日本の相対的貧困率、過去最悪
【読売新聞】コラム・ブログ > あんしん教室 - 2011.08.30
日本の相対的貧困率、過去最悪
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日本の「相対的貧困率」が過去最悪になったそうですが、相対的貧困率ってなに? いま、なぜ、貧困が広がっているのですか?
低賃金の非正社員が増加
相対的貧困率は、国民一人ひとりの所得を順番に並べ、中央の値の半分より低い人の割合だ。この場合の所得とは、収入から税金や社会保険料を差し引いた1人当たりの所得を指す。厚生労働省が7月に発表した2010年調査では、年間112万円未満が貧困になった。相対的貧困率は16%で、前回の07年調査より0・3ポイント上昇。1986年調査以降で最悪となった。
経済協力開発機構(OECD)の調査では、2000年代半ばの相対的貧困率は、日本はメキシコ、トルコ、米国に次ぐ4番目の高さだった。
日本では、一人親世帯の貧困率が際だって高く、50%を超える。貧困世帯の子どもの割合も高水準で、健康や教育への悪影響が心配される。
日本の貧困率が高い理由の一つとして、女性の賃金が低いことが挙げられる。女性は、非正規雇用の中でも特に賃金が低いパートやアルバイトが多く、正規雇用の場合も、管理職への登用が少ない。一人親世帯の貧困率が高いのも、大半が母子家庭で、親の収入が少ないためだ。
非正規雇用は全体的に増えており、貧困が拡大する原因になっている。正規雇用より賃金が低いだけでなく、景気悪化で仕事を失うことも多く、貧困に陥りやすい。
貧困率をさらに押し上げているのが、少子高齢化だ。生活保護受給世帯のうち、半数近くが高齢者世帯。生活保護を受給している高齢者世帯の9割が一人暮らしだ。国民年金の平均受給月額は5万4320円(2009年度末)で、家族などの経済的な支えがないと、生活が苦しくなる。
貧困対策として、政府の「社会保障・税一体改革」では、正社員を中心とする厚生年金や健康保険などの対象を非正社員にも広げる方針。また、仕事を探している人に無料の職業訓練や生活資金の補助を行い、求職を支援する。
いったん貧困状態になると、再び生活を安定させるのは難しい。国や企業を始め、社会全体で、貧困に陥るのを防ぐとともに、貧困から抜け出すための支援に取り組む必要がある。(飯田祐子)
(2011年8月30日 読売新聞)