてください。そうすれば大企業と十分に「引き分ける」ことができます。

中小企業の経営者が重視しなければならないことは、いついかなる時でも「コミュニケーション」と「時間」の2つです。4月、新しい仲間がやって来ます。あなたの会社を「勝てる会社」に変える絶好のチャンスです。

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第1,107話 就きたくない職種ナンバー1

2022年03月20日 | 研修

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「あなたが就きたくないと思う職種を教えてください」と聞いたところ、最も割合が高かったのは「営業」の43%で、「営業」職は男女とも非常に敬遠されていることが明確となったそうです※。

この結果について「意外だ」と思う人は少ないでしょう。営業の仕事といえば「ノルマに追われ、嫌な客に頭を下げ、その挙句断られ、上司から怒られる」というイメージだと思います。

では、世の中から営業の仕事が一切なくなったらどうなるでしょう。必要な商品やサービスに関する情報はすべてネットから手に入るとします。そして、欲しいものがあればAmazonで買い物をするように何でも手に入り、すぐに届けてくれるならば別に営業など必要なさそうです。「わざわざ売り込みに来てくれなくても結構!」つまり、営業が無くなっても全く困らないと言いたくなります。

たとえば「スマホが欲しい」という人のニーズは千差万別です。先端の機能を使いたい人もいれば仕事で使うだけなので並みの機能で良いという人もいます。また、お年寄りは古いタイプの携帯電話が使えなくなったので買い替えたいだけ、ということもあるでしょう。そうした細かいニーズに応えることができるウェブサイトもありますし、AIを使った電話応対もあります。

しかし、現状はそう上手く行っているとは思えません。

スマホを買おうと思ってウェブサイトにアクセスしても、よく分からないので電話をしてみました。録音された音声ガイダンスに従って何度か番号を押したり、#を押したりしました。ようやく繋がるかと思ったら「ただいま大変込み合っています。しばらくしてからおかけ直しください」という音声が聞こえてきました。

こうした経験で気分を害したという方も多いでしょう。私たち「生身の人間」には感情があります。機械には(今のところ)感情を読み取って対応する機能はありません。

一方、優秀な営業担当者は「生身の人間」が発する複雑な感情を感覚的にキャッチして的確な対応をとります。そして、様々な視点から情報を引き出して真のニーズを見つけ出します。そんな高度なスキルを持った営業担当者は、今後ますます必要とされることでしょう。

しかし、それができる優秀な人材はそう簡単には現れません。非効率で面倒な手法ですが、結局は「ノルマに追われ、その挙句断られ、上司から怒られる」という辛い営業を経て生き残った少数の人たちからそういう人材が現れるのだと思います。

AIはまだまだ人間の営業力に追いついていません。営業は「就きたくない職種ナンバー1」かもしれませんが、生き残ることができればAIをしのぐ凄いスキルを手に入れることができます。

来月、もしあなたの会社の新入社員が営業に配属されて不満そうにしていたら「AIに勝てる職種だよ!」と言ってあげてください。

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※ 「ジョブ図鑑」(株式会社Agooraが運営)の調査による https://job-zukan.jp/

 


第1,105話 「見えないスキル」の市場価値について考える

2022年03月13日 | 研修

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最近は副業を認める企業が増えてきました。マイナビの調査※によると、副業・兼業を認めている企業は全体で49.6%だそうです。副業の多くは「スキルマーケット」を利用する場合が多いようです。スキルマーケットとはネット上で個人の技術や知識を売買する仕組みです。イラストやホームページの作成、外国語の翻訳、様々なアドバイスなど、個人が持つ得意技をマーケット上に公開して、それらを必要とする顧客が検索して比較し、購入します。フリマの一種のようなものでしょうか。

さて、副業は関係ないという方にとっては、そんな話はどうでも良いことだと思われたかもしれません。しかし、個人の知識やスキルが「売り買いできる」つまり金額で評価されるものだということは十分に認識しておくべきです。

