医科栄養学・栄養医学ブログ

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ビタミンDのガン細胞エクソソーム内包発がん性マイクロRNAへの制御作用について 栄養医学ブログ

2019-06-15 09:35:23 | 健康・病気

ガン細胞内のエクソゾームは、ガン細胞から出て血中に移動し、そのエクソソームから出た発がん性マイクロRNAは標的にした正常細胞に発がん性マイクロRNAを引っ付け、正常細胞に取り付き、その細胞の遺伝子発現に異常をもたらし、その細胞をガン細胞に変えてしまう、いわゆる転移の原因と、考えられます。それに対して、ビタミンDの働きは、発がん性マイクロRNAの働きを制御することにより、正常細胞のがん化を防ぐと、考えられます。

天然型ビタミンDは、食品の成分として体内に取り込まれ、肝臓から腎臓へ運ばれ、そこで活性型ビタミンDに転換され、いろんな働きをします。Ma Y博士らの報告によると、活性型ビタミンD(1α,25-dihydroxyvitamin)は、広範囲の抗がん活性を有し、一連のガン化学療法因子やBCG療法の効果を強め、そのビタミンD応答因子(element)により、主として抗腫瘍作用を発揮します。また、最近の研究により発がんに関わっているマイクロRNAは、体内の活性型ビタミンDにより制御されることが明らかになりました。なお、マイクロRNAは、広範囲の遺伝子の発現を、ポスト転写的に制御する短鎖非コード化RNAのことです。それゆえ、マイクロRNAは、ガンを含む多くの疾患の進行や発症において重要な制御的役割を有します。

オーストラリアのニューキャスル大学のEmma L Beckett博士らの報告によると、異常なマイクロRNA像は、ガン患者の腫瘍組織と血漿や血清組織において見られ、マイクロRNA像のビタミンD依存性制御は、悪性腫瘍のリスクと進行に関係しています。なお、このことは、ガン細胞群、刺激濃度、それに治療期間などによって違っています。ビタミンDには、マイクロRNAの生合成(biogenesis)とマイクロRnAの直接的、かつ間接的な転写の誘導に関係した酵素の発現を変えることにより、マイクロRNAを制御できるというエビデンスがあります。しかしながら、マイクロRNAの制御により生じる遺伝子経路(pathway)を解明したり、マイクロRNAとビタミンDが関係したターゲットの間の複雑な相互関係を理解するため、さらなる研究が必要と、考えられます。

Referrences

Emma L, Beckett, et al. Modulation of microRNA by vitaminD in cancer studies. Hand book of Nutrition , Diet, and Epigenetics pp1-22. 15 June 2017 

May Y, et al. VitaminD and miRNA in cancer. Curr Gene Ther. 2014 ;14(4):269-75

Zeliic K, et al. New insights into vitaminD anticancer properties:focus on miRNA. Mol Genet Genomics. 2017 June;292(3):511-524

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