神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

七滝八壷・和佐羅滝

2009年12月03日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡東吉野村大又


和佐羅滝の名は殆どの地図に記載されているので、昔から名前だけは馴染みがあった。ネットで検索しても多数の記事がヒットするので、どんな滝であるかを知るのは苦労しない。
行ってみようか、と思いつつ、特に惹かれるほどでもない。何かもう一押し、と辺りを調べて見ると、七滝八壷というのがある。
こちらは最近よく目にするようになった名称で、比較的新しい命名ではないかと思うが、「平成の名水100選」に選ばれたことから、今では和佐羅滝より知名度が高いかも知れない。
これも是非とも見てみたいと思わせられるほどでは無かったけれど、二ヶ所セットなら、と思い、行ってみることにした。

吉野川の支流である高見川に入り、更に支流の四郷川を遡る。高見川と四郷川の合流点付近には丹生川上中社があのるで、神社好きの方は立ち寄られると良いと思う。
神社好きである筈の私は何故か素通りし、四郷川からやがて大又川へと名を変えた山深いところまで進む。
和佐羅滝も七滝八壷も、大又川へと注ぐ支流に懸かる滝で、まずは上流側の支流にある七滝八壷を訪ねることにする。





支流への入り口には看板もあって、大又川を対岸へと渡る立派な吊橋もある。
これは最初の滝。
ここから左岸についている遊歩道を登って上流へ向かう。



僅かな距離で、前方に数段になって落ちる滝が見えてくる。
七滝八壷と言うからには、七つの滝と八つの滝壺ということなのだろうが、恐らくは一つの段差で一個の滝ということなのだろう。
明確に数えるのは判断に迷うところだけれど、前方に見えている滝は四つと考えるべきなのか。



あまり惹かれる滝姿ではないが、「平成の名水100選」ということなので、さっそく口に含んでみる。なかなかに美味しい水だと思う。
飲み終えて、ふと、中ほどの滝に目が行く。そこだけ切り取れば、いい表情になりそうだと思い、斜面を登って近づいてみる。





思った通りに素敵な表情だ。
杉の木が一本あることで、なんとなく「和」の趣が感じられるし、暗がりに輝く様は幽玄でもある。
それにしても、この一連の落差が四つの滝だとして、最初の滝も合わせると五つということになる。あとの二つはどうなったのか。
実は最初の滝からここに来る途中にも滝があるのだが、遊歩道はそれを素通りするような形でつけられている。
来た道を戻り、その滝の撮影に挑戦してみようと思う。



遊歩道から足下に見えている滝へと降りる。
急斜面で木に掴まりながらではあるが、同じようなことを考える人はいるもので、僅かに踏跡がついている。
それにしても、落差は小さいものの滝らしい滝で、素通りするのは勿体無い。
これは二段だから二つと考えれば、合計で七つということになる。壷が八つあったかどうかは判らないけれど・・・。





よく見れば、一段目と二段目の間の岩には穴が開いている。それほど深くはないようだが面白い。
イワタバコも咲いていて雰囲気も悪くない滝なのに、ネット上でもこの滝が掲載されていることは殆ど無く、不遇の滝である。

さて、次は大又川を2キロほど下流へ戻り、和佐羅滝の懸かる支流を遡る。
こちらは七滝八壷と違い、やや長い距離を歩く。
しかも思っていた以上に厳しい登りで、運動不足の私は何度か足を止めて呼吸を整えねばならない。
ただ、それだけ勾配があるということで、左手の足下を流れる谷川は、流れそのものが滝であるように段差を連ねている。
もう少し水際に道がついていれば、それらの中にも被写体になるような滝もありそうだが、険しいので安易に近付けない。
やがて道はさらに険しくなり、少し高巻いてから和佐羅滝の前へと出る。


ぱっ、と眼前が開けるような感じで、高みから風を伴って水飛沫が落ちてくる。
それでいて、豊かな緑に包まれていて、よく大きな滝で見かける明るすぎる風景でないのがいい。



モミジが多く、紅葉の頃はさぞかし美しいだろう。





水飛沫が凄くて、近付いてじっくり撮ることは出来なかったけれど、予想していたよりずっといい滝であった。
道のりのしんどさも予想以上だったが・・・。


2万5千分1地形図 大豆生(七滝八壷)
                 (和佐羅滝) 
撮影日時 090730 13時20分~14時50分

駐車場 それぞれ滝の懸かる支流への入り口付近で道が少し広くなっている。
地図 (七滝八壷)
    (和佐羅滝)

 


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15 コメント

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Unknown (幽黙)
2009-12-03 14:52:36
美しい
美しいですね
写真というのは
風景を切り取る行為なのですが
hiro1jzさんの風景の
切り取り方って
見ている方も
納得してしまう切り取り方なので
ほっとする感じもあるんですよね
それにしても
水飛沫が飛んできそうで
暖かい日が続いているとはいえ
12月に見ると
ちょっと寒いです(笑)
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Unknown (Jun)
2009-12-03 22:07:38
美しい滝群ですね。
緑も綺麗です。
楓があるそうですが、日当たりは良いのでしょうか?
日当たりの良くない滝は楓が良い形で生えていても色づかないみたいです。独鈷の滝の楓がそんな感じで、周囲は紅葉しているのに滝壺周辺は青々としていました。
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おっ (era)
2009-12-03 22:36:56
hiro1jzさんワールドですね。相変わらず水の写真
は絶品ですね。とくに三枚目と十枚目は絶品。
それに丹生川上中社をスルーはhiro1jzさんらしい。