現在、雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型に変わりつつあります。簡単に言えば、終身雇用のようなチームワーク重視の組織から米国のようなプロフェッショナル集団の組織へと変化しています。明日からいきなりジョブ型に変わるということはないでしょうが、徐々に個人のスキルが企業の中でクローズアップされてくることは間違いありません。

そのうち社員1人ひとりのスキルを市場価格で評価する仕組みが現れるでしょう。そのときの「スキル」とは資格や技能に限らず、論理的な思考力やコミュニケーション能力、部下育成力といった客観的に判断することが難しいものも含まれると思います。

たとえば、エンジニアの技術的なスキルは比較的はっきりと知ることができますが、人を育てる技術を測ることは大変難しいのです。一方、企業にとってはコミュニケーション能力に欠ける優秀なエンジニアを採用するよりも、若手の技術者を育てることができるマネージャーを採用した方が中長期的にはより大きな利益が得られると考えるかもしれません。

そうした企業のニーズが、部下育成力のような「見えないスキル」を可視化していくことは間違いありません。その方法が「テスト」なのか、あるいはAIを使ったまた別の手法なのかはっきりとは言えませんが、社員の「見えないスキル」が市場価格で判定される日も遠くないでしょう。

「その日」が来る前に、若手だけではなく、すべての社員が自己啓発や研修を通じて「見えないスキル」を付けておく必要があります。

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※ マイナビ「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」:2020年1~7月に中途採用業務を行った企業、1,910社の人事担当者を対象


第1,103話 会社の寿命は24年?

2022年03月06日 | 研修

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日経ビジネス1983年9月19日号の特集「会社の寿命は30年」は、当時のビジネスパーソンの大きな話題となりました。その内容は、主に大企業の過去のデータを集約してみると企業が繁栄できる期間は30年というものです。会社の寿命を「繁栄期」と定義していますので、30年で倒産してしまうという意味ではありません。

では中小企業はどうなのでしょう。大企業とは違ってズバリ「寿命」が示されています。東京商工リサーチによれば、2021年の全国企業倒産は6,030件(新型コロナが原因の倒産は1,668件)で、会社の平均寿命は23.3年でした。そのうち負債1億円未満の「小規模倒産」は4,503件(構成比74.6%)ですから「中小企業の寿命は24年くらい」と言えそうです。

倒産理由ですが、1位が販売不振71%、2位が既往のしわ寄せ 10%、以下連鎖倒産、過少資本、放漫経営と5%程度の要因が続きます

さて、「既往のしわ寄せ」とは聞きなれない言葉ですが、経営者が会社の状態が悪化し始めても「具体的な手を打たず放置すること、それによって経営が危うくなってしまうこと」を言います。たとえば、売上が徐々に低下してきたときに「そのうち景気が回復して売上も戻るだろう」と、何の手も打たないでいると、やがて致命的な事態に至り倒産してしまうことです。

「既往のしわ寄せ」の原因は、設備の老朽化、社員の高齢化、デジタル化への対応の遅れなどが挙げられています。こうしたまずい状況に対して経営者が何の手も打たないことが「しわ寄せ」となって会社を倒産させるのです。

たとえば、昨今話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、最新のシステムを導入しただけでは「手を打った」とはいえません。なぜならシステムを稼働させ、有効活用するのは人=社員だからです。社員に知識とスキルを与えることではじめてシステムが動き出すのです。

それはDXに限ったことではありません。販売を拡大する手法も、製造を効率化するノウハウも、品質を維持するための知識も・・・すべては人(社員)に属するスキルであり知識です。それは社員を教育する以外に身に付ける術はありません。

「企業は人なり」と言います。特に中小企業は「人」が全てだと言えます。経営者が社員に投資しなければ、確実に将来大きな「しわ寄せ」となって会社を襲うことになります。

会社の寿命を24年で終わらせないために、今こそ社員に対する教育投資を実行するときです。

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第1,102話 オンラインセミナーの参加条件とは

2022年03月02日 | 研修

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コロナ禍になって以降、オンラインで行われる研修やセミナーが多くなりました。対面型とオンラインのそれぞれにメリットとデメリットがありますが、既に言い尽くされた感もありますので、ここではその点にはふれません。しかしながら、オンラインに関しては最近改めて顕在化してきた問題点が2点あると考えていますので、ここで紹介したいと思います。

