

敦賀、小浜、三国など福井の各地を訪問し、特に交通の要所として栄えた町のその歴史や遺産群、不思議な光景を紹介してきた。港、鉄道、そして高速道路、あとは空路・空港ということになるが、福井県って空港ありましたっけ?
自分の中では福井県には空港は存在しないという認識だったが、福井市から三国に向かう途中で「福井空港」という看板が目に飛び込んできた。これは立ち寄らなければならないと思って県道を右折、すぐに空港ビルらしき建物が見えてくる。
決して大きいとは言えない建物、少し年数の経過も見て取れる。駐車場もさして広くないが、停めてあるクルマの数も少なく、玄関の真ん前のスペースに停めることができた。しかし、駐車場や建物付近に人影は見えない。利用されている?幻の空港なのか?


中に入っていいのか迷うくらいの静けさだが、「見学の方へ」との表示があってドアが開いていたので、そーっと中を覗いてみる。ロビーはきれいに整理されていて展示物なども掲げられている。正面にはエプロンと誘導路、その奥に滑走路が見える。これは間違いなく空港だ。
福井県土木部港湾空港課・福井空港事務所が管理する福井空港は、1200メートルの滑走路を持つF級(着陸帯の等級)空港(福井県坂井市)。1966年に竣工し東京(羽田)への定期便もあったが、1976年すべての定期便が休航となってから、飛行機が飛ばない空港と呼ばれてきた。
というのも、隣接の小松空港(石川県小松市)は1944年海軍飛行場として開設(現在も航空自衛隊と滑走路などを共用)され、2700メートルの滑走路を持つ空港へと整備が進められた。東京(羽田)をはじめとした国内便のほか、ソウル便など国際線も4路線。それを追行した福井空港は、なかなか追いつけなかったといったところか。


現在の福井空港は、県の防災ヘリ、県警ヘリ、ドクターヘリなどの基地という重要な役目を担っているとともに、グライダーの訓練場所としても活用されている。ただ、2023年度には小型機の発着を含めて、4600回の着陸機会があって、ここ数年の中では飛躍的な伸びを示した。
というのも、能登半島地震の発生(2024年1月1日)の際、救援ヘリが集結したことによる。ただ、駐機場が手狭なことが指摘されたことにより、福井県は有識者による検討委員会を開催。夜間の緊急着陸のための照明の設置、自衛隊の大型ヘリ(CH-47J・チヌーク?)を活用したD-MATの活動に資するように新空港ビルの建設などの構想を発表した。
福井県民でさえ空港があるという意識も低いようだが、防災の観点から空港の重要性は高い。また、プライベートジェットの離着陸も増えていることから観光面の活用なども盛り込んだ整備を図るということなので、新・福井空港が誕生する5年後を楽しみにしたい。

