超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

マッドサイエンティストの考察

2017-04-05 22:42:34 | 出来事
「水素水で健康セミナー」編で紹介した電解水素水製造装置、その場のノリで購入契約してしまった人もいた(私も半ばその気にはなっていた)が、「まずはオフィスに入れろ」という指令の元に総務のヒコさんが早速ビルオーナーと折衝し、給湯室への工事許可を得た。絶大な人気を誇る製造機(ホントか?)らしく、取付け工事までに1ヶ月も待たされると聞いたが、先日堂々と稼動を開始した。と言っても、パッと見何の装置か分からないほど地味で(つまりコンパクトでよいのだが)、しかも使い方が素晴らしくシンプルなので逆にありがたみが沸かないほどである。何せ元は水道の水だから(会社の施設だし)じゃぶじゃぶに使用しても気兼ねはいらないのである。(ちょっと良心が痛んだが)濃度が何段階か設定でき、「始めから最高レベルにするとお腹をこわすこともある」と警告されたらしく、一応真ん中レベルにされていた。むろんそんなことを気にも留めない私は自分の時はいつも最高レベルに変えて採集していた。

週末のプレミアムフライデー、早引けしてオフィス近くの公園で花見を企んでいたのだが、低温日が続いて開花が進まない上にまさかの雨模様・・・仕方がないので近所の場末っぽい中華屋の2階を貸し切り辛うじて正面に見える花を眺めながら過ごしたのだった。以前はよく職場で使わせてもらったという店の主人は気さくなもので、電話をしたら「17時までは休憩時間だが、これから店を開けるので2階を好きなように使ってよい」ということだったのだ。私は持参した大型ポットを取り出して水素水をたっぷり貯め込み「今日はこれで焼酎割って飲もうぜ」とプレミアムタイムになったらさっさとお店に向かった。勝手に窓際にテーブルを移動し、わずかしか咲いていないが正面に見えるように椅子を並べてしばらくビールで喉を潤した後、「部屋の飲み物は自由に飲んでよい」(むろん有料)というから焼酎を引っ張り出してきて、電解水素水割りにしてぐびぐび飲みだした。

「何か、いつもより酔いが回らないような気がするぞ」とグラスを口にしたドクさんが一番いい気分になっていたようだった・・・「しかし、これホントに効くんかな。昨日持って帰った水素水で早速米を炊いたんだけど、何か炊き立ての米が輝いていた気がするんだ」野菜もこの水で洗ってから食べると新鮮さが損なわれずに美味しいままと言う。せっかく導入したこの水素水の効能をどうやって証明するか。水素水割り焼酎では絶対無理だとは思ったが、めいめい思いついたところを語りだした。「この水で料理したくらいじゃ、分からんだろうな」「皮を剥いたりんごを浸けておくと黒くならないと聞きました」「いっそのこと植物の栽培に使ったらどうかな。オレんちの庭のニラに使ってみようかな」私が思いつくと「ウチもカイワレ大根に使ってみよう」さらにワル乗りが進み「動物にはどうかな。鳥かごに水に使ったら?」残念ながら鳥を飼っている人はいなかった。「では魚ではどうだ?」ウナ吉の水槽を思い出しながら口にすると「ウチ、金魚飼ってますけど、死んじゃったら戻らないし・・・」「いや、死んじゃうどころか倍の大きさに成長するかもしえねえぞ」好き勝手なことを言うものである。

私はそんな話を聞きながら、セミナー時に自分が持参したスポーツクラブの高濃度水素水が試薬で着色したオキシドール溶液の還元に全く反応しなかったことを思い出していた。そして本体装置のおまけにPH検査試薬も入っていたことを。。。「どうもオレの水素水が反応なかったことが引っ掛かってるんだよな。ちょっと休みに調べて、結果を実際にやって見せるよ」我が社は新年度のスタートに事業計画の説明会と懇親会を予定していた。キックオフ好きの我が社だが、発足して1年足らずの我がセクションはイマイチ周囲に遠慮があるのか、営業ラインのように「お祭り」のように弾ける盛り上がりが少ないので、「何か面白いことやろうぜ」とかましておいたのである。

私は週末に家に引きこもって、ひたすらネットをリサーチした。水素水の製法の種類、濃度の違い、効能に関する実験結果、考察など割とアカデミックな記事から、口コミ、やブログ、商品PRまで数え切れないほど情報が溢れかえっていた。さらに今回導入した電解水素水製造機のメーカー情報やその製品に関する投稿記事、評判などもできるだけたくさん読み込んだ。私にはほとんどない休日の過ごし方だが、つくづくインターネットとはすごいと感じた。それらしい連鎖する情報が限りなくあり、一般は文責を気にせず好き勝手なことを書いているので、よほど注意して取捨選択しないとどれがホントでどれがウソなのか見失ってしまう。あっという間に時間だけが過ぎていく。まだまだ証拠が足りないがきりが無いので半日費やして調べて出した結論は「どうも水素水の水素そのものの効果ではなさそうだ」ということである。

