犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

坂東眞理子著 『女性の品格』

2007-08-25 12:05:46 | 読書感想文
坂東眞理子著『女性の品格』 と 池田晶子著『14歳からの哲学』 の比較

哲学は、何らかの人生訓と混同されることが多い。このような混同の上で哲学の文章を読んでしまうと、押し付けがましいお説教にしか聞こえなくなる。哲学の文章は、読む側に考えさせることを促す形で書かれており、その点において最初から人生訓を目指して書かれた本とは異質である。この質の差については、次のような例で比較してみればわかりやすい。ここで、両者のどちらに説得力を感じるかの差は、そのまま哲学の資質の差を測る試金石になる。


『女性の品格』 51ページ~
早口の人はせっかちでゆとりがない人と思われます。せっかちな人は自分でも意識してスピードダウンして、間を取りながら話すようにしましょう。相手の反応を見ながら分かりやすく話す余裕が、安定した穏やかな人格を感じさせるのです。

『14歳からの哲学』 24ページ~
君は毎日友だちや家族と話をする。言葉を話すと、どうして相手に通じるのだろうか。なるほど、何を言っているのかさっぱりわからないという気持ちになることも、たくさんある。でも、面白いと思わないか。そのとき君は、その「わからない」ということは、わかるわけだ。どうしてわからないということがわかるのだろう。


『女性の品格』 86ページ~
「女性は美しくないと軽んじられる」と旧前田侯爵家に生まれた酒井美意子さんが母上の教えとしてお書きになっていました。それを読んだ頃の私は「外見より中身が重要」と信じていたので、ショックを受けた記憶があります。私は美人ではないから、中味を磨くのだと思っていたからです。

『14歳からの哲学』 32ページ~
「美しい」という言葉の意味は、目には見えない。「美しいもの」と聞いて、君は、美しい花や美しい景色、美しい音楽などを思い浮かべることができるけれども、それなら、そこから花や景色や音楽を取り去って、「美しい」だけを思い浮かべることができるだろうか。「美しさ」そのものだけを、見える物や聞こえる物として思い浮かべることができるだろうか。


『女性の品格』 170ページ~
自分の段取りが悪くて仕事がはかどらないのかもしれません。仕事の進行表を作ってまず何から手をつけるか決めましょう。優先順位の高いこと、重要なことからはじめて、あとは時間があったときに回すように仕分けすると、精神衛生はかなりよくなります。忙しがっている人のうちかなりの人は、重要ではない仕事に時間を割き、重要なことをする時間がなくなって忙しがっているのです。

『14歳からの哲学』 113ページ~
本当は自分で生きたくて生きているのに、人のせいみたいに「生きなければならない」と思っているのだから、生きている限り何もかもが人のせいみたいになるのは当然だ。生きるためには、食べなければならない、食べるためには、稼がなければならない、そのためには仕事をしなければならない、この「しなければならない」の繰り返しが、大人の言うとろの「生活」だ。しなければならなくてする生活、生きなければならなくて生きる人生なんか、どうして楽しいものであるだろう。