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何も考えずに、でも何かを求めて、鉄道の旅を続けています。今夜もmoonligh-expressが発車の時間を迎えます。

トキ(朱鷺)の郷を潤す「新穂ダム」の存在

2022年03月13日 | 土木構造物・土木遺産


久々にダムの話。昨年の11月に、佐渡のダム最大級の「小倉ダム」を紹介したことがあった。その時に、下流の小さいアースダム「小倉川ダム」が「佐渡で二番目に古いダム」であることも紹介した。
一番古いダムを訪ねることができたので、今回紹介する。それが「新穂ダム」だ。こちらもアースダムで、農業用水を確保するために昭和18年着工、33年竣工というから、16年の歳月をかけて県営かんがい排水事業によって設置された。
佐渡では初めての本格的なダムで、堤高、堤頂長、堤体積、湛水面積、貯水量などでも先に紹介した小倉ダムを上回るもの。こちらには、佐渡のダムキングの称号を与えよう。



佐渡は広いとはいえ、本土に比べて流域が狭い上、降水量も少ない。雪は降るものの、ごく少量。同じ新潟県内にあって羨ましい環境にあるといっても、農業という観点からすると夏季において、慢性的な水不足に見舞われる地でもある。
新穂ダムは、佐渡の最大河川でもある「国府川」の上流・本川に設置された農業用のダムで、干ばつ対応のために、幹線用水路とともに整備され、新しい農業スタイルを佐渡にもたらしたといってもいい構造物である。
第二次大戦の中、完成まで長い時間を費やしたのだが、この完成により農業経営の合理化・効率化が図られ、またこれを契機に佐渡島内で農業用ダムの建設が次から次へと進められるようになったことも大きい。ダムの火付け役だな。



ダム湖畔には、展望台や野鳥観察所、キャンプ場が設置されており、加えて1500本のサクラが植えられていることから、佐渡ではサクラの名所として島民にも親しまれている。
放鳥により野生の中で繁殖したトキ(朱鷺)が住んでいる地域にあることもあって、トキの郷と言えば新穂ダムと言われているし、ここからの大佐渡山脈の眺めも最高。トキから見た鳥観図のように佐渡を眺めることができる。
農業の近代化によって、少なからずトキが生息する上では住み心地が悪くなってしまったことも事実。ただ、しっかりとした農業基盤を作りあげた上で、またトキの生息区域も広がっていることからも、このダムの存在は大きいといえる。

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