まず巷にある水素水サーバや市販のボトルだが、どれも違わずにうたっているのは「活性酸素を中和する」というものだ。しかしこれにはネット上でも「十分に効果がある」という説と「効果は見られない」という説があって具体的にどういうメカニズムなのか分かっていないようだ。運動やストレス、また喫煙や食物にあるよくない物質によって体内に活性酸素が発生するのは間違いない。ただ経口水で水素を取り入れたからと言って「これと反応し水が生成される」という単純な話でもないらしい。最初に目をつけたのがこの時発生する反応熱だが、高校物理で習った結合エネルギーと化学反応式、そしてパンフレットにある200mlの水素水に含まれる水素分子の数から計算すると(合ってればの話だけど)1日2リットル飲んで全ての水素が反応したとしても3カロリーくらいにしかならない。「体内で猛烈な発熱があって、内臓が損傷・・・」という仮説は否定的となった。

ちなみに前回、人が1日吸い込む酸素から体内で発生する活性酸素をどれくらい中和(水を生成)できるか、と計算すると2リットル飲んでも1%未満だった。さらに今回導入した電解水素水製造機の仕様や開発の歴史、そしてオフィシャルな広告をよーく読むと「水素水を使うと」と書いてはあるが、「水素の効果で」とは一言も書いていない。「ご飯がふっくら炊ける」「野菜の汚れがすぐに取れしゃきっとする」「お茶も濃く、風味が増す」そして何よりも焼酎の水素水割りでの実感に基づくとこれらは「アルカリイオン水」であることの効果ではないか?という仮説が立てられた。色々な状況証拠として
・製品にPH試験薬が添付されていること。(水素が溶け込んでいるのではなく、水素イオン濃度に関係している)
・デモでは水素水をペットボトルで平気で保管していたこと(金属でないと水素は抜けてしまうはず)
・水素水を料理用に使用していること(そもそも常温でさえ水素がどんどん抜けてしまうのに、炊飯などに使って意味があるはずがない)

つまり水に溶け込んでいる水素そのものの効果ではなく、水を生成する時に電極から溶け込むミネラル分やアルカリ化による効果と結論づけられるのである。この仮説を添付の試薬を使って様々な方法で実演して見せようと思うに至った。しかし巷に理科の実験で使用するような薬品やお馴染みのリトマス試験紙などどこにも売っておらず、真面目に考察するには材料が貧弱過ぎた。「ま、キックオフなんてお祭りでこんなの余興だからな。ウケ狙いで行くか〜」向かったのは理化学用品をわずかに扱っている東急ハンズではなく、100円ショップ「○イソー」だった。(このあたりでもはや、結末がプアーなものになるのは見えていた)実験用白衣は元々家にあるから、あとはコスプレ系だけか・・・だんだん本来の目的から逸れてきたような気がする。

用意したのは活性酸素水と言われるオキシドール、プチトマト、保存用ミネラルウォーター、水道水、ジムの高濃度水素水、オフィスのアルカリ水素水、そして検査試薬とコップである。前回のデモンストレーションでは色素試薬により真っ黒になったオキシドールを水素水が見事に透明に戻すという演出だったが、どうしても手に入らなかった。PH試薬はリトマス試験紙の代わりで、PH7の中性では緑色、酸性になると黄色、アルカリ性になると青色に変化する。午前中、私は自分のディスプレイの影に隠れ、デスクの上を水でびちゃびちゃにしながら予備試験に勤しんでいた。オキシドールを水で薄め試薬をたらすと黄色に変色、これにアルカリ水素水を加えると青色に変色した。高濃度水素水や水道水、ミネラルウォーターで試しても当然緑色のままである。コップや薬品に限りがあるので、順番や段取りを考えているうちに昼になってしまった。(むろんそういうことをやりながら仕事はちゃんとやっていた)

        

スタッフが用意したびっしり文字の詰まった長〜いプレゼン資料で予定よりも30分近くオーバーし、やっとの思いで説明を終えてキックオフ懇親会に臨んだ。事業年度開始にあたり、それぞれのセクションから趣向を凝らした「決意表明」がなされて中々のこれまでにしては中々の盛り上がりであった。若手や女性スタッフの多い営業系のセクションはこの手の催しに文化的に一日の長があり、いつも煌びやかで楽しそうで羨ましく思っていたのだ。「(まだちょっと吹っ切れてねえな)」と思いつつも皆のアトラクションに惜しみない拍手を送り、器具資材をもって理化学実験用白衣をまとって現れたのだった。
「皆さんこんばんは。マッドサイエンティストのババルウ磯辺です。今日はここ数日間の調査と午前中の(仕事中だけど)予備実験の成果として、『電解水素水の効能について』考察します。」たまたまそばにいた若手の女性社員をアシスタントに指名し、試薬を片手に自説を繰り広げていった。

          

実際この説はかなり信憑性の高いものだと思う。プチトマトを私の水素水とアルカリイオン水素水をつけておくと、アルカリの方が黄色く発色しいかにも農薬や汚れが解け落ちているようにも見える。これを3人に「どちらか分からないように」食べてもらうと美味いかどうは分かれたが3人とも「アルカリの方が固い」という感想で一致した。ちなみに私も試したが、なるほど「固い」というのはよく分かった。新鮮とも言えるかもしれないが、味も「若い」というのが適切な表現のような気がした。これがアルカリイオン水に浸けた方である。私の高濃度水素水とオフィスのアルカリイオン水素水、私の考察は前者は未知数だが、後者は別の要因で効能が目に見えているということだ。ぶっちゃけ、どちらも大金を叩いて買おうとは思わないのが共通点かな。そして引き続き長期にわたるるが「我が家のニラの生育に効果があるかどうか」検証してみようと思う。