山神社頼みますね。そんなに広くない境内でしたが
良い印象ばかりでしたよ。
因幡も楽しみにしています。hiro1jzさんの写真
見てから行こうか決めますよ。
気合あれば神様に嫌われませんよ。あたしゃ天気
悪いと神社で怒鳴りますよ。でも罰あたってない
ですしね。

青が散るです。これは小説もドラマも爽やかな
印象ありますよ。未だに根強いファンが多いそう
ですよ。
春樹さんは主人公に感情移入できなくて苦手なん
ですよね。春樹さんの翻訳したチャンドラーは
読んでみたいんですけどね。

お~湖東ですね。何処に行ったんでしょ。想像
するだけで楽しみです。また気合の入った写真
待ってますよ。
ありがとうございます。月に二回キャバクラに
行ける・・・でも神社行って終わりですね。
トホホ。
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Unknown (hiro1jz)
2009-12-05 09:51:07
>幽黙さん
七滝八壷は多くのサイトで紹介されていますが、
滝としての存在感は地味で、
あまり高い評価は受けていないんです。
でも、自分なりにその良さが見出せた気がします。
基本的には奇抜な構図は好みませんし、
近寄ったり離れたり右に寄ったり左に寄ったり、
構図は切り取り方だけでなく、足で見つけるもの、
という思いがありますので、
そういった点が良い方に出ているのなら嬉しいです。
季節外れは今後も出てきます。ご容赦を(笑


>Junさん
日陰ではモミジの色付きは10日~半月ほども遅くなります。
これは日当たりだけでなく、上に遮蔽物があるかどうかも影響するようです。
モミジの上を常緑樹の葉が覆っていたりする場合はかなり色付きは遅いですが、
日陰でもそういった遮蔽物がなければそれなりに早く色付きます。
逆に、日当たりが良くても軒下などでは遅くなったりします。
日光だけでなく、霜や夜露、空気の流れなどが影響するのかも知れません。
樹林下のモミジが多い場所、開放的なモミジが多い場所をそれぞれ把握しておくと、
同じ地域で長く紅葉が楽しめます。
もっともこれは、私の経験上の考えですし、
木々の個体差などもあって、一概には言えませんが・・・。


>eraさん
丹生川上中社はよろうかとも思ったのですが、
夏休み期間中ということもあって、
現地にそれなりに人がいたのでパスしました。
3枚目も10枚目も全体像ですね。
eraさんは部分を切り取るより画面に全体が収まっている構図がお好き?

天気の悪さを文句言ったんですか!?
すごいなぁ(笑
但馬も神社そのもので居心地の悪さを感じるわけじゃないので、
実際のところ何が原因なのか・・・。
なんとなく頭では判るような気はするんですが、上手く言葉で説明できません。
たぶん、因幡は大丈夫だと思います。
根拠はありませんが、これもなんとなく判ります。

ああ、青が散るもドラマ化されてましたね。
高校生の時に青が散るを読んで、
それがきっかけで宮本輝にはまったくらいなんで大好きな作品です。
原作のイメージが壊れるのを心配してドラマは見ませんでしたが。
爽やかさもありますが、胸が掻き毟られるようなせつなさもありましたし、
スポーツをあれだけの緊迫感を持たせて文字だけで表現してくれた作品は少ないのではと思います。
村上春樹は登場人物の体温が希薄な感じがします。
なんとなく、生の声が感じられないというか。
そのへんが感情移入しにくいところかもです。

田村神社があんなにモミジが多いとは・・・。
あと一週間早く行っていれば、それと朝一を狙っていればと、ちょっと後悔。
行ったのは4社のみで、そのうちほぼ無名のところは1社だけです。
まあこのご時世、給料増えるのはいいことです。



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和佐羅滝 (uzi)
2009-12-06 05:31:58
この二つの滝は、10年位前丹生川上神社中社に参拝した時に寄り道しました。
地図に名前が出ていたので、ついフラッと。
和佐羅滝は、登りがきつかったので、滝が目の前に現れた時は感動しました。
滝といえば、那智、箕面、赤目、華厳、称名ぐらいしか知りませんでしたから。
紅葉のシーズンで美しかったですよ。
写真は失敗。(笑)

田村神社、11月初めに参拝しました。
本殿の周りが水に囲まれていました。
田村川の水を引き込んだって感じでしょうか。
水辺は公園のような雰囲気がしましたが。
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おかえりなさい (era)
2009-12-06 20:13:10
湖東の掲載いまから楽しみにしていますね。
田村神社が、そんな感じでしたか!あそこは人が
多いから朝とか狙わないと写真の意欲減退します
よね。
そうですね全体がわかる写真が好みですよ。
幽黙さんの生き物・狛犬ドアップ写真も好きです
が基本は全体を少し引いて撮った写真が好みです。