1点目は、オンラインで行われるセミナー(公開型)の時に「ビデオをオフにして、画面に顔を出さない」こと、さらに2点目として「セミナーで、講師からブレイクアウトセッション(数名のグループに分かれて話し合いをする)に参加するよう促されても、それに従わない人がいる」ことです。

1点目の顔を出さないことについては、既に本ブログでも言及している(第1,028話 オンライン研修で顔を出さない人の心理とは?)ところですが、最近はオンライン研修に慣れたからなのか、以前よりも顔を出さない人が増えていると感じます。

先日、私自身が受講者としてあるオンラインセミナーに参加したときのことですが、顔を出しているのは1割くらいであり、さらに講師から「これから4~5名のグループに分かれて話し合いをしてください」との指示があったのですが、オンライン上のグループ討議に参加したのは私を含めて2名のみでした。他の人が参加しなかった理由はわかりませんが、4~5名での話し合いをイメージしていた私としては、2名しか参加しなかったことも少々驚きでした。

そこで、講師として研修やセミナーを担当する際に、顔を出さない人に対してどのように感じているのかを同業者に聞いてみたところ、一部に「全く気にならない、DJになったと思えばよいのでは」と答えた人もいましたが、大半は「顔を出さない、グループ討議に参加しない人がいるとセミナーの進行上、支障があると感じている」ようでした。

それでは、今後こうした状況を解決するためにはどのようにすればよいのでしょうか。通常、公開型のセミナーは主催者に強制力がありませんので、顔を出すか出さないか、グループ討議に参加するかどうかは受講者の自己判断に委ねられる部分が多いのです。そうした状態だからこそ、今後、主催者側は研修やセミナーの募集をする際に顔を出すこと、グループ討議にも参加することなどを参加条件として事前にアナウンスすることが大切だと考えています。

実際、2週間ほど前に私が担当させていただいた公開型のオンラインセミナーでは、冒頭に主催者が「この研修はビデオはオンにし、途中にグループ討議もあります。」ときちんとアナウンスをされましたので、参加者全員が顔を出し、さらに積極的に討議に参加し、各グループに私が入室した際も熱心に意見交換をされていました。

また、先週担当させていただいたオンラインセミナーでは、開始時には半分くらいの人しかビデオがオンになっていませんでしたが、冒頭で主催者が顔を出す意味を丁寧に説明してくださったところ、物理的な理由で顔を出せない一人を除き全員が顔を出してくれました。その結果、演習も双方向で進めることができ、受講された方にとっても講師の話を一方的に聞くより理解が深まったのではないかと考えています。

受講者が研修やセミナーに求めていることは様々だと思います。講師からテーマに基づく話を一方向で聴きたいのか、あるいは特定のテーマについて講師から情報を得るだけでなく、演習やディスカッションを通して理解を深め、知識やスキルを獲得することを目的として参加しているのか、人によって異なるかとは思います。しかし、だからこそ対面型とオンラインと選択することができる今はある意味でチャンスであり、積極的に活かすべき機会ではないかと考えています。    

オンラインによるセミナーのメリットはたくさんありますので、今後ますます拡大していくと思います。受講者にとって有用なものとするためにも、主催者側は参加条件などの事前のアナウンスをしっかり行い、受講者はそれを納得したうえで積極的に受講していただきたいと考えています。

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第1,101話 「知っていることばかり」はなぜ残念か

2022年02月27日 | 研修

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研修終了後のアンケートで、たまにですが「講師の話は全部知っていることだった。もっと新しいことが聞きたかった」というコメントをいただくことがあります。30名以上が参加する公開セミナーの場合、それはほとんど毎回と言って良いでしょう。こうしたコメントをいただくと、私は講師として大変残念な気持ちになります。

この話を知り合いの研修講師にしたところ「たとえ知っていることでも学ぶ姿勢があれば自分のためになるはずです。それをしない人がいても残念に思うことはありませんよ」と少し憤慨した様子で言いました。

