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ぽかぽか春庭「アボリジニアートの絵文字」

2012-07-27 00:00:01 | 日本語教育
2012/07/27
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>2012年前期(3)アボリジニアートの絵文字

 日本人学生のための日本語学基礎の授業では、前半、語彙論、音声学、社会言語学などの基礎をざっと説明し、後半はグループ発表や個人発表をさせて、講師がそれを補足解説をするという方式で授業をすすめました。
 個人発表では、「四字熟語」「難読漢字」「方言」など、毎度おなじみの、学生にとって発表しやすいものもありましたが、なかには、私がよく知らなかったことを発表してくれる学生もいて、大いに興味を惹かれました。
 今期、大いに啓発を受けた学生発表。たとえば、アボリジニアートについて。

 昔、むかし修士課程でとった授業のひとつが文化人類学の授業で、アボリジニー文化の研究者に教わりました。また、アボリジニのスプリンター、キャシー・フリーマンの活躍、映画「裸足の1500マイル 兎よけのフェンス」や、エミリー・ウングワレー展でアボリジニーのすばらしいアートを見て以来、心ひかれてきました。
 しかし、アボリジニーは無文字社会であった、という西欧側から見たアボリジニー文化の解説を読むだけで、実際のところはどうだったのか、調べたことはなかったのです。

 オーストラリアでホームステイをしてきた学生のひとりが発表したのが、「アボリジニーアートの中の絵文字」でした。

 上段左:カンガルーの足跡、中:滝またはキャンプファイヤー、右:部族
 中段左:ブーメラン 中:槍
 下段: 男・女・子ども 全部をまとめて描くと「家族」を表します。


 abcの音素文字になれた西欧人の目には、アボリジニーの絵文字は、単にものの絵を省略化したものにしか見えず、それを文字とは認識できなかったのかもしれませんし、漢字が絵文字からさらに発達していったのに比べれば、「絵」から「象形文字」への移行が進まなかった、と見るべきなのかもしれません。
 しかし、文字の定義からみて、アボリジニーの伝承をきちんと伝える機能をはたし、アボリジニの文化や伝統を今日まで伝えてきた絵のかずかず、これは文字と考えてよいと思います。
 アボリジニーの社会には、音声と一対一に対応する音声文字は発達しなかったけれど、エジプトの象形文字や漢字の甲骨文字に匹敵するような絵文字が存在していた、と見なしてよいのではないか。

 アボリジニアートは、部族によって伝承が違うので、ひとつの絵柄が他の部族ではその意味には通じない、ということもあるでしょう。
 しかし、この絵文字を見る限りでは、たとえば、男と女と子どもを合わせて描けば「家族」の意味になるというのは、「日」と「月」とを合わせて書けば「明るい」という意味になる、漢字の会意文字のしくみと同じです。
 アボリジニーが伝承してきたアートの中に、文字と言ってよいものがあったこと、私は今まで知りませんでした。

 パラオ語の中の日本語、アボリジニアートのほか、学生発表から、興味をひかれ刺激を受けることも多々あります。学生の発表から知ること、学生に学ばせてもらうこと、こういう機会を多く与えられる教師は、ほんとうに退屈知らずで常に新しい刺激をもらえます。学生さまさま。
 近頃の学生の脳みそは「ザル頭」、なんて思っていてごめんなさい。
 
<つづく>
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