「大西伸明 - 無明の輪郭 - 」 INAXギャラリー2

INAXギャラリー2中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA2階)
「大西伸明 - 無明の輪郭 - 」
3/3-29



現実と非現実の合間を彷徨います。主に関西を中心に制作・発表(画廊HPより。)を続けている造形作家、大西伸明(1972~)の東京初個展です。

まず目に飛び込んできたのは、まさに見たまま以外の何物とは思えないドラム缶のオブジェです。表面は錆び付き、また各所はへしゃげ、いかにも古びた缶が、何の演出もされることなく置かれていますが、種を明かしてしまえばこれは全て樹脂で出来たフェイクでした。実際のところ、作品を手で触れることは許されませんが、思わず指で表面をなぞりたくなってしまうほど精巧に出来ています。リアルなのかフェイクなのかを目だけ確認するのはもはや困難です。



ドラム缶の次に目立つのは、スペースの奥に置かれた脚立です。これまた使い古したような、それこそこの脚立で作業した際にこぼれた絵具までが再現されているかのようなリアルさを見せていますが、床に面すその4つの足が半透明になっていました。このリアル一辺倒ではない、フェイクであるという部分を微かに残すのが、また大西の制作の大きな特徴かもしれません。リアルなモノが、その端の部分にてさながら残像のように消えていくかのような味わいさえ感じられます。

白く、また乾いた展示室の空間に、トマソンのようにして置かれた作品群のどことない寂寥感もまた印象に残りました。軸を失って無惨にも転がる傘、枝葉を落として虚しく立つ枯木、そして隅っこに立てかけられた、もう何年も使っていないようなスコップなど、モノでありながら、それを見て、また使っていたであろう人間の記憶を微かに伝えているような気もします。革手袋の持ち主は一体誰なのでしょうか。

今月29日まで開催されています。これはおすすめです。
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