たしかにその通りです。ただし、私が残念に思っている理由は受講者を「救ってあげられなかった」からです。「知ってるよ、そんなこと!」と書く受講者のほとんどは(知っているけど)実行していません。「講師の言っていることは全部職場で実行しているので、違う話を聞きたかった」ではなく、ただ「知っている」と言いたかっただけなのです。

講師が伝えたことを実践すれば、仕事は多少なりと改善します。実践しなければそれはありません。つまり、知っていようが知っていまいが、仕事には何の影響も与えないのです。

実際、「知っている」のに実践できないとすれば、手の打ちようがありません。たとえば、机の上に置いてあるコップが倒れて水がこぼれてしまったとします。すぐに雑巾で拭き取らないと書類やキーボードが濡れてしまいます。そのとき「雑巾で拭けばいいんでしょ。知ってるよ!」と言って傍観していたらどうなるでしょう。

無知な人と知識のある人の境界には実践というラインが引かれています。そのラインを超えない限り知識は役に立ちません。それは、仕事でも全く同じことなのです。

「知っているけどやらない」・・・私はこういう考え方をする人のお力にはなれません。だから、残念な気持ちになるのです。いや、むしろ可哀そうに思ってしまいます。

ひとつだけ方法があるとすれば、「実践したいけどできていない。どうすれば良いのか?」と講師に質問してください。その時は必ず「実践できない理由」を述べてください。とはいえ、私が今までに経験した範囲ですが残念ながら「できない理由」のほとんどは「したくない理由」でした。その場合は大変申し訳ないのですが、なす術がありません。

そして「もっと新しいことが聞きたかった」という方には、関連する書籍をご紹介します。さらに知識を増やすことができるでしょう。

知識が増えることで満足されるならば受講した意味があったと言えるかもしれません。

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第1,099話 「できる部下」に育てる方法

2022年02月20日 | 研修

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社長は「できる役員」が、役員は「できる管理職」が、管理職は「できる部下」が欲しいというのが何よりも望んでいることでしょう。かなり前のことですが、ある会社で係長研修の打合せをしているときに、人事部長から「うちの社員はあまりデキが良くないから、なんとかできる社員にしてほしい」と言われたことがあります。私は「”できる”の定義は何ですか?」と聞きたかったのですが、できませんでした。同じ質問をされたときの答えを明確に持っていなかったからです。

その後「できる社員」にはどんな特徴があるのかを調べてみました。Webサイトはもちろん、書籍やインタビューなどを通じて「できる」を追求しました。その結果、できる社員は概ね次のような特徴を持っていることがわかりました。

1.率先して動く
2.レスポンスが早い 
3.メンタルが安定している
4.論理的である
5.納期意識がある
6.集中力がある
7.向上心がある
8.忍耐力がある

これらの特徴はどれも納得できるものでした。何年か後、前述の人事部長にこのキーワードを見てもらいました。すると「こんな社員・・・いや人間なんていないよ」と笑われてしまいました。彼が言う「できる社員」とは「成果を上げる社員」とのことでした。

要は、いかにレスポンスが早かろうが、論理的であろうが、向上心があろうが「関係ない」ということです。営業ならたくさん売る、開発なら新製品を作る、経理なら正確な数字をまとめるのが「できる社員」の定義です。

一見、納得できそうです。しかし、お気付きのことと思いますがこれは「原因と結果」を逆にしています。私は上記の8つの特徴は「生まれつき」に依るものが大きいと思っています。とはいえ、いずれも最初からはっきりとしていることはなく「どちらかと言えばそういう傾向がある」といった感じではないでしょうか。

できる社員を育てようとするならば、部下の「良い特徴」を見つけて伸ばすことです。そのためには部下を正しく観察することです。観察と言うと小学校の理科のような感じがするかもしれません。しかし「観る」とは視覚に限らず広く、感覚を働かして、探りとらえること、「察する」とは(人の心中や物事の事情を)おしはかる、おもいやる、同情することです。観察することは大変手間のかかる作業です。

「できる社員」を育てたいなら手間を惜しんではいけません。さっそく明日から部下を観察してみてください。

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