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湖東「高野神社の勧請縄(トリクグラズ)」~東近江市永源寺高野町~

2021-03-08 05:38:24 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 東近江市永源寺高野町は、臨済宗永源寺派の大本山「永源寺」の所在地になっており、山の麓沿いにある「高野神社」には勧請縄(トロクグラズ)が吊るされています。
「高野神社」の近くには織田信長の八男・信吉が本能寺の変の後に館を構えたという「高野城跡」も残る静かな山村です。

「高野神社」の由緒ははっきりしないようですが、地元の方の話だと「嘉禄(1227年)」の記録があるとのことでしたので、古くからの信仰を集めていた神社といえます。
神社の本殿には「日枝四社之神」「歌姫五社之神」「高皇産霊尊」「天御中主尊」「神皇産霊尊」「野神大明神」「豊満五社之神」「南三方大将神」と数多くの神が祀られています。



また、「東小宮」に3柱、「西小宮」にも3柱、さらに「豊魂神社」が山を背に横並びになって祀られています。
神社には鳥居がいくつかあり、一之鳥居から三之鳥居まで結構距離があるので、神域とされる場所がかなり広かったことが伺われます。

スギが植林された石段は苔むしており、林道が通っていることもあって石段を登って参拝される方は少ないのかもしれません。
何とも雰囲気のある石段を登っていくと、3月初旬にも関わらず山の方からウグイスの囀りが聞こえてきて、もう春かと季節感を感じます。



緩やかな石段を登っっていくと、石段の上に勧請縄を張られているのが見えてきました。
静かで自然の囲まれた山の神社で見る勧請縄は、集落の道切りの勧請縄と受ける印象が少し異なります。



大繩の中心には四角いトリクグラズが吊るされ、このトリクグラズも集落独特のものです。
この日は、神社で月例祭が行われていましたので、地元の人に話を聞かせていただくことができました。

正月の3日には、集落の方が神主役を務めて「かりない しょうじき」と祝詞をあげながらトリクグラズに矢を通す儀式があるのだそうです。
正規の神主さんがおられないので、神主役は集落の人が務めるとのことでしたが、段々とやる人が少なくなってきて、隣の集落ではもう取り止めてしまったとか。

かつては大繩も結っていたが、現在は業者に作ってもらった大繩を使用しており、トリクグラズだけは今も手造りで行っている。
以前は稲穂も吊るしていたが、省略した形をなっているとのこと。
昔は林業で生計を立てていた集落だったとのことでしたが、今は随分と様変わりしたと言われます。



トリクグラズは割った竹で四角を造り、中心に輪が付けられており、藁と榊が吊るされています。
勧請縄の下にいると雨が降ってくるのですが、離れると雨が止む、また下に入ると雨が降る...。





勧請縄を張っている勧請樹の横の樹には、大きな洞があり、その中に何枚もの祈祷札が納められています。
地元の方が正月の儀式の時に納められたのかと思われますが、この洞は本殿や山の方向にあり祈祷札もそちらに向けられている。



勧請縄が張られている場所から本堂へと向かう途中には朱色の鳥居があり、ここからが神社の聖域となる。
この日は月例祭で人が来られていたのですんなり入れましたが、普段は獣除けの柵で閉ざされているようでもありました。
この鳥居は三之鳥居と思われますが、鳥居を抜けると山村の神社としてはかなり立派な神社だったことに驚きます。



参道の横には「忌明けの塔」と名付けられた宝篋印塔があり、欠損や修復の跡が見られるものの、時代はかなり経っているように思えます。
塔の下に土台を作られていますので、地元で丁寧にお祀りされているようです。



「本殿」「東小宮」「西小宮」に参拝している時に、誰か知らない人が来ていると社務所におられた方が様子を見に来られました。
勧請縄を見に来て参拝している旨を伝えると、神社や勧請縄にまつわる話をいろいろと聞かせてもらうことが出来たのは助かりました。



本殿の前には阿吽の狛犬があり、特に子供の狛犬を従えた阿形はなかなか迫力があります。石灯籠の丸い笠も特徴的です。
聞くと、ここには元々イチョウの樹があったが根が張りすぎて狛犬が傾いてしまったので伐採して狛犬の下台を直したとのこと。
神社や寺院にイチョウが植えられているのは、イチョウが神聖な樹であるとともに燃えにくいために防火の役目を果たすからなのだそうです。



高野神社には巨樹スギが2本あって、1本は勧請縄の近くにあるスギでもう1本は境内にある御神木のスギです。
環境省の「巨樹・巨木林データベース」に登録されている樹だとすると、幹周3.8~3.9m、樹高32~33m、樹齢300年以上となるが、確証はない。
ただ目視で幹周4mくらいかと思えたので、御神木も勧請縄の所のスギもそのクラスのスギだと思います。





境内社の「豊魂神社」の社の後方には「山の神」が祀られています。
鈴鹿山系は多賀町から日野町や甲賀にかけて続き、東は三重県にまたがる山系で、高野町はその麓にある集落ですから山の神への信仰が強かったのだと思います。



「山の神」を祀り、本殿には「野神大明神」を祀る高野神社の本祭礼に来られる神職の方の名字が“野神さん”というというのも興味深い話です。
山の神・野の神を祀り、悪いものの侵入を防ぐ勧請縄を張り、この地には古くからの信仰や文化が守られているようです。



ところで、神社におられた方にこの近くに勧請縄があるところを御存じないですか?と聞くと、隣村はもうないし、あるかどうか分からないが...と別の神社を紹介していただけました。
勧請縄はあちこちにあるだろう?と聞かれたので、湖東地方や湖南地方にはありますが湖北地方や湖西地方(大津は除く)にはないんですと答えると...
へぇ~それは知らなかったと驚いておられたのが印象に残ります。



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