超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

専用車

2009-12-07 06:39:30 | 出来事
学生のとき、一度だけすぐ近くで「痴漢です!」と腕を掴まれた人がいた。それは東急東横線だった。
ちなみに私の学生時代は前後半で二つのキャンパスをまたがっており。。。
前半は「東急蒲田線」沿線(昔は東急めかま線という緑のラブリーな車両だった)で、先日紹介した青春の雀荘「順風」は本家キャンパスの近くにあった。
後半は「東急おっぱいパン売ってた線」沿線で分家となり、それこそ超ド級のマイナー駅で雀荘などはなかった。。。

現在、私は通勤時(行きだけだが)に座席定員制の「ホームライナー」を使用する。列車はなんと「スーパービュー踊り子」の車両で快適な50分だ。
座席定員制だから立っている乗客はおらず、朝の通勤時は眠っている人が多いから不気味なくらいの静けさだ。。。
1日の仕事の始まりに通勤ごときでエネルギーを浪費したくないのと、東海道線などでは見たことがないが「痴漢騒ぎ」みたいなのに巻き込まれないように数年前から少しお金をかけることにした。

調子がイマイチで通勤が面倒になり「休んじゃおうか?」と思うときでも、あの快適さを思い出し、前日の帰宅時にライナー券を買ってあるのを考えると、とりあえずは出勤に踏み切れる。
ただ、悪天候やトラブルなどでダイヤが乱れると「いの一番」に運休になってしまうのには閉口する。
つい先日も東海道線は朝の7時頃起きた人身事故で1時間ほど止まってしまった。

かなり以前になるが、同様のトラブルで私鉄振替輸送を利用したときの話。
最近は駅構内にも入れないのでとっとと帰宅して運転再開をニュースされるまではコーヒーでも飲んでいるが、そのときは珍しく、はずしにくい会議があり、手段を選ばず出社しようとしていた。
事故の発生した場所とか時間、運転再開見込みとか現在の駅構内の入場規制状況など事細かくアナウンスしているが、まずもってJRさんに言いたいのは

「振替乗車券をどこで配っているかをまず言え!」(人生幸朗風に)

そのときは事件直後だったらしく、そんなにすごくない人の波をかき分け進み、かわら版屋に群がる人々のような渦を見つけてすばやく券をGetして、私鉄改札口へ走った。
プルプルプルーという発車ベルが鳴っている最中で・・・

「やべえ!あれは快速急行だ!乗らないとかなりのタイムロスだ」

階段を5段飛ばしくらいで走り降り、「あぶない刑事」の舘ひろしのように、ほとんど改札を飛び越えて、松尾雄治のステップで歩く人をかわし、最後尾車両に走り向かった。

「あっ、ちょっ、ちょっとお客さん!」

最後尾にいる車掌が私に声をかけてきたのが分かったが、(・・・駆け込み乗車が危険なのはわかっている。ここは許せ!・・・)と今、まさに閉まろうとしているドア口にタッチダウン!!
ふぅーっ、間に合ったぜー。
息が切れてるのを無理やり押し留め、いつも呼んでる文庫本を取り出しリュックサックを網棚に乗っけたところ・・・

あっ、あれ?なんかおかしいぞ。成田のDFSみたいな香りの強い車両だな。。。
立ってる人とは肩がギリギリ触れない程度、それほど混んだところではなかったが、なんと周りが女性しかいない女性専用車両!
そうか!(ヘウレーカ!)それで車掌が慌てて声をかけたのか・・・発車してしばらくしたら「最後尾車両は女性専用ですのでご注意ください」ってわざとらしくアナウンスしやがって。。。

うーむ。やばいぞ。。。ただでさえ、痴漢騒ぎだ社内トラブルだと世間がうるさい昨今だ。事情を話せば論破する自信はあるが、「志村けんのだっふんだぁ」の石野陽子のように「このおじさん変なんです!」と言われて腕を掴まれたら面倒なことになるぞ。
文庫本から目を離し、密かに周囲を偵察すると、確かに女性しかいない。そろそろ背筋が冷たくなってきた。。。

快速急行だからあと4駅分くらいは停まらない。どうすればよいか・・・ノーヘルで乗ったバイクで正面にパトカーを見つけたときのように私の頭脳はめまぐるしく回転し始めた。
前に座っている女性に「間違えて乗った」ことだけ詫びておくか、でも聞かれてもいないのに声をかける勇気もない。
独り言で言うのも「変なおじさん」の類に入ってしまうだろな。今日のオレの服装は・・・?どんな阿呆が見ても女性には見えない。
詰問されたらオカマの振りをするというのはどうだ・・・?「アタシって気持ちもオンナだから・・・」ってアホかオレ!これじゃあ「磯辺氏の屈辱パートⅡ」だぞ。

むろん時間にしてみればわずか数10秒であったが、やはり次の駅で乗り換えるまでこの空気に耐える、と結論付けた後は少し落ち着いて周りを見られるようになった。
一時はかなり心拍数も血圧も上昇したところだが、間違っちゃったものは仕方がない。滅多にできない(というか、ありえない)機会だから、通常車両との違いを記憶しておくか。。。
片手は吊り革に、片手は文庫本を持って、気が付かれないように目玉だけでウォッチングを始めた。

最初は頭が真白になるほどの驚愕であったが、女性しかいなくても実は普段の光景とあまり変わらないのだ。
いつもとそんなに違和感があるわけでもなし、DFSの香りを除くとたぶんよくよく見てみないと「男がいない」ことには気が付かないかもしれないくらいだ。
少なくとも「女の園」という雰囲気はないし、そこにさ迷った哀れな私に容赦なく刺すような目線を浴びせるわけでもない。
くすくす笑うわけでもなければ、こっちを見て噂をすることもないし、むろん抗議される気配など全くと言ってよいほどない。

女子校の修学旅行列車なら別だが、普通の通勤車両では乗車してる他人になんか全く興味ないんだろな。
女性しかいない(そのときは私がいたので正しくないが)からと言って、そこらじゅうでお化粧を始めることもないし、朝食のクロワッサン(自分のイメージのみ)を食べ始めることもない。
このまま乗ってってもいいんじゃないか?もしかしてオレにも気付いてない・・・?

そういうわけにもいかぬので、最初の停車駅でそそくさと車両を降り、かなり前のほうに乗り換えた。
発車してしばらくして、また車掌が「最後尾車両は・・・」と始めた。。。だーかーらー、乗ってる人に行ったって意味ねえだろ!っと思った瞬間に・・・
そうだ!(ヘウレーカ!)列車の中でも隣の車両に移れんじゃん!オレの頭、逆回転・・・あの妄想はなんだったのか。

下北沢の手前あたりで急に失速した快速急行で私は結局、終点まで1時間以上座ることができず、前で寝ているおじさんを蹴り飛ばしてやりたくなる衝動を抑えて・・・
到着が遅くなってやっぱり遅刻しちゃいそうだったのに加え、自分の間抜けさにかなりイライラしていた私は、改札で振替乗車券を出したときに「定期券も見せてください」と言われ、

「見せ方わかんねー!」

と携帯電話を差し出したのだった。係員さん、あんなにぶっきらぼうに言うことなかったね。ごめんなさい。。。
因みについ先日、東海道線が人身事故でやはりストップしてしまった際、振替の私鉄線では「本日に限り、女性専用車両の扱いはございません」。。。
なかなかナイスなプレーだよな。