私が当該の漁師だったら・・・・
品のない話だが,私が該当の漁師だったら,
「料金は要りませんから,どうぞ新鮮なうちにお召し上がり下さい」
と箱詰めにしたものを何箱も進呈するか,
「可愛そうじゃけん,あんたらでちゃんと供養してやってくれ」
と,ダンプカーで東電と官邸前に投げ出しただろう。
憤怒の恵比須様 《編集手帳・読売;4月6日》
釣り竿を携え,鯛を抱えた恵比須さまは漁業の神様でもある。
恵比須さまが最も嫌うのは,漁師が船からボルトなどの部品や工具を海に落とすことだという。
◆「恵比須さまがそれらを陸に押し戻すのに7年かかるとされているので・・・」と,
漁師の緒方正人さんが『常世の舟を漕ぎて・・・水俣病私史』(世織書房)に書いている。
部品や工具を工場排水に置き換えれば,そのまま環境問題にあてはまる・・・・とも。
◆不安と憤りを胸にたぎらせつつ,恵比須さまに手を合わせた漁師の方は多かろう。
放射性物質を含む汚染水を,東京電力は原発事故現場から海に放出した。
◆低濃度の汚染水を海に流すことで,高濃度汚染水の貯蔵先を確保するという。
もとは,原子炉を冷却するために注いだ水が汚染されて漏れ出たものである。
注水の前に漏水対策を講じていたら…。
東電の,ということは政府の,不手際をここで責め立てても事態は改善しないとはいえ,
ともに高度な専門家を擁する組織である。
事故は日を追って人災の様相を濃くしている。
◆エビス顔の神様よりもいまは,憤怒の形相も険しい不動明王がその海には似合う。
『濃度が低いから生物や生き物(ヒト)に影響は無い』とする逃げ口上は,
遠い昔の話,既に廃棄されているはずだった。
『食物連鎖によって,最高位にあるヒトの口に高濃度の毒物が人体に影響を与える』
ことから,排水の濃度規制から総量規制に変わったはずだ。
あの《愚》をまたも繰り返すのだろうか。
各国が反発するのは当然のことで,私たちは過去の失敗から何も学んでいないのだろうか。