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ぽかぽか春庭「パフォーマンス誇り高き馬 in 六本木アートナイト」

2016-10-25 00:00:01 | エッセイ、コラム

パフォーマンス誇り高き馬

20161025
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2016十六夜さまよい日記10月(7)パフォーマンス誇り高き馬 in 六本木アートナイト

 22日夜、六本木アートナイトに出かけました。
 サントリー美術館開催の琳派鈴木其一展、見たいけれど、シルバー割引きもないし、一般料金1300円を払うか否か、と、迷うほどのことも無いけれど、「行楽は無料で」というポリシーにのっとって悩んでいたら、耳寄りな話。六本木アートナイトの夜は22時まで開館で、500円に割引きになるという。「無料」の次に「割引き」が好きな春庭。500円ワンコインなら、いいよね、と、土曜日の夜は六本木へ。

 土曜夜の六本木は、こじゃれた若者や外国人がいっぱいです。しょぼくれたオバハンは、ちと場違いな雰囲気でもありますが、このヨレヨレの古着、ジャズダンス仲間サクラさんからのもらいもの。リサイクルショップでも「ウェス(雑巾)にしかならない」といわれたという一品、私が着れば「グランジファッション(ボロ着)なのよ」という顔で六本木をのし歩く。歩いているうちはいいけれど、疲れて街角に座って、前にボール紙の箱を出しておけば、なにがしかのお情け小銭が稼げるかもといういで立ち。

 富士フイルムギャラリーで写真展見て、広場で「ムサビファッションショウ」見て、鈴木其一展見て、ミッドタウンプラザで、「誇り高き馬」というショウを見ました。
 「キダム」という団体なので、カナダのシルクドソレイユの「キダム」かと思っていたのですが、フランスを拠点として国際的に活動している、と、パンフレットに説明があったスペクタクル・パフォーマンスグループ「カンパニー・デ・キダム Compagnie des Quidams」という、別団体。2010年の六本木アートナイトにも出演したのですって。知らなかった。もっとも、私が六本木アートナイトに来たのは、2012年の会田誠展を見るためのみ。

 新作「FierS à Cheval ~誇り高き馬~」、どんなショウなのかと興味津々でショウ開始20分も前に、最前列に腰をおろしました。この段階で腰を下ろしているのは、私のほかはひとりで、広場を取り囲む大勢の人は立っていました。10分くらい前になると、係が綱をもってきて、最前列が綱の前に押し出ないように、注意をして、「前列の人は座ってください」と座らせました。さらに5分くらい前になると、私の横にいた人たちに「ここをショウのパフォーマーが通るので、道をあけてください」と言って立たせて、通路を作りました。

 なんて段取りの悪いショウの運営でしょう。ぐるりと観客が取り囲む前に、ショウの人々が通る道を確保するくらいのことはやっておくべきでしょう。ムサビのファッションショウは、そうやっていました。それでも、日本の観客はすなおだから、係員の指示にしたがって、道をあけました。せっかく確保していた観覧場所。私ならぐずるな。

 係員は、ショウの段取りを聞いていなかったらしい。「ミッドタウンの入り口広場で入場ショウを行い、そのあとプラザ会場まで行進してくる」という演出者と会場整理係の連携がとれていなかったために、入場通路を確保しておかなかったのです。わたしの隣の人までがたたされて、脇に寄るよう移動させられました。私は少し脇によけましたが、座ったままでした。

 音が遠くに聞こえ、やがてショウの光の白馬が入場してきました。入場が終わると、通路はまた観客でふさがれました。

入場する馬



私の目の前に、ショウの係員達が片膝立ちになって並んだので、視界がふさがれてしまい、20分も前に座って、最前列を確保した意味がなくなりました。私は背が低いので、立っていると前の人の背中しか見得ないため、早めに来て最前列に座ったのです。でも、結局、前の人の背中越しにのぞくことになりました。場所取りを間違えました。

係員の肩越しにカメラを向ける




 係員の背中越しに見得るショウ。とてもきれいだったので、ショウの間は、「係員の背中に前をふさがれてよく見えない」という不満も忘れていましたが、ショウが終わると係員は「そこ、どいて」と、終了の通路を急に指示しました。今度は、私も立って移動。急な移動だったので、押されてしまい、要領悪いオバハンは、倒されそうになりました。日頃ジャズダンスで鍛えたバランス感覚が役立って、かろうじて転びはしなかったですが、いっちゃなんですが、日頃運動していない高齢者なら、確実に転んで怪我をしただろうと思います。

 ショウはとてもすてきな美しいものだったので、この「演出を心得ていない会場準備の悪さ」がとても残念でした。綱の片付けをしていた男性にひとこと言ったら「上司に伝えます」と答えたけれど、日本の会社風土の中で、彼が上司に言える立場にあるかどうか、わかりません。観客が怪我をして訴訟騒ぎにでもしない限り、だれも責任はとらず、「より安全な会場運営」は生まれないのでしょう。5万人がふるさとを奪われても「事故が起きるまでは安全」というお国柄ですから。

 ミッドタウン入り口で、「誇り高き馬」の終了パフォーマンスがあり、今度は後ろに立って見ました。前の背の高い外国人に目線をふさがれましたが、転ぶよりまし。外国人の腕のわきからショウをのぞく。



 終わりの会場一周の時、私もせいいっぱい拍手しました。
 パフォーマーの顔がよく見えました。


 そのうちのひとり、女性の顔が、ショウをやり遂げた誇りと、観客からの拍手を受けて上気し、とても幸福そうに輝いていたのが印象的でした。「誇り高き馬」というタイトルのショウでしたが、パフォーマーがこのショウに誇りを持っていることもわかり、とてもよかったです。

 馬は空気を抜き、たたまれてショウは終わりました。
終了のごあいさつ


 物を作る職人の誇りに充ちた顔、ショウをするパフォーマーの誇らしげな顔。魚売る魚屋の己の売り物に自信を持っている顔、本屋の店員の本が大好きという顔、そういう、自分自身の生きている道に誇りを持っている人を眺めるのが大好きですから、うれしそうなパフォーマー女性の顔、私も幸せに感じました。

 「徹夜で美術館」のつもりで六本木に来て、六本木ヒルズまで行けば、展望台で夜明かしできるとわかっていたけれど、ヒルズまで行くのがおっくうになりました。ショウの観客に押されて転びそうになったのも、「高齢者」ゆえだから、無理しちゃいけない、と思い直しました。

 最終の地下鉄で、帰宅しました。
 晩ご飯用に娘息子のために準備して焼いておいたサンマ、温めて食べました。
 「母がいない晩ご飯なんだから、母があんまり好きじゃない物を食べようと思って、ピザとって食べたから、サンマ残した」と、娘が言うのです。別にピザが好きじゃないってことじゃないのよ。サンマ、好きだけれど、今年は高かったから、半額セール一匹100円になるのを待って買ったのです。娘は、「ピザもネット注文で半額だった。4000円のところ2000円」と言う、同じ半額でも、サンマとピザじゃあね。ま、いいか。私も楽しい夜だったし。娘と息子はピザほおばりながら、大好きなフィギュアスケート、グランプリファイナル初回アメリカ杯を楽しんだし。

 天高く馬肥ゆるホースショウ見て、サンマ食べる夜。そんな秋のひと夜でした。

六本木アートナイトのメインアート、名和晃平のバルーンアート


<つづく>
コメント (8)
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