Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

デレク・ジャーマン「ラスト・オブ・イングランド」

2005-04-22 12:08:36 | cinema

 

裸体図を凌辱する男、テロリストによる処刑、葬送、ユニオンジャックのうえで交わるゲイ、嘆き悲しむ女などの断片化されたシークエンスの重層的な映像コラージュ。
頽廃・暴力・死・絶望を思わせる映像がスラッシュされ、重なり合い、繰り返される。
音響もまた、ノイズ、台詞、音楽、ヒトラー演説等の引用からなる、サブリミナルに訴えるコラージュである。

デレク・ジャーマンは私にとって、「リアルな」作家なのだと思う。
80年代には間違いなくこういう衝動があったと思う。
頽廃・暴力・死のイメージ、そしてアヴァンギャルドな表現。
希望のない表現。即興的表現。
他のどの時代とも違う表現の荒廃、荒廃の表現があった。
そしてそれらでしか表し得ない何かを憑かれたように追った作家がいた。

あのころ、世界のイメージは確かにこうだったと思う。
そしてそれは今も少しも変わっていないと思う。

しかしサイモン・フィッシャー・ターナーによるサウンドコラージュは秀逸。
このままノイズ作品?音源としてもよいだろう。
でも悪夢を呼びそうだ。

またときおり挿入される、ホームムービーらしき郷愁あふれる映像がまたうら悲しい。
過去とは複雑なものだ。過去は懐かしいとともに忌まわしくもあるものだろう。誰であれ、個人的にも歴史的にも。

つらく苦しい自分だけの90分を過ごせます。

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「WATARIDORI もう一つの物語」

2005-04-22 08:53:29 | cinema

 

2001(フランス・TV)
監督:ジャック・クルーゾ
製作総指揮:ジャック・ペラン、ステファンヌ・デュラン
      ジャック・クルーゾ
編集:ジャクリーヌ・ファノ、カトリーヌ・モーシャン
音楽監督:ブリュノ・クーレ
ナレーション:ジャック・ペラン


約2時間にわたって鳥を見続ける。
ひたすら見続ける。

「よく撮ったなー」とか「どうやって撮ったのこれ?」とか、
「すごい近くで飛んでる!」とか「すごくいっぱい飛んでる!」とかいった
人間らしい驚きは、最初の数十分のうちに味わい尽くしてしまう。

後は、だんだん異様な気分になってゆく。
「とり、とり、とり・・・・」と思っているうちに「と」「り」ってなんだっけ?変な言葉に思えてくる。
あとはあの姿形!ちっこく突き出た頭とくちばし、翼と、こころもとない両足。
自分がそんな形態になってしまったような気分になり、ついくちばしで何かをつつきたくなる。

こうなってくると、こんどは病的に面白くなってくる。
「うわっこいつはとりの中でもちょっと人間ぽいぞ!」
「こいつはどっちかというと爬虫類じゃないのか?」とか
鳥の気持ちになって「仲間」を観察し出す。

**

ルドルフ・シュタイナーによると、
鳥のエーテル形姿全体は、本来頭だけの存在なんだそうで、
口腔だけの頭、胴体、足もすべてが変化された頭と見なされるべきだそうです。
・空を飛ぶ鳥の翼は、太陽光線の霊的な力によってその物質体が与えられている。
・おなじ太陽の働きは、人間に対しては、脳を思考内容の担い手としている。
・鳥の多彩な翼の中に、人間の中に生きる思考の力と同じ力の働きを見ることができる。
・思考するとき、我々は自分が翼を持った鷲に似ていると感じることができる。

あーわからん。(参考文献↓)

ジョン・デンヴァーが「鷹と鷲」という歌で、鷹と鷲が飛翔するときの崇高さと自由さを、
鳥の立場にたった一人称で歌い上げているが、あれもなかなか深い洞察だったのか?(笑)

**

少なくとも鳥にとっての翼や飛行の重要性ってのがこの映画見てると
いやというほど伝わってくる。
こんなに鳥を追う情熱がどこから出てくるんでしょう。ジャック・ペランさん。

・こんなに鳥を観れる映画って他にあるかな。ヒッチコックの鳥よりは確実に多い。
・ツイン・ピークスで存在感を示すシロフクロウの声が、なんかお間抜けでとてもよい。
・ペンギンが鳥だとはどうしても思えない!直立二足歩行だよなああれ。
・「WATARIDORI」という本編?と本作との区別がついてませんでした。
 本編も見たい・・・けどもういいかな(笑)
・鳥フェチでなければ、退屈は避けられないのではないでしょうか。
・日本語音声がついているので、そっちで観た方がよかったかも。
 フランス語だといい具合に眠気を誘うので(笑)

コメント (2)
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