「サラ・ジー展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス 8階フォーラム(中央区銀座5-4-1
「サラ・ジー展」
2/8-5/11

カルティエ展(MOT。2006年。)でのモビール状のインスタレーションも記憶に新しいサラ・ジー(1969~)が、今度は銀座のエルメスで日本初となる個展を開催しています。8階、フォーラムで行われている表題の展覧会へ行ってきました。



吹き抜けを用いた、広大な二つのフロアを用いて展示されているのは、ペットボトルやタオル、バケツからレシートにロープなどと言った日用品の、しかもほぼゴミ同然に扱われるかのような素材によって組み上げられた、まるで都市を見るかのような一つの有機体です。床のフローリング、もしくは脇の溝の蓋の一面一面が部分的に剥がされ、そこから道が進むかのようにして「もの」が連なり、最奥部には鏡に囲まれた、天井までそびえ立つ一つの巨大な塔へと収斂しています。四方からその塔へと張り巡らせた赤いロープは、まるで建物から放たれる眩いネオンのようでもあり、またそれを一つの生き物とすれば、そこへ栄養源を供給する何らかのチューブのようでもありました。無機的な素材が一見、複雑怪奇に組み込まれているようで、実はそれぞれが繊細な美感を引き出していく様は、サラ・ジーの最も得意とするところかもしれません。ここでは、バケツやロープがそれ自体を通り越した、見る側の感性を引き出す一種の装置として存在しています。そのイメージは無限大です。

色鮮やかな日用品の集合は近未来的な都市をも連想させますが、私には小さなポンプで水が循環する様子にししおどしを、また葉をイメージする緑色の素材が床を這う姿は小径を、また前述の塔を囲む鏡には池をそれぞれ見るような気がしました。言わばここは、石や苔、それに植え込みから借景までが渾然一体となってカオス的な小宇宙をつくる、一つの日本庭園であるのかもしれません。作品を見るのではなく、その場を散歩するように楽しむことが出来ます。

ロングランの展覧会です。5月11日まで開催されています。おすすめします。

「Casa BRUTUS 2008年4月号」(先日発売のカーサブルータス最新号に、会場の写真が掲載されています。)
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