Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「私のように美しい娘」フランソワ・トリュフォー

2010-04-09 01:04:59 | cinema
フランソワ・トリュフォーDVD-BOX「14の恋の物語」[III]

角川エンタテインメント

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私のように美しい娘UNE BELLE FILLE COMME MOI
1972フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
原作:ヘンリー・ファレル
脚本:ジャン=ルー・ダバディ、フランソワ・トリュフォー
撮影:ピエール=ウィリアム・グレン
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ベルナデット・ラフォン、アンドレ・デュソリエ、シャルル・デネ、ギイ・マルシャン、フィリップ・レオタール、クロード・ブラッスール


クロード・ブラッスールてどこで見たかな~と思ったらあれじゃん、『はなればなれに』の男二人のうちの一人。(あの映画も男2女1のシチュエーションだね)

そしてクロードのフィルモグラフィを探っていたら、なんとイタリア産地味映画『ピンク・ロブスター』(1980)に出ていると(笑)。
『ピンク~』は日本では劇場未公開で、深夜TV枠でむかーし放映されたきりのドタバタ喜劇なのだ。本筋などはすっかり忘れてしまったのだが、とにかくそのドタバタぶりがただ事ではなく徹底していて、パーティ会場のようなところで主人公が次から次へ細かくしつこくひどい目にあいつづけて、最後には髪も服もぼろぼろでなんか2回の窓から宙吊りになったりしていたような気がする。ここまでひどい目にあう喜劇主人公もめずらしかろうと、深夜のワタシは腹かかえて笑っていた。機会があったらもういちど観てみたいものである。



で、『私のように~』。

ヒロインを演じたベルデナット・ラフォンは、トリュフォーの事実上のデビュー短編である『あこがれ』での清楚で凛としたあの少女であるのだが、『私のように~』では、これがあの少女と同一人物??と目と耳を疑ってしまうくらいに、徹底的なアバズレさんカミーユを演じている。そのびっちぶりはもう見事としか言いようもなく、まさにアバズレさんの現実(とそれに翻弄される哀れな男ども)を描くこと、その一点にトリュフォーの関心はあるに違いない。アバズレ・ドタバタ・ロードムーヴィー。

カミーユの行状はまったくひどいモンで、幼少期の父親事件からはじまり、感化院を抜け出してからは行き当たりばったり、手当たり次第に見境なく男を引っ掛けては絞りつくし、邪魔になったら殺してもいいくらいのひどさ。お金やモノに執着し最初の夫(これもいきづりで引っ掛けた)の母親の隠し財産を平気で持ち逃げしたりする。移動はつねにヒッチハイク。金がなくなると、目に付いた店で水商売。と思うとその店の自称世界一のミュージシャンとまたできちゃったりして、二股ならぬミツマタヨツマタなんでもござれ。やれやれ。

というカミーユの行状は、現在刑務所にいる彼女に犯罪学者スタニスラフ(なんで東欧風の名前なんだろ?)が論文執筆のためにインタビューするという形で、回想のスタイルで描かれる。ところが、こちらの期待通りというか、観察者として外側にいたスタニスラフも、カミーユと何度か会ううちにカミーユの天性の吸引力に引き寄せられて、ろくでもないことに巻き込まれ、最後にはひどい目にあう男どもの仲間入りをする(笑)。回想の物語が最後には現実を巻き込んでしまうというこの映画の作りはなかなかたいしたもんだと思うな。




男たちがまた妙にキャラ立ちしているのよね。性欲と食欲しかなさそうなボンクラとか、好色そうな弁護士とか、頭の薄いミュージシャン(セックスのときにへんなレコードかけるww)とか、童貞かつ道義心にあふれた害虫駆除屋とか。そしてもちろん若くて純真だけどどこか危なげな学者さんも変なヤツ。

全編クレイジーな出来事の連鎖は、偶然だけど『ピンク・ロブスター』的。あるいはジャック・ロジエ『メーヌ・オセアン』をもっとめちゃくちゃにしたような感じか?ロジエに嫉妬したというトリュフォーだけれど、彼だって十分面白い映画を撮っているよ。。

****

「あばずれ」はフランス語ではsalopeなどというらしい。刑務所の看守のおばさんがカミーユを「あばずれよ!」と言うシーンがあるが、そこではなんて言っていたかな。気分が乗ったらそこだけ見直してみたい気がしている。

シャルル・デネ演じる害虫駆除屋が実に可笑しくて気に入った。デネも結構いろいろな映画に出ているね。

カミーユの罪を晴らす手がかりがまた面白い。その関係で出てくる少年の本格派振りがすごく笑えるのだが、そこをネタバレしてはやはりいかんだろう。

「パリまで813」という標識だが、『柔らかい肌』で最初に二人が関係を深めるきっかけとなったホテルのルームキーナンバーも813だったのよね。
トリュフォーはこの数字を好んで使っているってことです。モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンものの一編『813』に因むものということですね。
トリュフォー作品(『柔らかい肌』以降)見るときは要注意ですね。



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