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志野

2016-12-11 15:36:04 | 季節・週末散歩

多治見を去る日が近づき切羽詰まって、どうしても行きたいとずっと念じていた場所に行ってきました。それは鼠志野の若尾利貞先生の工房です。突然お訪ねしたにもかかわらず思いもよらぬ歓待をしていただき、感激冷めやらずというところです。

実は我が家には美しくも厳しい鼠志野のお茶碗があります。そのお茶碗と初めて出会った時、20年にもなるでしょうか、ならないでしょうか・・・・・その時の衝撃を忘れることは出来ません。どのような言葉にしたらよいのかもわかりません。そして・・・・・そのお茶碗は我らが夫婦の手元に残り、作者の心と歴史に思いを馳せて自分の心との新しい交換を起こす契機となってきました。そのお茶碗を平戸に残して8年前上京したのですが、ご縁があってそのお茶碗の生まれ故郷多治見に移り住み、間もなく多治見を去って平戸に戻ろうとしています。何とかそのお茶碗に心を込められた作者にお会いしたい・・・・・との一念にかられ、偶然も重なって念願を果たすことが出来たというわけです。

 

お手元に残る作品が飾られたお部屋で先生ご夫妻にお目にかかり、貴重なお話を伺うことが出来ました。このことは私達のかけがえのない多治見の記念になりました。帰郷して後はお茶碗を手に取るたびにその日の先生ご夫妻のご様子やあれこれ伺ったことを思い出すだろうと思います。

 

 

わが日本の焼き物の中で特異な存在感を放っている志野。見るものの心をひきつけずにはおかない志野。私も『雪』と名付けたり『雲』と名付けたりして、手元にある食器を楽しんでいます。ですが・・・・・その出自にまつわる由来はいまだに多くが不明だそうです。現代日本人は多くの場合伝統文化になじまずそぐわず、日本人独特の感性に基づく『用の美』の工芸と遠く離れた日常生活を送っていますが、外国人はこの『志野』に大きな注目の目を向けているそうです。先生の作品は既にボストン美術館にも収蔵され、『グレーズシノ(鼠志野)』と名付けられているそうです。どんなつづりか正確にはわかりませんが、『グレーズ』という音が何となく『グレイス・グレーズ・志野』と重なるような気がして嬉しいのは私だけではありませんよね?????

 

 

この『グレーズシノ』という音を聞いて思い出したことがあります。ついこの前の11月半ば、猶興館高校の大阪同窓会がありました。そこで何と50年ぶりにあった同窓生と話したばかりのこと・・・・・『志野』は『チャイナ』という英語で括られたくない!!!!!・・・・・その同窓生はアメリカで金融関係の仕事をしている最も現代的な現役の実業家ですが、剣道と茶道も教えているのだとか・・・・・それで焼き物の話になり、意見が一致しました。『ジャパニーズ・チャイナ』というわけの分からない(?)分類も嫌だし、『チャイナ・日本』も嫌だなあ~~~~~と・・・・・・(『ジャパニーズ』は漆器の総称になっています。)

 

 でも・・・・・帰宅して考えて・・・・・若尾先生のお話を伺ってまた考えて・・・・・

     志野・・・・・信濃信野科野・・・・・チノ茅野・・・・・シナ志那支那チャイナ・・・・・

『チャイナ』とは『支那』のことで、現代言うところの中国や中国文化に代表されている焼き物の歴史的英語名だと思っていました。まあそれはそれで正しいのですが、『支那』と『中国』は同じではありません。『中国』は『チャイナ』ではないのです。(だから英語で中華人民共和国のことをチャイナと呼ぶのは間違っていると思います。)『チャイナ』の語源は、おそらく、『チーノ、あるいはシーノ』であって、『チン』あるいは『イン』・・・・・そして『・イン』という国名に由来するものだと思います。そしてその淵源は『殷』『秦』『新』『晉』・・・・・『陳』『元』(元が大きくヨーロッパに影響したと思います)『明』『清』・・・・・そしてまたこれが、わが国の信濃や茅野と深くかかわっているのだと思います。たとえば、『高志』も『越』に隠れてしまい、『高麗』も『駒』や『巨摩』に隠れてしまったように。それでも、いつも主張している通り、漢字に潜む音はその意味を時代を超えて受け継がれているのだと思います。

 

『志野』と名付けた人は、日本の桃山時代に日本の土と釉薬で新しい美を発見して『陶器の中の陶器』と感激し、歴史にちなんで『志野』と命名したのです。そこで私は提案します。日本では陶器のことを『チャイナ』という英語名は止めましょう!!!!!『シーノ』が正しいと思いますが、せめて、

             『チーノ』  または、最大限譲って『チーナ』にすべきです!!!!!

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