超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

天体にロマンを求めて

2013-12-03 22:23:44 | ホビー
テレ東の釣り番組みたいなタイトルだが・・・星空は数十年くらいで大きく変わることはない。しかし人間はそうもいかず、まだ邪念の少ない中学生くらいだった頃に使った天体望遠鏡を使って、今も変わりない天体を観測することに不思議なロマンを覚え、あえて最新式のモノを使わずに古い望遠鏡を引っ張りだしてきたのはここ数年である。「どうせ使うなら最初からいいのを使え」最初から父が買ってくれたのは小学生が使いこなすには難しい10cm反射赤道儀だった。小さな身体で持ち運ぶのもかなり大変で、しかも複雑な構造だったから十分機能を発揮できなかったが、それでも月面クレーター、木星の模様や土星の環、金星の満ち欠けなどを初めて見た時は感動に震えた。赤道儀という「北極星に回転軸を合わせ、時間とともに星空の回転に合わせて望遠鏡で星を追尾する」という方式を理解し、本格的に星を撮影してみたいと思ったのは中学生の時眺めた「皆既月食」で、こずかいを貯めて様々な天体機器を少しずつ整備して行った。

その頃は初代望遠鏡は錆ついて使えなかったので、(北極星に向ける)極軸望遠鏡搭載の当時最新式反射望遠鏡を購入した。それに加え、一眼レフカメラを装着するためのアダプター、暗い天体に向けて長時間露出しても星が流れないような追尾装置なども手に入れた。部活や試験勉強で忙しい時ではあったが、暇を見つけては望遠鏡を夜空へ向けていた。ただ我が家には自家用車がなかったので、天体観測に向いた場所へ移動することはできず、見えるのは専ら庭から見える星空に限られていた。それでも月面クレーターの拡大写真から惑星、明るい星団などにはまっていき、最後は自分の部屋を暗室化し現像道具一式も取り揃えていた。当時何かにつけて入り浸っていた茅ケ崎駅北口の「ダイクマ」のカメラコーナーには現像液や定着液、印画紙だけでなく白黒版だが引き伸ばし機も販売していたのだ。つまり自分で天体を撮影し、ネガを現像、写真に焼き付けるまで全て自分で行っていたのである。ものすごい手間だったが、この技術は学生時代、論文に掲載するための電子顕微鏡写真を何百枚も自作する際に役に立った。

当時、最新式だった天体望遠鏡は保存も良かったので今でも十分能力を発揮できる。写真技術はディジタルカメラが主流となり、PCを使って自動的に天体を捕捉・追尾する機能は向上したが、望遠鏡そのものの構造というのはそれほど変わっていない。反射望遠鏡なら鏡を使って光を集め、接眼レンズ(アイピース)で結像して見るだけである。ただ残念ながら高性能を誇る超兵器203号だったが、40年前の望遠鏡に装着するアダプターが存在せず、自作したものではうまくピントが合わせられなかった。元々203号はカメラに興味が無かった私がひょんなきっかけで「バルブ機能を使って天体を撮影したい」と思ったから望遠レンズとセットで購入したものだ。まずは月だけでもいいから映像にできないものかと考えていたところに見つけたのが、「デジアイピース」という兵器である。これは接眼レンズがそのままCOMSセンサーになっているカメラでUSBで直接PCに映像を映し出し、動画としてキャプチャーすることができる。

