漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「戠ショク」 と 「職ショク」「織ショク」「幟シ」「熾シ」「識シキ」

2024年08月03日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ショク・シキ  戈部 zhí      

解字 [甲骨文字辞典]は「戠ショク・シキの甲骨文字(上)は細いノミ(鑿)の象形である丵サク型)と戈(ほこ)に従う。戈は犠牲を殺す道具、丵は犠牲を解体する道具であろう。異体字(下)には口を加えて言と同形にしたものがある。意味は①祭祀名。②地名またはその長。③赤色を示す形容詞(当て字)の用法などがある」とする。金文は言の口に短い横線がはいり音となった。篆文は「音+戈」の戠となるが[説文解字]は「闕ケツ(欠)。戈に従い音に従う。発音は从之弋(ショク)切」とし意味は示していない。現在の意味も、①同音の埴ショクに通じた埴(はに)。粘土。②聚合」などの意味しかない。つまり戠は発音のショク・シキ・シを表す音符字である。戠を含む音符字は、すべて形声字となる。

イメージ 
 「形声字」
(幟・識・職・織・熾) 
音の変化  ショク:職・織  シ:幟・熾  シキ:識

形声字
 シ・のぼり  巾部 zhì
解字 「巾(ぬのが垂れた形)+戠(ショク⇒シ)」の形声。長い布を目印として立てることを幟といい、のぼり(幟)の意味をあらわす。
意味 (1)のぼり(幟)。長い布に模様をつけてめじるしとして立てる旗。「旗幟はたのぼり」「旗幟キシ」(表立って明らかにする態度)「旗幟キシを鮮明にする」「鯉幟こいのぼり」(鯉のかたちをした幟)「赤幟セキシ」(赤い旗。源平合戦では平家の旗)(2)[仏教]しるす。あらわす。「標幟ヒョウジ」(形でその内容を表現すること。密教では、印(指の組合せ)・持物などで仏の役割を表す)
 シキ・しる・しるす  言部 shí・zhì
解字 「言(ことば)+戠シキ」の形声。[説文解字]は「知る也」とし、「廣韻」などの韻書は、「記(しる)す也(なり)」とする。言葉をしるすことを識シキという。また、言葉にしるすことによって深く認識することをいう。
意味 (1)しるす(識す)。しるし。「標識ヒョウシキ」(標も識も、しるしの意。目印) (2)しる(識る)。考える。さとる。「識別シキベツ」「認識ニンシキ」「識見シキケン
 ショク・シキ・おる  糸部 zhī・zhì
解字 「糸(いと)+戠(ショク)」の形声。糸で布を織ることを織ショクという。
意味 (1)おる(織る)。布をおる。はたおり(機織り)。「織機ショッキ」「染織センショク」(染めと織り)「紡織ボウショク」(糸を紡ぐことと織ること) (2)あやぎぬ。色糸で織った絹。「織文ショクブン」(模様のある織物。錦にしきなど) (3)組み立てる。組み合わせる。「組織ソシキ
 ショク  耳部 zhí

解字 「耳(みみ)+戠(ショク)」の形声。耳で聞いて知り覚えることを職という。転じて、役割・担当する・つとめる意を表す。職の字は金文からあり、部首と戠が組み合わさった字形としては一番はやくからある。なお、白川静[常用字解]は「戦場で討ち取った敵の左耳を切り取って戦功の証拠とするが、その耳に識(しるし)をつけることを示しているのが職である。識(しるし)をつけて戦功を取り扱うことを職というので「つかさどる(職務として担当する)」の意味となり「つとめ、しごと」の意味となる。」と独特な解釈をしている。
意味 (1)つとめ。役目。担当する。「職務ショクム」「職掌ショクショウ」(うけもつ職務)(2)しょく(職)。いとなみ。しごと。「就職シュウショク」「定職テイショク」 
 シ・さかん・おき  火部 chì
解字 「火(ひ)+戠(ショク⇒シ)」の形声。火のいきおいが盛んなさまを熾という。転じて、勢いがはげしいさまをいう。
意味 (1)さかん(熾ん)。勢いがはげしい。「熾烈シレツ」(勢いが盛んで激しい)「熾盛シセイ」(熾も盛もさかんの意)(2)[国]おき(熾。=燠)。薪が燃えて炭火のようになったもの。「熾火おきび」(赤く熱した炭火)
<紫色は常用漢字>>

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