超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

圧巻の地下神殿

2016-06-08 22:03:22 | 旅行お出かけ
数ヶ月に一度くらいのペースで首都圏各都市のオフィスを訪れ、仕事上の問題点や改善事項、他セクションの情報などを持ち寄って意見交換するのだが、とある北関東エリアを訪問する時は大抵打合せだけではなく、「お出掛け」がセットになってくる。このサイトでも何度か紹介したが、私と共に「ネオお出掛けトリオ」となったフクさん、マッさんコンビである。グンマの手前、首都圏衛星エリアの様々な名所、施設に連れて行ってもらったのだが、彼らの嘆くのは「大都市圏である割に超有名どころは少ない」というところである。グンマのようにそこら中に温泉があるわけでもない、山歩きで有名な自然の宝庫でもないし、歴史的な建造物もあまり聞かない。小夏師匠の国周辺のように「時代の分岐点になった戦場跡」などひとつもない(我が家周辺エリアにも全くない)。。。ただ知名度が低いだけで、(人によるけど)垂涎もののスポットは山ほどあるのだ。前回訪れた利根川の水資源施設なども「鮭が遡上できるように魚道が設けられ」シーズンになると目の前で産卵に向かう鮭を眺められるというすごい水門だった。(残念ながら、鮭の姿は拝めなかったが・・・)

帰路につき、最寄の駅へ向かう途中、私はふと思いついたことがあって聞いてみた。「ねえマッさん、前テレビで見たことあるんだけど、江戸川沿いに巨大な柱が何十本もある貯水施設みたいなところありましたよね。ウルトラQでもロケに使ってた、地下神殿みたいな・・・」マッさんはポンと膝を打って「あります!あります!もうちょっと川を下ったところにある放水路ですよね。あそこねえ、すごい人気で中々見学の予約取れないんですよ。前に電話してみたら平日でも1ヶ月先まで一杯で・・・」悔しそうに思い出していた。テレビの取材では「大雨が降った時に大きな河川が氾濫して水害をもたらさないように、一時的に溢れた水を貯めておく施設」というものだったが、地下にあるとは思えない巨大スケールの空間だけに私が知っているだけでも「ウルトラQ、仮面ライダー、戦隊シリーズ・・・」様々なロケが行われていた。私の印象が強かったのはウルトラQ(ダークファンタジー)の「楽園行き」という話である。実物は郊外にあるのだが、物語では東京の地下にある巨大空間となっていて、社会に絶望しドロップアウトした人たちが謎の「配達人」に案内されて集まり、浮浪者のように住まう異様な「楽園」だった。

そんな「お出掛け」から数ヶ月、巨大地下施設のことなど忘れてしまった頃、フクさんからメールがやってきた。「首都圏外郭放水路の見学について、下記の日時で予約がとれましたので、・・・・・・」私は大喜びでスケジュール表を見ると既に首尾よく丸1日確保されていた。「万難を排して伺います!」私はリーマンショックや大地震がやってこない限りは集合場所である「東武動物公園」に一直線に駆け付けるつもりだった。「常陸の国」同様、これまであまり御縁もなく、名前だけは知っていたがどこにあってどうやって行けばよいのか、全然分からなかったが、最近のJR線の乗り入れは目覚ましいものがあって、東海道線経由でそのまま久喜まで行って乗り換えればよいのである。ただ乗ってしまえば楽チンだが、大宮の二つ先ということはたっぷり1時間半以上かかり、昨今の東海道線経由路線は年中どこかで支障があって、時刻表通りにはなかなか運行しないから注意が必要だった。1本早めの列車に乗り込み、降りたこともないJRの駅で東武伊勢崎線(って確か浅草からR毛号でグンマの祭りに向かったが)に乗り換えるのだが、行き先がどおで方向変更するのか「中央林間」!。。。何かの間違えかと思った。我が家から見ると大宮からさらに先の駅で乗り換える私鉄が中央林間まで伸びているだと?アナウンスを聞くと気の遠くなるような駅数だが、押上で東急半蔵門線、さらに渋谷で東急田園都市線に連絡して一気に懐かしの中央林間までつなげてしまうのだ。最近の地下鉄、私鉄の相互乗り入れは想像を超えるすごさだ・・・