イエス怒鳴ります。たいがい天気良くなります。
そのせいか一日雨の参拝って今年はなかった記憶
ありますよ。
え~但馬が駄目な理由なんとなくわかるんですか!
気になりますね。
例えば諏訪の系列が苦手とか聞いたことあるんで
すが国レベルでは面白いですね。
因幡は安心しましたぁ。

青が散るは名作ですよね。なんとも青春としか言い
ようがないですよね。いろんな要素が詰まってい
ますよね。ドラマは主人公はイメージに合うと思う
人が多いんじゃないかな?ヒロインは当時から合わ
ないって言う人が多かったですよ。
確かに原作が好きで映像を避けるは、ありですよ
ね。自分は指輪物語をなかなか見なかったですよ。
春樹さんは同感。でも上手ですよね。
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Unknown (hiro1jz)
2009-12-07 08:44:02
>uziさん
おお、どちらも行かれてましたか。
しかし和佐羅はフラッと立ち寄るにはかなりキツイですよね。
私、途中で何度か引き返そうかと思いました(笑
紅葉はやはり美しいですか。
一度、uziさんが撮られた滝の写真というのも見てみたいです。

私も今回田村に行くまでは参道しか記憶に無かったんですが、
本殿周り、あんなふうになってたんですね。
参道以外にも森の中のあちこちに小道がありまして、
それらを歩くのがとても気持ちよく、
やや人の手の入りすぎた感のある神社の雰囲気とは対照的に、
凄く落ち着ける深い森の雰囲気が味わえました。


>eraさん
参拝客はそれほど多くは無かったんですが、
あのくらいの規模になると、そっち方面で濃い感じの人に出会います(笑
全体を写すのは難しいです。
目障りなものが入りやすいし、色調も破綻しやすいし、
説明写真になりやすい、といったことで、
いつも必ず全体写真は撮るものの、失敗作になることが多いです。
もっと腕を磨かないと・・・。

うーん、案外、強気で願った方がご利益があるんでしょうか(笑
但馬といっても広いですから、地域によって差はあると思うんですが、
神社巡りをする前から、どうも合わなかったんですよねぇ。
どの地域に行っても心からは落ち着けないというか・・・。
それでも魅力的な神社が多いですから、
また行かねばとは思うんですが・・・。

青が散るって、あのヒロインが凄く重要じゃないですか。
あれが合わないと困りますねぇ。
腹も立つけど、とても魅力的だし、ああいう女性に男は翻弄されちゃうと思います。
指輪物語は読んでないです。
ロード・オブ・ザ・リングも見てないですが、
あの手の作品って、より読者の想像力によって
脳内で描かれる部分が多いですから、
原作好きなら映像を見るのは怖いですね。
村上春樹は、時々「はっ」とするほど上手い表現をされますね。
作風もそうですが、読後感も独特の印象があります。
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Unknown (幽黙)
2009-12-07 23:18:23
村上春樹
エルサレム賞につづいて
スペイン芸術文学賞になりましたね
ただ個人的には
村上春樹
何がいいのかわかんないんです(爆)
村上龍の方がいいかな
今個人的にはまっている作家さんって
飯嶋尚一と山本一力の二人ですね
他にも好きな作家さんはいっぱいいますけどね
京極夏彦に夢枕獏に畠中恵なんてあたりから
宮城谷昌光に出久根達朗に綱淵謙錠とか
熊谷達也に伊坂幸太郎とかとか
今期待しているのが高田郁
テッパンの浅田次郎(笑)
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Unknown (hiro1jz)
2009-12-08 12:48:53
幽黙さんの読書量は凄そうですよねぇ。
私が最も本を読んだのは高校時代でして、
当時は週に三冊くらいでしたが、
今は週に一冊くらいしか読みません。
しかも過去に読んだものを読み直すことが多く、
新規開拓は全然してないです。
あ、春樹さん、お好みじゃないですか。
私は3冊くらいしか読んでないですが、
惹かれる要素はありました。
ただ、あそこまで評価されるのは不思議な気はします。
京極夏彦と夢枕獏は読んでみたいと思ってますが、
時代小説系は苦手なんですよね。
って読まず嫌いなところがありますが(笑
あ、熊谷達也も興味深いなぁ。
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Unknown (幽黙)
2009-12-08 19:14:43
愚生が一番読んでいた頃は
1日で3~5冊くらいです(爆)
よく斜め読みか?と聞かれるんですが
普通に全部読んでました
一時期自宅の本の冊数が万を超えていたので
半端じゃない量を処分したこともあります
でも今でも本棚が6つ満杯だから…
もっとも今じゃトータルして
週に一冊も読まないかなぁって…
というか波が激しいんですね
あるときは1日1冊くらい読むし
ないときは1カ月まったく読まないときも…(ヒドイ)
今日
畠中恵と高田郁という期待の女流が2冊
新刊で出ていたので買ってしまいました
2冊1日でOKくらいの量ですね
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