漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「稣ソ」 <よみがえる> と 「蘇ソ」 「酥ソ」

2018年10月26日 | 漢字の音符
 ソ  魚部

解字 「魚(さかな)+禾(実った穀物)」の会意。この字の解釈は中国ネットの「百度百科」に興味深い説明が載っている。要約すると「寒波がきたとき大きな河では表面は凍りやすいが、魚はより深いところにゆき生き残る。ところが小河や小池では全面凍結してしまい氷の下の魚も深くへ行けず寒さで動けなくなる。こんな時、人々は実った穀物を収穫するように、(氷を割り)動かない魚を手に取ることができる。魚は漁獲されたのち、すぐに回復するので、このような状況を稣という。」 稣は、転じて「生き返る」意味に用いられる。もともと、魚と禾を合わせた字は何らかの説明が必要だが、この説明はかなり納得できる。
意味 (1)よみがえる。生き返る。いきる。「稣活ソカツ」(復活)「稣息ソソク」(息をふきかえす。よみがえる) (2)(穀物を収穫するように魚が獲れることから)かき集める。あつめとる。

イメージ 
 「よみがえる」(稣・蘇・酥)
音の変化 ソ:稣・蘇・酥

よみがえる
 ソ・ス・よみがえる  艸部
 紫蘇(ウィキペディアより)
解字 「艸(くさ)+穌(よみがえる)」の会意形声で、仮死した人をよみがえらせた伝説のある薬草の紫蘇をいう。また、よみがえる意で使われる。古代日本では同音の酥に通じ、乳製品の意味で使われた。
意味 ①しそ(紫蘇)。シソ科の一年草で、葉と果実は香りがよく食用・香味料・色素・薬用となる。「青紫蘇あおじそ」 (2)よみがえる(蘇る)。「蘇生ソセイ」 (3)地名。「蘇州ソシュウ」(中国の江蘇省南部の都市。運河による水運が生活に溶け込んでいることから「東洋のヴェニス」と呼ばれる)「阿蘇山アソサン」(熊本県北東部の活火山) (4)植物の名。「蘇芳スオウ」(①マメ科の小喬木。②蘇芳のサヤなどを煎じてつくる赤色染料、また、その色) (5)そ(蘇)。古代の日本で作られ献上された乳製品の一種。生乳を加熱濃縮した非発酵の乳製品と考えられている。平城宮木簡に「生蘇」と「精蘇」という二つのタイプの蘇が記されている。「貢蘇コウソ」(諸国に蘇を作らせ献上させる)
 ソ  酉部
解字 「酉(発酵する)+禾(=穌。よみがえる)」の会意形声。異体字に「酉+穌」の𨣺がある。疲労や病気で衰えた体がよみがえる効果があるとされる発酵乳製品をいう。生乳を桶にいれて長時間攪拌カクハンすると乳酸発酵がおこり、乳脂肪と乳糖が分離する。乳脂肪を取り出すとバターやチーズ状になり、乳酸発酵した乳糖がヨーグルト状になる。穌は、この両方を言ったようであるが、よみがえる効果があるのは乳酸菌を豊富に含み腸内の細菌を追い出す整腸作用があるヨーグルト系の飲料や食品であろう。カルピスを作った三島海雲は明治末期、仕事で北京から内モンゴルに入り当地の遊牧民たちが毎日のように飲んでいた酸っぱい乳をすすめられるまま口にしたところ、そのおいしさと健康効果に驚きを受けた。長旅ですっかり弱っていた胃腸の調子が整い体も頭もすっきりしたという。この酸乳は酥の一種であると思われる。
意味 (1)牛や羊などの生乳を乳酸発酵により精製した飲料や食品。「酥酪ソラク」(牛や羊の乳を発酵させて作った食品)「凝酥ギョウソ」(固形化した酥)「酥団ソダン」(酥酪を丸く制成した食品、色が白く光沢がある)「酥油ソユ」(酥酪の乳脂肪を分離した油)「酥灯ソトウ」(酥油の灯り) (2)酒の別名。「酥酒ソシュ」(乳発酵の酒) (3)(乳から作るため)白くやわらかい。清くなめらかなものの例え。「酥腕ソワン」(白くやわらかい腕)
参考 仏教の涅槃経に「五味の譬(たと)え」として、「牛より乳味を出し、乳より酪味ラクミを出し、酪味より生酥味ショウソミを出し、生酥味より熟酥味ジュクソミを出し、熟酥味より醍醐味ダイゴミを出す、醍醐味は最上なり。もし服する者あらば、衆の病皆除く」とあり、乳から酪⇒生酥⇒熟酥⇒醍醐の順に味が変化(高度化)してゆくとしている。
 最初の酪は普通は生乳からできる半凝固状の製品をいうが、ここでは液体の発酵乳か。また、生酥味というのは低発酵のヨーグルト系、熟酥味とは高発酵させた固形状のチーズ系と考えられる。最後の醍醐味については諸説あり確定していない。




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