  

東武動物公園でフクさん、マッさんと合流した私は簡単に打ち合わせを済ませ車で移動を始めた。テレビCMでも見たことがある上野動物園と並ぶ老舗のイメージがあり、訪れたことはなかったが巨大な観覧車や木製に見えるジェットコースターが敷地内に見え、総合的なレジャーランドのようだったが、広大な敷地の周囲には「何もなく」田んぼと森の豊かな田園だった。「道の駅」のような施設に寄ると個性的な名前の「作物の種」や物産品などが並んでいた。さらに少し移動したところでマッさんお勧めの「田舎そば」の店に入った。普通のそばの2倍くらいの太さと噛み応えのある、コシと香りあふれる麺で、地元では有名なのか正午にならないうちに店内は満席に近くなった。グンマ同様、このお出掛け衆と昼飯をご一緒するとかなり気合の入ったボリュームメニューに見舞われてきたので、ここは学習して朝飯は抜いてきたのが正解だった。見学の予約時間は13時、早めの昼食をとって爽やかで最高の天気の下、いよいよ施設に向かう。

        

建物の名称は「庄和排水機場」、施設全体の名前は「首都圏外郭放水路」というものである。かの土地は以前「庄和」という地名で日本一の大凧あげで有名だったそうなのだが、今は合併し春日部市になっている。施設全体を紹介、展示する地底探検ミュージアム「龍Q館」という建物に入り、受付のある2階に上っていくと様々な取材の記録や有名人のサイン、ロケ模様の写真などが展示されていた。例の地下神殿では仮面ライダー、戦隊シリーズなどの「戦いの場」として撮影され、コントロールルームはウルトラマン他の総合指令室、作戦室などに使用されたようだ。やがて時間となって受付を済ませると係の女性が展示室内の模型などを使ってこの壮大な施設の生い立ち、役割などを分かりやすく説明してくれた。特撮に利用される巨大地下都市のようなイメージしか持っていなかったのだが、説明を聞くと「人間の英知」に感動することとなった。

           

そもそもこのエリアは外側に利根川、江戸川、荒川という大河に囲まれ、水の溜まりやすい「皿」のような地形になっているうえに、中川・綾瀬川流域は勾配がゆるやかで水が流れにくいために大雨に見舞われれると、幾度となく洪水被害を受けてきたそうだ。3人で床に広がった衛星写真を眺めながら、「この辺がマッさんちだよねえ」などとはしゃぎながらも、流域の地形と川の流れを見る限り「これじゃあ、水害多いよねえ」と話していた。この施設は中川、倉松川、大落古利根川など中小河川の洪水を地下に取り込み、地下50mを貫くトンネルを通して江戸川に流すものだ。第1〜第5まで5つある立坑は地下トンネルでつながっており、洪水の取り込みや流入調整なども行っており、深さ70メートル、内径30mもあり、スペースシャトルや自由の女神がすっぽり入る巨大な円筒だ。これらの立坑で取り入れた洪水は一定の量以上になると地下トンネルを通じて例の「地下神殿」に流れ込む。この神殿は地下トンネルから流れてきた水お勢いを弱め、江戸川へスムーズに水を流すために作られた「調圧水槽」だったのである。長さ177m、幅78m、高さ18mの巨大地下空間で、長さ7m、幅2m、重さ500tの柱が59本あって、水槽の天井を支え、地下水からの浮力も押さえつけている。この水槽に貯められた水量が一定以上になると排水機場にある航空機エンジンを改良した4基のポンプが稼働し巨大排水管を経て江戸川へ排水する仕組みである。最大排水量は1秒間に25mプール一杯分というから想像を絶する威力だ。

                  

