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日本の昔話1:因幡の白兎

2021-05-15 19:44:01 | 日本語・古事記・歴史・日本人

私たちの年代の頭の中に当然のように住んでいると言ってよい、海幸山幸、大国主命(おおくにぬしのみこと)、かぐや姫・・・・・こういう物語の記憶を若者は持っていないらしいと思う事態にたびたび遭遇します。『えっ?知らないの?・・・・・!』と思うことが多いのです。桃から生まれた桃太郎に瓜から生まれた瓜子姫、一寸法師に金太郎・・・・・こういう物語は、幼児教育の一環であったに違いありません。それが途切れてしまって、現在の混乱があるのではないかと思うようになりました。先日の父の命日・恒例の随想古事記のご紹介の日、いつもちょっとした記事を書いているのですが、今回胸がつかえて何も書けませんでした。世情を思いかわいい孫たちの将来を思うと、辛かったのです。そうした気持ちでいたところ、昔話を伝える義務があると思うとの友人の決心を聞きました。それで、私もこうした記事を時々書こうと思います。私たちは努力しなければならないのではないかと思います。

 

今日は因幡の白兎という大国主命(オオクニヌシノミコト)のお話を記事に残したいと思います。

大きな袋を肩にかけ だいこく様が来かかると そこに因幡の白兎 皮をむかれて赤裸  だいこく様の言う通り きれいな水で身を洗い 蒲の穂綿にくるまれば 体は元の白兎  だいこく様は誰だろう 大国主(おおくにぬし)の尊(みこと)とて 国を治めて世の人を 助けなされし神様よ

私達はこういう童謡を母から教えられて育ちました。だから誰でも話の大筋は知っており、我が国の古代に登場される神々に親しみを持っておりました。今になって考えるとそれが国を思い同胞を思う愛国心の土台になったのではないかと思います。愛国心というのは私たちの幸せな日々の暮らしを守ってくれる郷土というものに対する心です。家や家族と同じものです。それを失わせるものが敗戦後の教育だったのだと思います。それで、少し自分の考えを加味して、改めて昔語りを取り上げてみたいと思います。今回は『因幡の白兎』。

 

オオクニヌシノミコトは大きな袋を担いでおられます。何を担いでおられるのでしょう・・・・・それは八人の兄君たちの旅のお荷物です。どういう旅に出かけられたのかというと、ヤガミ姫というお姫様への求婚の旅に出かけられたのです。兄君たちはオオクニヌシを馬鹿にしておられたので、荷物持ちにして連れていかれたのです。オオクニヌシは重い荷物を持っておられたので、遅れて一人歩いておられました。そんな途中での出来事でしたが、当然兄君たちも白兎を見つけられました。兄君たちは哀れなウサギの姿を見て意地悪をされます。海で潮浴みをして風に吹かれなさいとおっしゃったのです。ウサギは言われた通りに・・・・・結果はお分かりですよね。潮がしみてひりひり、風で乾燥してひりひりピリピリ。あまりの痛さに泣いておりました。そこへオオクニヌシがやって来られたのです。オオクニヌシはそもそもどうして皮をむかれたのかもお聞きになりました。ウサギは海を渡るためにワニをだましたのです。それを渡っている最中に手柄話のようにしゃべってしまい、ワニの怒りに触れました。そして皮をはがれてしまったのです。まあウサギは大物ではなかったのでしょう。殺されることは免れました。オオクニヌシはワニをだました行為をお諭しになり、川に行って真水で身を洗ってそれからガマの穂を集めて包ってじっと休んでいれば元通りになるだろうと優しく教えて下さいました。こういう情け深いオオクニヌシの物語です。上記(うえつぶみ)と呼ばれる古書がありますが、それは大体オオクニヌシの故事で、医療や薬草についての記事で埋められています。オオクニヌシは今でも医療の神様です。

私たちはオオクニヌシと聞くと、こういう優しい神様をおもいうかべるようにインプットされて暮らしてきた国民です。自分のお手本にしてきました。そういう物語を記憶からなくすということは、本当に不幸せだと思います。我が子に、我が孫に聞かせてあげてください。その後オオクニヌシがどうなったのかというと、ヤガミ姫への兄君の求婚はことごとく拒否されて、オオクニヌシと結婚すると言われてしまいました。怒った兄君たちは策略を巡らせてオオクニヌシを二度殺害します。しかし母君の嘆願により神々の力で二度生き返ります。そして兄君の手の届かないところへ行かれますが、それがどこかと言うと、スサノオノミコトのところだとなっています。オオクニヌシはスサノオの第五世だったか七世だったかと思いますが、なんとスサノオノミコトのところでジャックと豆の木のような物語を展開して、スサノオの愛娘スセリビメと結婚して、出雲の王となられました。このお話は随想古事記にも記事にしています。

 

因幡の白兎が象徴するもの、ワニが象徴するもの・・・・・これについても考え深いものがあります。白兎は島で暮らしていました。海の向こうに見える陸に行ってみたいと思ったのです。それで一計を案じて、ワニの仲間がどれくらい多いか数えてやろうと言ったのです。ワニは言われる通り対岸までぎっしり並んで橋を作りました。そしてあと一歩か二歩というところで、得意満面のウサギは我慢ができず自分の本心をばらしてしまいました。私の分類ではウサギは多分牛族、スサノオやオオクニヌシの同族です・・・・・白兎はかわいい子牛だったのか牝牛だったのかもしれません。ワニは日本古来の一族、私がワタツ族と呼んでいる蛇族です。牛族は大陸から渡ってきた一族なのでしょう。日本の昔話には、こうした民族の歴史が顔を出している興味深いお話が、たくさんあると思います。日本の歴史は、多くの部族がヤマト民族に収束していった、世界に稀な私が主張する『錬金』国家の歴史です。昔話はそれを維持するための心の絆を作り出しているのではないかと思います。

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