医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

実験的潰瘍性大腸炎に対する酪酸菌の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-07-04 10:35:41 | 健康・病気

毎年、爆発的に増えている潰瘍性大腸炎に対する酪酸菌の効果については、そのメカニズムが解明され、注目されています。日本での研究によると、酪酸菌摂取により大腸内では、食物繊維を餌として酪酸が産生され、酪酸が制御性T細胞(炎症やアレルギーを抑える免疫細胞)の分化・誘導に必要なFoxp3遺伝子の発現を高め、それにより分化・誘導された制御性T細胞が潰瘍性大腸炎を抑制するというメカニズムです。ところで、今回は、実験的潰瘍性大腸炎に対する酪酸菌の効果について考えていきたい、と思います。そもそも潰瘍性大腸炎は、原因が複合している場合が多く、病態が複雑ですので、それらに対する治療法の一つとして、酪酸菌の効果を考え、また、食物繊維の摂取量によりその効果は違い、食物繊維の摂取量が多い程、その効果は強くなると考えます。

ノースカロライナセントラル大学のTomas T Ding博士と他の研究機関の共同研究によると、oxazoloneで実験的潰瘍性大腸炎になったラットにプロバイオティクスの酪酸菌clostridium butyricm(CGMCC0313)を摂取させると、mesalamine(抗潰瘍性大腸薬)、あるいは酪酸塩と同等か、それ以上の効果がありました。更にIL-23と腫瘍壊死因子(TNF-α)の血清値の低下をもたらしました。ラットの腸管細菌叢は、mesalamineと酪酸塩グループよりclostridium butyricum(酪酸菌の一種、CGMCC0313)を投与したグループでは、早く回復するようでした。また、ぺプタイドと関係したcalcitonin遺伝子の発現値は、酪酸塩を投与したラットグループでは結腸組織では上昇しましたが、酪酸菌CGMCC0313とmesalamineグループでは上昇せず、酪酸塩の投与後の結腸の感受性が見られました。このような結果から、ラットでの実験的潰瘍性大腸炎モデルでは、プロバイオテイクスの酪酸菌clostridium butyricm(CGMCC0313)は、少なくともmesalamineと同等の治療効果を有すると考えられ、mesalamineに比べて副作用も格段に少ないので、酪酸菌の潰瘍性大腸炎への適用が期待されていますが、更なる研究が望まれます。なお、日本や米国では、酪酸菌のサプリメントがドラッグストアやネットで販売されているようです。納豆菌や有胞子乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維などと併用摂取すれば、効果は強くなると考えますが、個人差もあるかもしれません。

ところで、潰瘍性大腸炎では、metronidazole(抗菌剤)は、テトラサイクリンと共に、フソバクテリウムバリウム菌の大腸内での感染による潰瘍性大腸炎の治療に用いられ、効果が確認されています。また、TNF-αの分泌過剰による潰瘍性大腸炎症候群では、抗TNF-α剤などが効果を有しておりますが、ビタミンCやビタミンD3にも抗TNF-α作用がある、と報告されています。その他に、ウコンやクルクミン(ウコンの成分)、青黛(染料の藍の一種)なども潰瘍性大腸炎への効果が報告されています。

Reference
Hai-Qiang Zhang, Tomas T Ding, et al: Therapeutic effects of Clostridium butyricum on experimental colitis induced by oxzolone in rats. World Journal of Gastroenterology. 2009 Apr 21;15(15):1821-1828