今年の9月、暦の関係で中々満月にならないそうだが、18日の中秋の名月はまさしくフルムーンだった。それまで我が望遠鏡に装着できるアイピースを探していたのだが、接眼レンズ口径サイズから一種類のしかも旧式の製品しかなかった。高倍率撮影は満月の月面では面白くないのだが、試しにやってみたらPC画面に「ドバーっ」と迫力ある月面が現れた。昔は公立の天文台のような施設でしかできそうもなかったことが今は簡単にできるのだな。さて動画ファイルとしてキャプチャできるのだが、これをどのようにして静止画にするのかよくわからない・・・色々調べあの手この手を使って何とか(変な形のようだが)一応、ネットにもアップできるような形式にできた。しばらくして半月となった際にもう一度クレーターを狙ってみたら中々迫力ある画像にすることができた。昔はこれ1枚写真にするのにものすごく手間がかかったのだが、今は一瞬にしてできあがる。ただ「画像処理」というのは見たまま焼き付くのとは少し異なり、画面上の明るさによって勝手にピントの具合を補正してしまう上に、拡大倍率を変更することもできない。(つまり常に同じ大きさの画像しか得られない)

        

デジアイピースの処理では通常の天体観測でいう倍率150倍くらいであろうか。10cm口径の望遠鏡ではかなり高倍率である。「動画で撮影する」というのはこれまでのスタイルを全く変えてしまうものだった。星は静止していないから、画像を得ようとすると星の動きがわからない程度の速さでシャッターを切らなければならない。しかしシャッター速度が大きくなると露光時間が減る分ただでさえ少ない星の光をとらえることができない。高倍率ほど視野にある星の動きが速くなり、星は暗くなるから上に露光を長くできないから、「惑星」などは最も撮影が難しく大口径で光量と分解能を稼ぐか精密な自動追尾で露光を長くできなければ「光点でなく面積がある」という画像を得るだけで精一杯だった。その点、動画を撮っておいて後でコマ切れにキャプチャーし何枚も重ねて作るというのは実に合理的に見え(実際にそういう専門的な手法があるそうなのだが)、私は惑星撮影に応用してみることにした。最初のターゲットは明け宵いしか見えぬ金星を除いては一番明るい「木星」である。

この時期、深夜になってしまうのだが簡単に見つけられる木星にデジアイピースを装着した反射望遠鏡を向けた。この倍率だとガリレオ衛星と木星の縞模様、大赤点などがかろうじて見えるくらいだと思い、楽しみにソフトを起動したが、どっこい残念ながらそう簡単なものではなかった。星が明るすぎて点にしか見えないのである。月面の場合は画面全体に及び、明るすぎる場合はソフトウェアが自動的に修正を行っていたが、木星は小さくて明るいので視野の中で光り輝いたまま細部のコントラストを調整するには至らないようなのだ。秒間フレームが決まってしまっているのか、画像をもっと薄くしないとただの光点になってしまう。さらに拡大するとか賀状処理に違うテクニックを入れるのか、はたまたデジアイピースではこれが限界なのか、もう少し調査研究が必要そうである。天体望遠鏡を向けて「像を結ぶだけ」でそこそこに天体画像が写せてしまうのだから、動画撮影した後画像処理するという「星の動きを追尾しなくてすむ」方式は実に画期的な方法だ。

  

自分の都合や夜空の様子、季節によって月面一つ撮影するにしてもタイミングは難しいものだが、「今回で終わり」ということがないので、夜空に星が見える限り光害だらけの庭からも見える天体を追ってみたいと思う。使い方を工夫すれば最も難しいとされる星雲、星団など超高級望遠鏡のカタログなどでしか見られない美しい天体写真も夢ではないと思う。そのために動画で保存した天体の画像を加工するソフトウェアを教えてもらおう。そして次は別の分野、星野(せいや)、星座など天の川など広い範囲での星空撮影に挑戦だ。今年は彗星の当たり年、なんと今自分は夜空に3個もの彗星を見ることができるという。ぜひその姿を写真に保存したいものだが、その奮闘記はまた今度にしよう。

おまけ
10日ほど前になるが、以前紹介した大雄山最乗寺の紅葉は最盛期とも言える見頃となっていた。杉の林に囲まれているイメージしかなかったのだが、素晴らしい紅葉の名所だったんだな。田沢湖に旅行して以来、これまであまり興味を持たなかった紅葉が俄然面白く感じるようになった。