漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

紛らわしい漢字 「旋セン」 と 「施シ」

2018年01月08日 | 紛らわしい漢字 
  「旋セン」と「施シ」に共通する部分は「方+𠂉」の部分。これは旗キ(はた)の略体で、旗の意である。違うのは旋センの「疋ひき」と、施シの「也」、この二字の意味がわかれば、両字の違いは簡単に分かる。

      ショ・ソ <あし>
 ショ・ソ・ヒキ・ヒツ・ひき  疋部ひき

解字 甲骨文と篆文は足と同形で、脚の下半部の象形。現代字は上部がフに変化した疋になった。中国で匹(ひき)の俗字として用いられたため、匹の意味で使われる。疋は部首となる。
意味 (1)ひき(疋)。匹(ひき)。布の長さの単位。動物を数える語。昔の金銭の単位。 (2)ひき(疋)。匹(ひき)。対になる。二つが並ぶ。 (3)あし(足)。

イメージ  
 匹の意の「ひき」(疋)
 本来の意味である「あし・あるく」(旋)
音の変化  ショ・ソ:疋  セン:旋  
 
あし・あるく
 セン・めぐる 方部
 
解字 甲骨文は吹き流しのついた旗と進行を意味する止(あし)が描かれ、軍旗を持って進む様子を表しており、原義は軍事進出の意[甲骨文字辞典]。金文は止が吹き流しの下にきた形となり、篆文は、旗竿⇒方、なびく吹き流し⇒𠆢、止⇒足に変化。現代字は「方𠂉(旗の略体)+疋」の旋になった。当初、軍旗を持ってすすむ意であったが、のち、(戦場を)めぐる・めぐってもどる意となった。
意味 (1)めぐる(旋る)。ぐるぐるまわる。「旋回センカイ」「旋転センテン」 (2)めぐってもどる。かえる。「凱旋ガイセン」(戦いに勝ってかえる) (3)相手との間を行き来する。とりもつ。「斡旋アッセン」(人と人のあいだをとりもつ)「周旋シュウセン」(①土地・家屋の売買、雇用などで人と人のあいだをとりもつ。②元の意は、ぐるぐるめぐる)


     ヤ <へび>
 ヤ・なり  乚部   

解字 この文字については、水器の形[字統]、平らにのびたサソリの形[学研漢和]などの説がある。しかし、金文の形が、它(へび)と同じであり、音符に現れるイメージも、ヘビと一致することから、ヘビを表した象形と考えられる。しかし、「也」は仮借カシャ(当て字)され、断定の助字「なり」や感嘆の助字「や」などとして用いられる。
意味 (1)なり(也)。~である。断定の助字。 (2)や。か。かな。感嘆・疑問・反語の助字。

イメージ 
 「へび」
(也) 
 ヘビの特徴である「うねる」(施)
音の変化  ヤ:也  シ:施
うねる
 シ・セ・ほどこす  方部
解字 「旗の略体(方+𠂉)+也(うねる)」の会意。吹き流しがうねりながらなびく旗のこと。旗をなびかせて人々を指揮して動かし、諸事をおこなうこと。また、「ほどこす」(必要な処置をとる)意から「めぐみ与える」意が派生した。
意味 (1)旗がなびく。(2)実行する。おこなう。ゆきわたらせる。しく。「実施ジッシ」「施政方針シセイホウシン」「施工セコウ・シコウ」(工事をおこなう)「施行シコウ」(①実施する。②法律の効力を発生させる)「施術セジュツ」(手術などを実施すること) (3)ほどこす(施す)。必要な処置をとる。「施策シサク」(ほどこすべき対策)「施錠セジョウ」(錠をかける) (4)ほどこす(施す)。めぐみ与える。「布施フセ」(施しめぐむ)「施薬セヤク」(薬をほどこす)「施主セシュ」(①寺や僧に物を施す人。②法事や葬式の当主。③建築主)
<紫色は常用漢字>

参考 音符「疋 ショ・ソ」
   音符「也ヤ」


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