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ベランダに隣のおばあちゃんが閉じ込められた。
夕方家に帰るとなにやら周りの人達が上を見上げている。例外なく自分も上を見上げてみると、自宅の隣のベランダからおばあちゃんが険しい表情で顔をつき出している。
ベランダに閉じ込められた。
その状況だけは分かったけれど、なんでかはわからない。親族間の争いで、お爺ちゃんが暴挙に出たのかもしれない。嫁姑争いで、腹いせに追い出したのかもしれない。とにかく、そんなことに関わって休みの時間を潰したくない、仲裁に入ってなだめるだけの辛抱も持ち合わせていないし、めんどくさそうで、関わりたくなかった。しかし、私に向かって、お爺ちゃんに電話をして下さいとお願いしてくる。たくさんいるのに、他にもたくさんいると言うのに…。
隣の住人であることを明かし、いまそっちに向かうと伝える。内心勘弁してくれと思いながら。思いきって、どうしてそこに閉じ込められているのか、と、聞いてみることにした。
子どもが内から鍵をかけてしまった。
そお言えば小さな赤ちゃんが居る家で、洗濯物を干しているうちに、意味もわからず鍵を上げてしまったのか。部屋につくと、廊下側の窓が空いていて、子どもが泣き叫んでいるのが鉄格子越しに見えた。一歳にも満たない赤ちゃんが汗だくで泣き続けている。ただ事ではない空気に、やっと気づいて動き出す。嫁さんは管理会社に、わたしは隣のベランダからおばあちゃんと話して旦那さんに電話をする。しかし、管理会社は時間がかかるし旦那は出ない。玄関の鍵はどこにあるのかと質問をする。どこか外からとれるところに隠していたりしないのか期待してみたけれど、バックに入れたままだという。赤ちゃんが疲れてきているのが問題で、おばあちゃん曰く、熱もあるらしい。これはガラスを割ろうかとも考えた。赤ちゃんに開け方を教えようとも考えたけれど、異様な空気感にただただ泣くばかりだった。
おばあちゃんには、今管理会社に連絡しているから大丈夫と言いながらも何か手はないかと考える。バックはどこにあるのかと聞くと、部屋の真ん中にあるという。確かにある。
一度もタマンをつり上げていないタマン竿がある。タマン竿は引きの強い大型魚を釣るための竿なので、強くて長い。これなら行けると錆び付いたタマン竿でカバンを手繰り寄せる。意図も簡単にバックは窓の鉄格子のところまできた。急いで鍵を開けて嫁さんが子どもを抱えて、窓から離しておばあちゃんを中にも入れる。
赤ちゃんをダッコしたおばあちゃんはウォンウォン泣いておりました。
子育てって大変だなと思います。
タマン竿はいつ目標を果たせるのかとも思います。
いいことをしたので、気持ちがいい。
日記を書こうと思った。
良いことがあって向かい合う場所じゃなかったのにな。