ウスバシロチョウ Parnassius citrinarius Motschulsky, 1866 は、アゲハチョウ科(Family Papilionidae)ウスバアゲハ亜科(Subfamily Parnassiinae)ウスバアゲハ属(Genus Parnassius)に属するチョウで、鱗粉の量や色に地域変異や個体変異が多く「白化型」「赤化型」「黄色型」「黒化型」等が存在している。
黒化型は、特に日本海側に現れる形質として知られ、過去に富山県と新潟県において黒化傾向の個体を撮影し、「ウスバシロチョウ黒化型」及び「ウスバシロチョウ 半黒化型」として掲載しているが、今回、福島県においてウスバシロチョウの完全黒化型に近い個体(黒化90%以上)を撮影したので紹介したい。
5月25日。早朝から福島県のA地区において探索を開始。A地区は、かつて別のチョウの撮影で訪れたことがあり、周辺環境から生息しているだろうとの予測のもとでの訪問である。午前6時近くになると、広範囲の草地において10数頭のウスバシロチョウが確認できたが、すべてオスばかりで、関東の個体に比べれば黒い部分が多いものの、黒化とは言えない個体ばかりであった。
2時間以上を費やしたが、結局、黒化個体は見つからず、那須高原まで一般道で帰ろうとナビゲーションに従って走行。車窓からは、あちこちでウスバシロチョウの飛翔が見られたが、黒くはない。
その後生息環境的に良さそうな場所があり、車を止めて下車して確認すると、狭い範囲に30頭を超えるであろうウスバシロチョウが飛び交っており、その中に、かなり黒く見える個体が混じっていた。
それら個体は、すべてメスである。そもそもウスバシロチョウの黒化は、羽化した時から黒いわけではなく、交尾を終えたメスが時間の経過と共に黒化するようである。
交尾後のメスは、腹部に、他のオスとの交尾を防ぐため、交尾相手のオスが腹部から出す物質で作った交尾付属物(受胎嚢もしくは交尾嚢)がついているので容易に分かる。交尾後のメスは、飛び回ってヒメジョオンやハルジオンの花で吸蜜するが、吸蜜後は草むらに隠れるように止まって動かない。この地区の黒化個体は、小型のものが多く、前翅長は25mmほどしかない。また、黒化傾向の個体から、完全に黒化した個体も見られた。
以下には、ウスバシロチョウの不完全黒化型と黒化傾向の個体、また比較のために、ノーマルタイプと言える関東の個体の写真を掲載した。
参考:ウスバシロチョウ
お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。
ウスバシロチョウ(不完全黒化型/黒化90%以上)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:37)
ウスバシロチョウ(不完全黒化型/黒化90%以上)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:37)
ウスバシロチョウ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:35)
ウスバシロチョウ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:27)
ウスバシロチョウ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:08)
ウスバシロチョウ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:08)
ウスバシロチョウ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:08)
ウスバシロチョウ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:07)
ウスバシロチョウ(福島A地区)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 250(撮影地:福島県 2019.5.25 9:24)
ウスバシロチョウ(福島A地区)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 320(撮影地:福島県 2019.5.25 5:50)
ウスバシロチョウ(福島A地区)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(撮影地:福島県 2019.5.25 5:57)
ウスバシロチョウ(福島A地区)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 7:42)
ウスバシロチョウ(福島)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:福島県 2019.5.25 9:22)
ウスバシロチョウ(関東)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 320(撮影地:東京都 2011.5.05)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2019 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.