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高月町や木之本町の観音堂は「観音の里ふるさとまつり」(令和2年・3年コロナ渦で中止)で拝観する機会はあるものの、余呉町の寺院は予約拝観が必要となります。
令和元年8月に4つの寺院・観音堂が公開された「「丹生谷文化財フェスタ」」では普段拝観することの出来ない仏像に出会える貴重な機会でしたので、丹生谷にはとてもいい印象が残っています。
丹生谷とは「下丹生」「上丹生」「菅並」の集落のことをいい、余呉町東部の山間部に点在する集落の総称となります。
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現在、余呉谷の最奥は「菅並」集落となっていますが、かつては菅並集落より奥に「針川」「尾羽梨」「奥川並」「鷲見」「田戸「「小原」などの集落があったといいます。
奥地ゆえに離村された村もあるようですが、いくつかの村は「丹生ダム」建設のために住民方々は移転して村は廃村となったといいます。
「丹生ダム」は諸々の意見や当時の嘉田滋賀県知事が“もったいない”を合言葉に新幹線新駅やダム計画の見直しをしたこともあって、2016年に建設自体が中止となりました。
ダム建設計画の調印が行われたのは1984年といいますから、実に32年をかけて結論に達したという結果からは、一度スタートしたダム事業を止めることの困難さが浮き彫りになった事例の一つです。
その結果、現在は最奥の集落になった「菅並」集落には「六所神社」があり、再訪致しました。
朱色の妙理橋を渡るとすぐの場所にあり、「東林寺(菅並観音堂)」は同じ境内にある神と観音の神仏習合寺院です。
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「六所神社」は、「伊弉諾尊」「大己漬命」「大山祇命」「菊理姫命」「金峰大神」「菅原道真公」の六柱を御祭神として祀り、境内社に「龍神社」を祀りするという。
神社のすぐ横には高時川が流れており、神社の御由緒によれば、“社の下の高時川に大蛇が住み、通行人に危害を加えるので、熊野より山伏6人当地へ来て留り、大蛇を殺した。”とある。
この由緒により「金峰大神」が祀られているのだと推定したが、この神社でも「菅原道真公」をお祀りしていて余呉の道真公信仰の強さが伺われる。
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「六所神社」の鳥居は、両部鳥居の形となっており、この形の鳥居は湖北ではたまに見かける型式です。
近くにキャンプ場もある明るい雰囲気の集落ですが、鳥居を抜けて一歩境内に入るとスギの樹が鬱蒼として茂り、厳粛な空間が広がる。
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鳥居のすぐ横には「野之神」が祀られている。
湖北の野神さんをかなり見てきましたが、菅並集落の野神さんは独特の迫力があり、“神聖な場所を犯すべからず”といった威圧感があります。
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野之神の両方の樹の迫力もありますが、御神体として祀られるいくつかの石に霊的なものさえ感じてしまいます。
石の横には紙垂が付けられたお祓い棒があり、PE袋に入れて保管されているのは、必要な時に新しい幣を準備しなくてもよいようにするためかと思います。
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拝殿の前にあったスギが一番大きかったかと思いますが、境内には何本ものスギが植えられ、本殿や後方の山にもそこそこの樹齢の樹が実に多くみられます。
川の水の音とアカショウビンの鳴き声しか聞こえない静寂の神社の境内にいると、心地よさというよりも掴みどころのない怖さのようなものすら感じてしまいます。
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拝殿の奥には本殿。その隣には「聖観世音菩薩立像」や「持國天」「多聞天」ほか数躰の仏像をお祀りする「東林寺(菅並観音堂)」が並びます。
コロナ渦が去って、湖北各地の観音堂が公開される日が待ち遠しくなりますね。
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拝殿の横辺りには「山之神」が祀られている。
神社と観音堂が並ぶ神仏習合であるうえに、「野神さん」「山神さん」が祀られているのは至極素晴らしい。
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「山之神」にはいつの時代の物か灯籠や石仏・石塔の部分などが祀られていて、苔むしているため彫り物の詳細は読み取りづらい分、歳月の長さを感じることができる。
前方の灯籠も少し変わった形をしていますが、「菅並観音堂」の仏像も特徴的な造りとなっていた記憶がありますので、地方独特の信仰形態があったのかもしれません。
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「六所神社」にはもう一カ所祭場があり、神社のお世話にやって来られた方に聞くと、「お礼(御霊?)の神」だとおっしゃります。
六所神社の全ての神さまにお参りして、最後にお参りするのがこの神さまだということです。
“石塔なども昔はもっとたくさんあったのだけど、持っていってしまう人(盗難)がいて、すっかり数が少なくなった。”と嘆いておられます。
また、“高齢化が進んで神社のお世話が出来る人が少なくなってしまい、ほおっておくと荒れてしまうので一週間に一度やってきてお世話をしている。”とのこと。
どの集落でも悩みの種となっている切実な状況についても話を聞かせていただくことができました。
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「野神さん」「山神さん」「お礼の神さん」「拝殿」「本殿」など全ての場所の榊を新しいものに取り替えておられたことから、実に丁寧にお祀りされていることが分かります。
集落の神社や観音堂をどう守っていくのかは、集落の高齢化と価値観の違い等あって、悩ましい問題となってきているようです。
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本殿の左奥へ行くと磐座と思える巨石と注連縄を巻かれた石がある。
苔で覆われていますが、後方の緑の部分は1個の巨石で、山や石に神の姿を感じる自然崇拝の姿がここにあります。
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手前の岩に紙垂を付けた注連縄が巻かれて神社の最奥に祀られていることからすれば、これが六所神社の磐座または奥之院と想定してもよさそうです。
余呉町東部の最奥の集落である菅並には、古くからの信仰の形が今もそのまま残されていると言ってもいいのではないかと思います。
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神社の参拝を終えて集落の中へ入っていくと「余呉型民家」と呼ばれる豪雪地帯特有の民家が並びます。
かつては茅葺屋根だったのだと思いますが、今はトタン屋根に替わっているとはいえ、風情のある集落の風景が続きます。
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「丹生ダム」建設予定地だった集落を見てみたい気もしましたが、道路は通行止めとなって入れなくなっていた。
興味深かったのは菅並を走行していると「北海道トンネル」というトンネルがあったこと。
ダム建設用だったというこのトンネルは「ほっかいどう」ではなく、「きたかいどう」と読むそうです。
「街道」とは書かず「「海道」と表記されるのは、「海道」に古代末から中世初期に新しく開拓された耕地の意味があるからだともいわれる。
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菅並集落から離れると次の集落までは人の暮らした気配のない道が続きますが、途中に「胡桃谷の名水」と呼ばれる名水が出ている場所があります。
山側の道路擁壁がくり抜かれてペットボトルが湧き水の排出口になっていて、うっかりしていると見落としそうな場所にあります。
山の林道や道路をうろうろしていると、こういった名水に出会うことが多いのですが、「胡桃」という字からはクルミ(ナッツ)を想像するより、胡蝶の桃とイメージした方が美味しそうです。
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余呉町を流れる河川には「余呉川」と「高時川」がありますが、穏やかな感じのする余呉川に比べると高時川は勢いや渓谷感は強いと感じます。
清流のカエルの声があちこちから聞こえてきて、水音に解け合いながら、山からは野鳥の声。
当方は経験はないけど、キャンプしながら渓流釣りなんて趣味があったら楽しいでしょうね。
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