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あご風

2007-09-16 21:15:16 | 出版記事
今朝窓を開けたら北風が吹いていました.私達の住んでいる平戸地方では、北風が吹き始めるとあご漁が始まるので、北風をあご風と呼んできました.高校時代は教室の窓からあご漁の船が見えたものです.そして「秋になったなあ」と思い「冬を迎えるのだなあ」と思うのです.年々漁獲量が減っていく平戸のあご漁ですが、それでも依然として季節の風物詩であることに変わりはありません.

あごは飛び魚のことですが、平戸で捕れる飛び魚は小ぶりです.飛び魚は長い胸びれを広げてグライダーのように滑空します.高校時代通学する船に飛び込んで来たこともあります.船の上から眺める飛び魚の姿は本当にきれいです.鳥が空を飛ぶようになった時には、飛び魚のような時期もあったのでしょうか.進化の妙を思います.

そんな飛び魚の体は内臓が少ないので、丸干しに向いています.油が少ないのです.平戸人の記憶にあるあごは白身の美味しい干し魚です.規格外(?)の飛び魚は丸ごと炭焼きにして干し、高級なだし用のあごになります.一部は上等のあごも特上のだし用にします.平戸のお正月はあごだし抜きには考えられません.昆布とあごを一晩水に漬けてだしにします.煮出したものと違って上品な味です.塩味のお雑煮用です.醤油味には数分沸騰させますが、極短くしないとあご臭くなってお料理の味を損ねます.

昔のあごは塩気を強くしてコチンコチンに干しました.焼いて紙に包み出刃包丁の峰や金槌でたたいて骨離れをよくしたものです.塩気をきかせないと保存がきかなかったからですが、冷蔵庫がある今では塩気の薄い生干しもあります.主に鹿児島や五島などで捕れる大きな飛び魚を平戸では「うばあご」と呼びます.「ウ」とは大きいという意味です.いわしの大きいのを、おおばいわしと呼びますよね.あれと同じです.主人の母は大きいことや多いことを「ウーカ」と言っていました.それを聞いたとき本当にびっくりしたものです.古代の日本語の音が生きている!と感激したものです.うばあごは三枚卸も簡単ですし、白身の淡白なお魚です.蒸してカボスを利かせてもおいしいものです.茸と土瓶蒸しもいいでしょう.お魚がお好きな方はお試しください.

まだまだ日中は暑いのですが、平戸は秋を迎えました.マクロビオティック教室も昨日また始まりました.もうすぐ「とんご柿」も色付くでしょう.楽しみです.
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