医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

低たんぱく食とアルツハイマー病(認知症)の改善について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-05-22 22:26:19 | 健康・病気

アルツハイマー病の改善については、ビタミンB群、ビタミンD、それにビタミンCなどの改善効果が研究されていますが、新しい研究によると、過剰の蛋白質摂取もアルツハイマー病の進行を促進し、蛋白質の摂取を少なくすると、その症状が改善されることが報告されています。今回は、蛋白質の摂取量とアルツハイマー病の進行について考えていきたい、と思います。

USCのVolter Longo博士らの研究によると、低たんぱく食は、マウスのアルツハイマー病の進行を遅らせました。アルツハイマー病のマウスは、4ケ月間、一日おきに特定のアミノ酸を含んだ蛋白質制限食が与えられると、アルツハイマー病の症状を少しも示しませんでした。

アルツハイマー病のマウスに蛋白質を低めに制限した食餌を与え、記憶力が迷路を用いてテストされた時、蛋白質制限していない食餌を与えられたマウスより、認知機能の改善が認められました。更に、蛋白質を制限した食餌を与えられたマウスの神経は、"tau"と呼ばれる、神経に損傷を与える蛋白質の異常値が認められませんでした。ちなみに、"tau"はアルツハイマー病の脳に蓄積し、脳に悪さをする蛋白質です。

食餌性蛋白質は、IGF-1として知られている成長ホルモンの、食餌性調整因子で、それはマウスの老化と疾患、それに老人のいろんな疾患と関係が有ります。Longo博士らは、ヒトもマウスと同じように反応するかどうか、調べる予定ですが、ガン、糖尿病、それに心臓病などに対する蛋白質制限の効果も、同時に調べるようです。

成長ホルモン受容体とIGF-1のヒトでの欠乏は、ガンや糖尿病の発症率の減少を示すことを、longo博士らは、以前に証明しました。博士によると、新しい研究がマウスで行われているが、蛋白質の制限と低IGF-1値は、老齢による神経変性を防ぐ可能性が有ります。蛋白質制限食は、30~70%ほど、体を循環するIGF-1値を減少させ、蛋白質がIGF-1に結合することにより、IGF-1の作用をブロックするその蛋白質の8倍の増加をもたらしました。更なる追試が望まれます。

IGF-1は若い時には、体の成長をもたらしますが、老齢化すると、いろんな病気と結び付きます。蛋白質制限食は、認知機能障害の患者に有効で、安全であるかどうか、臨床試験が必要です。蛋白質制限食とビタミンB群、D、Cなどと併用することにより、アルツハイマー病の進行を遅らせる、と考えています。

なお、私見ですが、蛋白質制限食は、獣肉を減らし、大豆など豆類と魚介類で蛋白質を摂取すると、それらの成分のEPA/DHA、オメガー3不飽和脂肪酸などがアルツハイマー病の改善につながる、と考えています。また、野菜や果物、豆類、それに全粒穀物を多めに摂取すると、栄養のバランスが保たれます。更なる研究が期待されます。

Reference

Low-protein diet slows Alzheimer's in mice: ScienceDaily. Feb.14,2013

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