模型を使った係員の説明はそれまでの苦労と国、県、市町村が一体となって協力しあい自然の猛威に対抗したものだというのがよく分かった。一連の説明が終わるといよいよ「地下神殿」の見学である。見学用に作られた施設ではないため、一般の人から見ると様々な制約や注意事項があり、見学に先だって「誓約書」のようなものにサインをする必要がある。「途中で休まずに100段以上の階段を上り下りできます」「大きな荷物を持ち込みません」「撮影は許可された区域でしか行いません」「画像内の人物は個人情報として適切に扱います」などなど・・・(芸能人がいる時もあるからのようだ)。サッカー場を含む多目的広場の横を通り過ぎて秘密の入口まで歩いて行くが、実はこの広場の真下がまるまる地下神殿だという。女性スタッフは先頭と最後尾について一人ひとり見学者の数をカウントしながら先導していく。JALの工場見学も同様の厳格な管理だった。(取り残されたりすると大変なことになるからな)100段くらいの階段などわけはないが、実際降り立ってみると想像を絶する圧巻の地下神殿だった。(これなら特撮のロケで使いたくなるわけだ)

          

「1日にこの階段4往復もすりゃ、いいダイエットになるでしょうねえ」フクさんは気軽にスタッフに声をかけていた。「この水位を超すとポンプが稼働して江戸川への放水が始まります。水位レベル以下の残った水は第5立坑にあるポンプで逆に中川や倉松川に戻すんです。日をおいてしまうと、水が悪くなって飲み水や生態系に影響してしまうので、洪水が収まったらすぐに排水します」「水に魚が入ってたりしないんですか?」「約3cmの金属ネットとゴミ除却装置がありますが、抜けてくる小魚とかオタマジャクシはいますよ。」「泥みたいのは入っちゃいますよね」「そうそう、皆さんの見学いただけるエリアだけは人力で掃除してるんです。」「(そりゃー、ありがたいことだ)」
総工費2300億円というこの巨大施設の治水効果は素晴らしく、平成12年に比べて平成18年の浸水戸数は3分の一近くになっている。昨年9月茨城を襲った大洪水を起こした集中豪雨の時もフル稼働し、周辺流域を水害から救ったそうだ。そんな話を聞くにつれ、ウルトラQではちょっとおぞましい「魔宮」のように見えたこの神殿も神々しく見えてきたものだ。我々はスタッフに丁重にお礼を言って大満足で放水路を後にしたのだった。


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2 コメント

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Unknown (小夏)
2016-06-12 07:12:21
師匠、おはようございます!蒸しますねー(こちらだけかしら・・)
師匠のご出張・視察、ワクワク社会勉強させてもらっています。「万難を排して伺います!」の気持ちビンゴ(笑)中央林間そんな事にも刺激受けますね。
それにしても、想像もできない構造物が現存して生活を支えているのですねー!!写真だけでも神々しさ、神秘さ、そして空間の雰囲気にちっぽけな人間は少々の恐ろしさをも感じますから、そこに立ったら鳥肌立ちそうです。
これはものワクワクなんてもんじゃなく感動ですー!

師匠のあたりの歴史、小田原城、、スイーツ屋で満足して山道途中で挫折した自分をバカバカと反省しきり。
それに、鎌倉がー!
お、そろそろブルーの紫陽花の時期、今が盛りでしょうか、きゃ~、想像するだけで、、本当は行きたい~(笑)
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Unknown (磯辺太郎)
2016-06-13 07:48:00
小夏さま

こんにちは。昨日、こちらはカラッと晴れた1日で、久々にずーっと海に入ってました。
今回のお出掛けは普段中々訪れない地域の社会勉強でした。でも私鉄線の乗り入れ接続には驚きの連続です!恐らく端から端まで乗る人はいないでしょう。。。
放水路、圧巻の一言でした。地上ならまだしも、地下にあれだけの構造物・スペースを建造するとはすごいものです。神々しさを感じました。
そのうちにドーム球場も地下にできるかもしれませんね。

うちに近くはホントに「史跡」ってのがないんですよねえ。鎌倉は完全に観光地ですし・・・でも京都みたいに香り高いところもあるかもしれませんね。
スイーツ屋とは一夜城のところですか?以前何度か訪れましたが、何もないところなのにいつも賑わっています。
明月院、今は最高潮のようですよ~。でも混雑もねー。
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